アフガニスタンのタリバン政権とアメリカのブッシュの戦闘について一言言っておきたいことがある。聞くところによると、アメリカの法律には「テロに対しては軍事行為を認めない」という条文があるらしい。アメリカの法律でも、戦争とテロの概念は明確に定義付けられているのである。
9月11日のニューヨークテロ事件が勃発した翌日に、ブッシュ大統領が「これは21世紀型の”新しい戦争”である。従って、アメリカは必ず報復戦争を行なう」と全世界に向かって宣言したことは皆さんの記憶にも鮮明に残っていると思う。
今、思うと、ブッシュは前述の法律があることを百も承知であるがために、「21世紀型の新しい戦争」という分かったような分からないような妙な表現をせざるを得なかったのではないだろうか?そうでなければ、ブッシュは大統領として自らアメリカの国内法に違反した行動を採っていることになる。そして、アメリカのマスコミも国民も見て見ぬ振りをしていることになり、契約社会のアメリカにしては妙な雲行きである。
「新しい戦争」という言葉があまりに早く発表されたことについて、その言葉は誰が造ったのか?あるいはそういう筋書きは誰が書いたのか?その本当の目的は何処にあるのか?「21世紀型の」という表現が何を意味しているのか?など、幾ばくかのもやもやとした疑念が残っているが、今回はこれには触れないで置く。
もしも世界貿易貿易センタービルだけのテロであったら「こうはならなかったかも知れない」という思いは今でも残っているが、国防総省が攻撃されたことによって、世界の世論はブッシュの「新しい戦争」発言を殆ど何の疑問も抱かず認めた感がある。しかし、「戦争」と「テロ」は本質的に異なることを認識しておく必要があるだろう。
テロとは、本来、政治的信条を持って特定の個人や団体を襲撃する政治活動のひとつであって、集団無差別テロという目的不明の概念はあってはならないものである。それは単なる殺人という刑事犯罪でしかない筈だが…。そして、戦争とは、本来、国と国とが予め相手国に対して宣戦布告をして武器を持って戦うものである。
従って、ブッシュの言動は国内法のみならず国際法をも無視した極めて独善的行動といわざるを得ない。今回のテロ事件は、「国内で発生した事件」という意味では国内の刑事犯罪である。複数の州にまたがっているので、連邦警察と州警察が協力して処理すべき性格のものである。もし、それが本当に自国外にまで及ぶものであれば、むしろ国外については国連警察軍が処理すべき事件であると考えるのが常識的である。さもないと、折角の国際法の存在を危ういものにしかねないという懸念が発生する。
しかも、国内の単なるテロ事件ということになれば、アフガニスタンのタリバン政権をアメリカが認めていようがいまいが、アメリカがアフガニスタンに侵攻するのは「アフガニスタンの国家主権」を侵害する行為ということになる。戦争であれば、アメリカはいつどの国に「宣戦布告」をしたのか?現実は、タリバン政権に反発する「北部同盟」を利用してアフガニスタンの内政に干渉していることにもなりはしないか?
それだけではなく、ブッシュの言動から判断すると、イスラム過激派のいる諸外国も戦闘の対象となると唱えている。この発言は、今回のアフガニスタン侵攻と同じ理屈で各国へ侵攻することを意味しており、これは国家主権をないがしろにする無茶苦茶な論理と言わざるを得ない。
また、ブッシュは「中立は認めない」という発言までし、「Show the flag」(立場を明確にしろ:源氏か平氏かはっきりさせろ)という言葉で、各国にアメリカ側に立つのか、タリバン側に立つのかを迫ったが、これも冷静に考えればおかしな話である。中立という立場は現に永世中立を唱えるスイスという国家がある訳で、どちらに加担するか、あるいはどちらにも加担しないという選択は国家の当然の権利として当然あり得るのであるから、この発言も見ようによってはブッシュの内政干渉的発言と言わざるを得ない。その点、中国だけが冷静に中立を表明しているのは見上げたものである。