以久遠氏の Beauty, Business & Favorites VOL. 33 2001.8.15号 【毎月15日更新 since 1998.12.15】

福沢諭吉が好んで使った言葉に「行為する者にとって、行為せざる者は最も過酷な批判者である」という箴言(しんげん)がある。他人の行動や行為を無責任に批判することを戒めた言葉であるが、一方では、無責任な批判に惑わされるな、という戒めでもある。
いつの世にも、口ばかりが達者で一言多い人は必ずいる。彼らは自ら行動する自信と決断力が無いにもかかわらず、他人の言動に対し何かにつけてあれこれと口を出して批判したがる。もし失敗でもしようものなら、「それ見たことか!」とばかりに、あたかも事前から予測していたかのように攻撃的発言をしたがる。それを、「うるさい!」と無視すれば、火に油を注ぐようなもので更に姦(かしま)しくなる。
概して、弁舌が爽やかなだけに、一見、説得力があるように見え、その批判は真しやかに聞こえる。それだけに、善良なる人を錯覚に陥れて信じ込ませ、行動に走らせることも多く、実に始末が悪い。まさしく、「過酷な批判者」そのものである。古代ギリシャの詩人アイスキュロスの、
「手軽なことだ。災難を身に受けない者が、非道(ひど)い目にあっている者らにあれこれと忠告するのは…」
という言葉そのものとなるのである。行為とは決断の結果である。決断なくして行為はあり得ず、行為なくして結果はあり得ない。そして、行為には必ずリスクがつきまとう。リスクを伴わない決断は決断とは言えない。それは単なる成り行きの行動でしかない。
他人が自らが決断し自らが責任を負うという行為をなすことについて、批判という行動を執りたいのであれば、行為する者と同等のリスクを背負うという覚悟を持たなければならない。さもなければ、リスクを背負わない他人が、とやかく忠告という名の批判はすべきでない。
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