
東京の街並みが余りに大き過ぎて目立たないが、兼六園や偕楽園にも匹敵するような名園は東京にも沢山ある。しかし、綺麗な海や緑豊かな山や清冽な河川がないのは寂しい。それでも2時間ほど遠出をすれば、東京の周辺には海も山も川も、豊かな自然が沢山ある。
群馬や千葉には坂東太郎の大利根があり、神奈川には葉山の海、静岡には伊豆の海、千葉には九十九里浜、東京の奥には雲取(くもとり)山、神奈川には丹沢(たんざわ)山や箱根山、長野には空気清浄な蓼科(たでしな)高原や清里(きよさと)高原などなど…。あと2ヶ月ばかりで海開きである。今回は、太陽と海と山が楽しめる東京から南伊豆までのドライブコースを紹介しよう。
湘南の海をのんびり見物して伊豆半島に入るつもりなら、国道246号線を下って来て、玉川瀬田から第三京浜自動車道から横浜新道に入り、箱根大学駅伝で有名な遊行寺の坂を下って藤沢橋から左折して江ノ島へ向かうか、あるいはそのまま真っ直ぐ突っ切って藤沢警察署の脇を抜けて湘南海岸へ出るのもよい。そして、大磯から有料の西湘自動車道を小田原に向かう。大磯ロングビーチの名に負けない長く雄大な浜辺の脇を走る道で一部は海の上を走る道である。太平洋の潮風を額や頬に生に感じながらのドライブは何んとも心地よく、気分をハイにし開放的にさせてくれる。
伊豆半島へ一刻も早く入りたいなら、都内の首都高速環状線から渋谷方面へ入り、用賀から東名高速道路を走るコースがよい。川崎、横浜を過ぎて、厚木で小田原厚木道路に入る。小田原厚木道路は道路幅が狭いのがちょっと惜しいが、伊豆へ向かって一直線に走る山間(やまあい)の爽やかなハイウェイである。小田原で一般道に降りて市内を暫く走ると、「三島・箱根」、「真鶴・熱海」と書かれた標識のある分岐点がある。
「箱根八里は馬でも…」と歌われた箱根路を右に見ながら、真鶴(まなづる)有料道路に乗る。海岸縁(べり)を一般道と並んで走っているが、有料道路は格段に車が少ない。紺碧の太平洋を左手に、伊豆の潅木林を右手に眺めながら、快適なドライブが楽しめる。詩人智恵子が「東京には空がない」と嘆いた空も、ここら辺りまで来ると空気も澄み、空も青く高くなる。伊豆には、空も海も山も食べ物もある。
湯河原の三叉路を過ぎる。右折すれば奥湯河原である。昔、学生時代の仲間と一泊麻雀をした旅館「加満田(かまた)」の風呂場から見たライトアップされた夜桜が見事だった。熱海沖左手、10kmには初島が波間に浮かんでいるように見える。この島は昔は共同生活の島だったらしい。戸数を42戸に限定して、耕地を42等分して生活していたのだそうだ。しかし、現在はそれらの風習もなくなり、観光船が往き来して観光地となっている。
熱海を過ぎ、網代(あじろ)を通る。網代は干物が美味い。国道脇にカワハギの干物が絶品のお土産屋さんがある。昔ながらに天日干しして、七輪で焼いている。いつも東京ナンバーの車が数台道路端に駐車しているので、注意していれば直ぐ分かる。
伊東を過ぎると、ゴルフ族には垂涎の彼の有名な川奈ゴルフ場がある。ハワイのような華麗なゴルフ場で、海岸に沿って設計されたコースである。すぐ近くには豪快な漁師料理の「海女の小屋」がある。蟹が一匹丸ごと入った味噌汁が美味かった。ウニの釜飯も絶品だった。機会があったら是非立ち寄って、試しに食べて見られることをお勧めする。きっと満足される筈である。
更にひたすら南下すると、左手遠方の水平線上に「あんこ椿は〜」で有名な大島の島影が見えてくる。水平線を大型タンカーや貨物船がひっきりなしに通る。時には三原山の噴煙が見えることもあるらしい。
伊東を過ぎ、熱川の湯煙りをみて、ペリー提督が上陸した下田に到着する。東京から約160kmである。殆ど全ての行程が海岸線を走るコースで、伊豆の白砂と静かに寄せる白波を眺めていると自然と気分が開放的な気分になる。お腹が空いたら地元料理を食べるのがよい。魚が美味いのは当然だが、山菜料理や伊豆山葵も美味である。山の中のコースも楽しい。一高の制服に憧れた伊豆の「踊子」が通った道は半島の中央部にあり、イノシシ料理の宿もある。
下田から先は、南伊豆の突端の弓ヶ浜に行くのもよいし、石廊崎灯台まで足を伸ばすのもよい。下田から石廊崎に向かう国道138号線の途中、下賀茂温泉から左に折れて田んぼ道を暫く行くと浜に出る。そこが弓ヶ浜である。和弓を引き絞ったような形をしている白砂の綺麗な浜がある。
伊豆といえばやはり夏のリゾート地で、海水浴と温泉と海の幸山の幸料理が楽しめるが、正月の初日の出を見るために温泉に来る人も多い。東海岸と西海岸とでは雲泥の差がある。東海岸は白砂が女性的で太陽に映えて明るく美しいが、西海岸はどことなく暗く、雄々しく荒々しい。