以久遠氏 Beauty, Business & Favorites   旅紀行   VOL. 35 / 2001.10.15号

伊豆半島、修善寺への旅  

 今月10月、秋空の爽やかな日、随分久し振りに伊豆半島の修善寺を訪れた。私の住む神奈川県藤沢市から静岡県田方郡の修善寺町に行くには、江ノ島のある湘南海岸に出て海を見ながら、海岸線に沿って走る国道134号線をひたすら西へ走る。茅ヶ崎、平塚、大磯を過ぎると二宮に着く。潮風の爽やかなこの道を走るときばかりは、オープンカーを見ると羨ましく思う。

 二宮から有料の西湘バイパスに乗る。まるで海上を走るような自動車専用道路で、すこぶる気分の良いドライブが楽しめるが、それもあっという間で20分もすれば小田原に着く。小田原は後北条家、北条早雲が作った街である。西湘バイパスからそのまま箱根ターンパイクに乗り入れ箱根峠を目指して上る。尾根を目指して直線的に登る急な坂道である。

 箱根峠へ車で行くには、昔の東海道である国道一号線を使って毎年正月二日と三日に行なわれる箱根駅伝の道を利用する経路もあるが、有料道路を利用する方が快適で早い。有料道路は、日本画家横山大観の号にもなっている大観山の南側に出る尾根道の箱根ターンパイクと、大観山の北側に出る谷道のルートの箱根新道の二ッある。二本の道は山側と谷側に分かれて並行して走っており、どちらもほぼ一直線に箱根峠に向かっている。

 箱根新道へは、西湘バイパスを小田原で降り暫く一般道を走ると、小田急線箱根湯本駅の手前で「箱根新道」と書かれた緑色の交通標識が現れる。国道一号線から左へ別れる。箱根新道は登ったり下ったりのルートで、初心者やゆっくりドライブを楽しみたい人たちにお薦めである。

 その点、箱根ターンパイクは殆ど下りの無い急な坂道を直線的にひたすら登るだけのルートで、馬力の弱い車にはちょっと苦しい。勾配のきつい直線路であるだけに、箱根新道に比べると20分くらい早い。箱根を越えて三島や沼津へ急ぐ人たちが利用する道である。箱根ターンパイクの方が料金が高い所為か利用する車も少なく、私は、エンジンを噴かせて一気に登り上がるターンパイクの方が豪快で爽快な気分が楽しめて好きである。

 10月の箱根路は抜けるように澄んだ青空が心地よいだけだが、11月に入ると箱根の山にも紅葉が始まる。紅葉見物を楽しみながら一般道や箱根新道をゆっくり登るのも興趣深い。箱根の紅葉は一面真っ赤に染まる東北のような紅葉ではないが、深山幽谷の深い緑林の中のところどころに黄や紅の紅葉が、それなりに深まり行く秋を感じさせてくれる。

 私はこの日も有料道路の箱根ターンパイクを利用した。小田原の海岸線から標高800mの箱根峠までの20kmの箱根路を雲ひとつない秋空の太陽を受けて銀色に輝くススキの原を目の端に入れて殆ど一直線に一気に登った。眼下に満々と水をたたえた芦ノ湖の紺碧の湖面が見えて来る。芦ノ湖に浮かぶように標高1438mの神山が聳え、神山の北に1137mの早雲山、南に1327mの駒ヶ岳、更に手前に1084mの二子山が重なるようにして通称箱根山がある。芦ノ湖の向こうに見える外輪山が神奈川県と静岡県との県境である。

 芦ノ湖を右に見ながら左に折れて伊豆スカイラインへ入る。伊豆半島の東岸の山波の尾根を走る伊豆スカイラインは、標高1004mの鞍掛山の南から尾根伝いに十国峠、玄岳、山伏峠を経て、亀石峠から更に尾根伝いに標高1406mの天城山へ至る40kmほどのドライブウェイである。

 秋口の抜けるような青空の下、熱海側から吹き上げる風と相模湾側から吹き上げる風を交互に感じながら、標高600m〜800mの尾根道のドライブウェイを走るのは爽快である。十国峠のレストハウスからの相模湾と熱海の展望、駿河湾のキラキラと輝く海の展望、箱根の左に聳える富士山の絶景は素晴らしい。また、ゴルフ場銀座でもある。名だたる名コースが左右に雄大に広がる光景や玄岳のレストハウスからの眺めも劣らず絶景である。

 この道は修善寺への湘南方面からの最短ルートで、私は亀石峠から西へ大仁(おおひと)町に向かって下りた。亀石峠から東へ下りると、川奈ゴルフ場や漁師料理の「海女の小屋」のある伊東に出る。以前、海女の小屋与望亭で食べた絶品の漁師料理「蟹の味噌汁」を思い出した。

 大仁から国道136号線を暫く南へ走ると修善寺の街に着く。修善寺は、東西と南を山に囲まれた盆地状の平坦なところで、伊豆半島の北部中央を流れる狩野川縁にある温泉の町である。鰻の産地なのか、136号線の傍らや狩野川縁には鰻の蒲焼の店と、伊豆の山葵の看板がやたらと目に付く。川端康成の名作「伊豆の踊り子」の踊り子と第一高等学校の学生が歩いた天城峠のある下田街道である。修善寺を過ぎると急に険しい山道となり、天城峠の近くまで行くと名物の猪料理がある。


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