以久遠氏 の Profile 雑感                    VOL. 38 / 2002.01.15

邪馬台国考シリーズ<8>     悪戦苦闘の狗奴国邪馬台国探し

 邪馬台国探索を始めると、まるで底無し沼で足をバタバタさせて益々深みにはまるようなもどかしさを感じる。邪馬台国はここだろう、というある程度の確信的感触は感じられるのだが、如何せん、情報の少なさのために余人を納得させ得るだけの裏付けが伴わない。恐らく、市井の研究者の皆さんも同じ思いではないかと思う。

 邪馬台国の場所を比定するのに、「邪馬台国の隣国」である狗奴(くな)の所在地が重要な意味を持っている。候補地として熊本県、鹿児島県、宮崎県、愛媛県、高知県、香川県などが考えられるのだが、狗奴国も邪馬台国以上に杳(よう)として姿が見えて来ない。

 例えば、「狗(く)」は「犬」を意味する。福岡県南部の筑後市は山門(やまと)郡と旧八女(やめ)郡との中間に所在するが、市に昇格する前は八女郡羽犬塚(はいぬづか)町と言った。しかも、その町の北部には「犬塚」という地名も残っている。羽犬塚という名前の由来には朝鮮出兵のために九州に滞在していた豊臣秀吉が飼っていた愛犬に因んだという説話もあるようだが、町の古さに比べれば時代が新し過ぎるように思う。どうも地名の由来が判然としない。

 関東や北海道の新開地には、福岡とか久留米とか佐賀とか伊達などのように、移住する前の土地の名称が付けられていることがよくある。人の移住によって出来た町には大抵同じ名前の地名があるものだが、「犬」の付く地名は殆ど無い。同じ旧八女郡福島町(現八女市福島)の南に「川犬(かわい)」という地名があるくらいで、福岡県や熊本県だけでなく九州や四国にも無いのである。何故、ここ旧八女郡にだけあるのだろうか?

 また、邪馬台国という国名に付いても、魏志倭人伝に記載されている名称は「邪馬壹国」であり、宋書や魏略などは「邪馬臺国」である。この「臺」とは国名の一部なのだろうか?という疑問も未だに残っている。邪馬(やま)国というのは、地勢的に「台地」状の場所に存在していたことを意味しているのではないのか?邪馬台国の時代より100年以上後の時代である青森の三内丸山遺跡も佐賀の吉野ヶ里遺跡も、陽当たりの良い台地状の場所に存在していることから見ても邪馬台国が台地上にあったであろうことは十分推定できる。あるいは「女王」が居る国という意味で「臺国」という表現をしたのかも知れない。

 魏志倭人伝の僅か千数百字の「倭国」の記事が紀元50年頃から250年頃までを記載しているところから見て、邪馬台国が発生する前までは邪馬国しかなかったのではないだろうか?魏志倭人伝には邪馬台国が出来る前までは邪馬国が存在したことが記されており、途中から「邪馬壹国」という記載が見られるところからも、そういう気がしてならない。また、何度も「邪馬壹国」と記載されていることから見ても、「壹」を「臺」の単なる書写誤字として片付けてしまうのは乱暴過ぎるし間違いのように思える。

 狗奴国に想定されている熊本県北部には石造物遺跡の古墳があちこちに現存している。太陽をイメージしたと思われる円形模様を描いた壁画や刻画が残されている。それに引き換え、福岡県の古墳は朝鮮系の彩色壁画が多いようである。ただ、福岡県でも南部の狗奴国と接する八女市には国造磐井の前方後円墳に見られるような、福岡県北部の古墳では見られない石造物の遺物が現存しており、福岡県北部のものとは明らかに様相を異にしている。この事実は何を意味しているのだろうか?

 紀元100年頃に邪馬国と狗奴国、その後邪馬台国と狗奴国の間に大規模な戦争が度々起こっていたようであることを考えると、羽犬塚の辺りは狗奴国の領土になったり、邪馬台国の領土になったりしていたのではないだろうか?その戦争での狗奴人の戦死者を弔った場所が「羽犬塚」あるいは「犬塚」という地名で残ったのではないだろうか?

 地名の謂れについては、別の項でも述べが、特定の人間の姓が地名になったり、誰もが認める目印が地名になったり、あるいは歴史的遺産が地名になったりする。宮崎県を「日向(ひゅうが)」とも言うが、筑後地方の耳納山麓には「日向」を「ヒムカ」と読ませる地名もある。「卑弥呼」という名前にしても、「ヒミコ」と読むのか、「ヒミカ」と読むのか、判然としない。古代中国語の読み方は「ヒミカ」であると唱える考古学者もいるくらいで、卑弥呼の読み方さえ確定していないのである。

 先日、茨城県のつくば市に行くときに通った294号線に「陽光子××」という新興宗教の看板を見付けた。何と読むのか知らないが、これも読みようによっては「ヒミコ」と読めないこともない。茨城の考古学に興味を持っている知人に「あの新興宗教はヒミコ××というのか?」と訊ねたら、「なるほど、そう言われればヒミコとも読めるなぁ」と感心していた。 

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