以久遠氏の Beauty,Business & Favorites      旅紀行      VOL. 38 / 2002.01.15

  鹿児島、錦江湾に浮かぶ桜島

 桜島は、鹿児島市内から東へ10kmくらいしか離れていない活火山で、錦江(きんこう)湾の中央に浮かぶ島のように見える。中央に標高1117mの主峰御岳(おんたけ)が聳え、南へ1110mの中岳、1060mの南岳と並んでおり、海岸より急峻に聳え立っている。南岳は今も活発に活動しており、時折り、南岳の頂から薄い噴煙がたなびく。桜島の山の姿はゴツゴツとした岩山で、雄々しく猛々しいコニーデ式の活火山である。鹿児島市内から見ると頂が平らな台形の山であるが、富士山のような優美な優しさはない。恐らく、南から見れば綺麗な円錐形をしているのではないかと思う。

 我が国の火山はコニーデ式とトロイデ式が多いようだが、端麗な円錐形型のコニーデ式火山には名峰が多い。北海道の雄阿寒岳、蝦夷富士の異名のある羊蹄山(ようていざん)津軽富士と呼ばれる岩木山、岩手富士の異名を持つ岩手山、スキーのメッカ蔵王山系、会津の磐梯山、南アルプスの乗鞍岳(のりくらだけ)、上信越の浅間山、霧島山塊の韓国岳(からくにだけ)、薩摩半島の突端の薩摩富士と呼ばれる開聞岳(かいもんだけ)などがあるが、その代表は勿論富士山である。

 桜島へ陸伝いに入るには、鹿児島の丁度反対側にあたる大隈半島側からしか入れないが、大正の噴火や昭和の噴火によって出来た溶岩台地の中の道を通らなければならない。火山が活動中は入山禁止になるので、いつでも入れる訳ではないが、鹿児島市内から桜島を訪れるには錦江湾を一周するようなコースになり、50〜60kmの距離になる。海岸には真っ黒いコークスのような溶岩が人形のように立っている。島中に地震や火山観測の測候所や研究施設がある。

 噴煙をたなびかせている桜島を見ると、今にも噴火するのではないかと肝を冷やさせるだけの迫力がある。桜島は小学生の時の修学旅行で見たのが初めてで、それ以来数回訪れているが、いつも対岸より見物するだけで、まだ桜島には行ったことはない。しかし、危険を冒してまでわざわざ島内まで行こうという気も起きなかったのが正直なところである。海に浮かぶ桜島を見るだけで十分観光した気分になる。

 桜島に遮断されたようにして海と言うより湖のような形の火口湖、鹿児島湾は、昔は深い藍色の海の美しさから錦江(きんこう湾と呼ばれた。いつ見ても海面には漣(さざなみ)しかなく静かに凪いだ美しい海であるが、海は深く、1万トン級の大型船が悠々と航行できる。正しく海抜0mからそそり立ち、鹿児島市を見下ろすように聳えている姿は壮大である。頂上付近には噴煙のような微かな白雲がたなびいて、岩肌が露出した絶壁が見える。特に、東シナ海に沈む夕日を受ける頃の桜島が絶佳である。赤茶けた岩肌が、まるで赤富士のように真っ赤に変色するかと思うと、一瞬のうちに赤紫に、あるいは青色にと、刻一刻と変化し続け一時として止まることを知らない。

 桜島は高速道路の九州自動車道からも見える。桜島を展望するサービスエリアも出来ている。西南戦争で野に下った西郷隆盛が官軍の鉄砲隊の的なって凄絶な死を遂げた城山からの桜島も絶景であるが、私は錦江湾の浜辺にある磯庭園、旧島津家の別荘磯望亭から見るのが最も桜島らしく好きである。別邸の棕櫚(しゅろ)の木の立つ庭先の前方に満々と水を湛えた錦江湾があり、その静かな海の中にまるで浮かんでいるようにして桜島がある。磯庭園公園の周辺にはレストランやコーヒーショップも沢山あり、コーヒーを啜りながら桜島を見物するのも一興である。一時間、二時間見物してても飽きない。


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