以久遠氏 Beauty,Business & Favorites   ビジネス(1)   VOL. 29/ 2001.4.1号

会社の信用はどこで判断するか  

 企業の信用度を判定する時、社長や経理部長の人柄は重要な判断要素となる。社長が真面目に真剣に社業に取り組んでいる会社は、あまり利益は出ていなくても赤字でさえなければ、滅多な事では倒産しないものである。仮に、赤字決算を余儀なくされていたとしても、真面目な商売が出す赤字はその事業の規模を超えるものではなく、ある日突然バッタリというケースは、極めて少ない。

 このような会社は、大抵、環境の変化に対する対応力が弱い。そのために、財務的にはジリ貧状態に陥っていることが多い。このままでは、ジリジリと倒産への道を歩んでいることには間違いないのである。従って、社長がいい人だからと言って、与信管理が不要ということにはならない。十分な注意を要することは当然である。要観察の取引先である。

 では、どんなところを見たらよいか。企業の活動状況というのは、必ずどこかに現象が現れている。従業員の不満はどうか、その内容はどんなことか、経営者の手足となるべき役職者に辞めた人はいないか、従業員の定着率はどうか等々、企業の信用度に関する情報は、常日頃から細大洩らさず収集し、変わったことが起きていないかどうかをいつも見ておかなければならない。

 社長や経理部長など経営者の人格も大きな要素である。要注意事項は、公私混同が激しいという評判はないか、生活態度が派手過ぎないか、ハッタリが強過ぎないか、会社の業務に関係ない行動が目に付かないか、といったところである。女性問題も大きな要素であるが、イメルダや江青のように経営に口を出す女性がいるという噂のある場合は特に要注意である。

 こういう現象は、企業組織のどこかに必ず目に見えない綻(ほころ)びを生じさせている。ひいては、これが企業を蝕み崩壊に至らせる。業績が右肩上がりの時には見えないが、低迷して来ると現象面に徐々に顕れて来る。バブル後、到底潰れそうには見えなかった多くの大企業が倒産したが、経営者の人格に因ると思われるものも数多くあった。景気が追い風の時は、こういうハッタリ型の経営者は一見やり手に見える。

 しかし、このような会社は、概して経費管理が冗漫になっていることが多く、不良債権を握らされた時に、突如として資金繰りが悪化する。已む無く、資金の捻出に窮々として支払いを延ばしたり、一方的な値引き要求をしたり、最悪の場合は融通手形を交付するといったことを平然と行なったりする。

 時折、まさかと思われるような大企業や優良企業が突然バッタリ行くことがある。これは大抵、本業外の事業に手を出して、それが失敗したか、あるいは不良債権を掴まされたことによって当座の資金繰りがつかなくなって資金ショートを起こしたか、のいずれかのケースが殆どである。いわゆる連鎖倒産である。

 この連鎖倒産による被害を最小限にとどめるには、その会社が、どこに何を販売しているか、不良取引先はないか、不良債権は掴まされていないか、業界常識としての利益率は確保しているか、安値販売はしていないか、街の金融機関で手形を現金化していないか、などを常日頃から注意深く監視監督している必要がある。

 一般的に、優良会社はクレームも少ないし、支払い時の違算も少ない。そんなことはない、と言われる人もいるかも知れないが、それは売り手側に集金出来ない何んらかの問題が、必ずある筈である。よく調べてみた方がよい。請求の締めから支払いまでの業務がルーティン化されているので、支払日が変更になるようなことはあり得ない。

 クレームや支払い時の違算の多い会社は、要注意である。信用不安が起きる会社は、日常の取引のどこかの時点で、必ず、何らかのトラブルを起こしている。このトラブルが信用不安の危険信号であることが多いので、トラブルが起こったらその原因をよくリサーチしなければならない。

 右肩上がりの景気のときは支払いが悪くなることは稀であるので、さしたる懸念はないが、景気が沈滞している時は、支払い振りの悪い会社との取引は避けるべきである。しかし、営業マンは売り上げが欲しいばかりに墓穴を掘ることも多いので、冷静に判断する必要がある。「この地区を攻める足掛かりとして、重要な取引先だ」という思い込みに陥ってしまっていることがよくある。

 新規取引にあたっては、私の経験から言えば、最初の一年間は予信限度額を低く設定して「支払い振り」や「トラブルの発生頻度と状況」や「その会社の取引先」などをじっくりと注意して見るくらいの余裕を持った方がよい。営業マンには「思い込み病」患者も多いので、百戦錬磨の課長や部長を同道して第三者の目で判断して貰うことも大事である。

 どんな会社にも春夏秋冬、四季に応じた姿というものがある。即ち、会社には春に元気の良い会社だとか、秋に活気が溢れる会社など季節変動のある会社も多いので、一時を見て企業を判断するのは危険である。大抵、一年間、取引してみれば、信用出来る先か、そうでない先か大体見極めがつく。これを見極めずに、商品を大量に販売したばかりに、後の祭りとなることがよくある。こうなると、その会社から撤退することは至難の技である。下手に商品を止めれば、不良債権を掴むことになりかねない。延命させながら、債権を回収するという綱渡りの芸当をしなければならなくなる。


Enter From 検索  UpDate & Back Number Index  Home  Tour  Gourmet  Culture  Business01  Business02  Business03  Profile