Profile of Mr. IKUO                         VOL. 29/ 2001.4.1号

欧米人の旅日本人の旅

 ハワイを訪れるたび、いつも思うことがある。欧米人は家族や老夫婦の旅行者が多いが、日本人は殆どが団体さんか新婚さんである。ということを言いたいのではない。これはさて置いて、言いたいことは日本人と欧米人の旅の楽しみ方の違いである。

 早朝のホテルのレストランは、まるで昼食時の学食のような風景である。我勝ちにと席取り合戦が繰り広げられ芋を洗うような混雑である。席を押さえたら、今度はバイキング料理の前に長蛇の列が出来てごった返すことになる。しかし、欧米人は疎らにしか見掛けない。殆どがオプショナルツアーに出かける日本人や東洋人ばかりである。しかも、オプショナルツアーの集合時間を気にしているのだろう。皆、食事に熱中して会話も乏しく、忙(せわ)しくそそくさとひたすら朝食を食べる。

 オプショナルツアーのバスが出発すると、広大なレストランは潮が引いたように一瞬のうちにガランとし、静寂がやって来る。この静けさがレストラン本来の雰囲気だろう。

 忙しい旅行客が消えた午前8時を廻った頃からポツリ、ポツリと欧米人の老夫婦や家族が談笑し合いながらのんびりと現れる。ガランとなったテーブルに思い思いに座ると、バイキング料理をゆっくりと選んでから家族だけでのんびりと朝食を楽しみはじめる。見るからに余暇を楽しんでいるという和やかな光景である。日本人もパラパラといるが大半は欧米人の家族ばかりで、先程のガチャガチャした雰囲気が一変してしまう。

 時間をかけた食事が終わると、これから特に何かをしなければならないという予定もないようで、ホテル内のプールのデッキチェア−に寝転んでまどろんだり、本を広げてのんびりと寛(くつろ)ぐ。その姿にはひたすら余暇を楽しんでいるという風情が漂って来る。余裕が感じられる楽しみ方である。私の目には欧米人の余裕が羨ましく映った。この光景を見ていると、彼らの旅はリゾートレジャーを楽しむ滞在型であるのがよく分かる。

 欧米人のようにハワイの光と空気と海を楽しむ「のんびり」旅行もあってよいと思うのだが、精力的に貪欲に行動するのが日本人や東洋人の旅なのである。「何処に行って、何をして、何を見て、何を買い、何を食べるか」が大事なのであって、詰まるところ、日本人は余暇Leisureを楽しむのではなく観光Tour & Viewを目的としているのである。のんびり寝転んで休息するだけなら、わざわざハワイまで来る必要はないという理屈なのだろう。従って、忙(せわ)しくあちこちの観光地や施設を訪れることになる。

 そして帰国の日の空港には、隣近所や勤務先や親戚などのお土産を両手に抱えきれないほど提げて現れ、席を立つのも億劫なように疲れ果てて焦点の定まらない虚ろな目で待合室のソファーに座り込んで、搭乗案内のアナウンスを待つことになる。まるで他人のために散財をしに旅に来ているような光景である。そして、飛行機のシートでは欧米人は静かに読書に耽る人が多いが、日本人は正体を失って眠りこける。海外旅行に限らず、国内旅行も似たようなものである。やはり、国民性なのかも知れない。


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