以久遠氏の Beauty,Business & Favorites      ビジネス      VOL. 39 / 2002.02.15

---トップセールスマンの知恵---

マーケットインセールス  

 再び、「トップセールスマンの知恵」をご紹介しよう。マーケットインセールスのプロであるトップセールスマンの彼らがお客さんと商談する時の心構えは実に隙がない。商談をスムーズに進めるために、スタートは世間一般の話題から始まることが多いが、彼らはその導入部の話題が実に豊富である。しかし、時事問題や政治問題については余り触れたがらないようである。お客さんと意見が合わず口論になってお客さんを怒らせるようでは商売に響くからである。従って、当り障りの無い趣味などの話題となる。従って、お客さんの出身地や出身学校などはもちろん、性格や家庭状況がどうであるかなどについて微に入り細に亘って調べ尽くしている。

 販売しようとする商品について、お客さんがどういう反応を示すか、どんな質問をするかといったことを事前に入念に検討している。同等品情報、競合品情報、品質比較などの「情報や知識で武装しておく」ことを忘れない。そして、「話が具体的に進むように、見積り書や企画書なども用意しておく」のである。商談の進行次第ではその場で契約出来るように契約書も用意している。

 お客さん訪問において最も注意しなければならないことは、質問されて返事ができず、「資料をお持ちして、もう一度お伺いします」という訪問である。営業的には、これが一番拙い。殆んど営業マンとしては落第である。「このセールスマンは何の用件で来たのだろう?」と思われるだけで、お客さんには要領の悪さだけを印象付けてしまう。トップセールスマンが最も嫌う営業スタイルである。

 とんとん拍子に商談が進み、「では、契約」という場面で契約書の用意が無く、契約書を作って翌日出直してみたら、「一晩眠ったら、気が変わったよ」というようなことはしばしばある。また、お客さんに質問されて「今度、資料をお持ちしてお伺いします」では、お客さんに「な〜んだ、売り込みに来たんじゃないのか。説明に来ただけなのか」という印象を与えてしまう。折角、お客さんが「買おうかな」と熱い気持ちを抱き始めているのに、これでは一瞬にして冷めさせてしまうことになる。契約はタイミングである。数少ないチャンスを逃さないように、いかなる場合にあっても決着出来る態勢で備えているのである。

 「買おうか、買うまいか」といつも気持ちが揺れているのがお客さんである。お客さんの気持ちの動きが判らないようでは、マーケットインセールスには程遠い。お客さんの気持ちになり、お客さんの発想で、お客さんの立場で考えられるようになればマーケットインセールスが出来て来たと言える。そうなると、お客さんは「この営業マンは、親身になって考えて呉れているようだから、任せてみようか」という気持ちを抱くようになる。早く言えば、「お抱えセールスマン」という身内扱いになるのである。「自分を売り込む」、これが簡単なようで難しい。時間と労力と長年の信用によってしかなり得ない。

 並以下の営業マンには、資本金も本社所在地はおろか業務内容さえも知らないという者さえいる。驚きである。これで、商談が旨く行く訳がない。商談というのは、始めから終わりまで商品のことばかり話している訳ではない。商談は緩急の話題が織り交ざって進行する。趣味の話が混じったり、家族の話題が挟まったりして和やかに進むのである。従って、豊富な知識や情報が大切なのである。それも誰にも負けない知識があればなおよい。商談において話題が途切れることほど怖いものはない。商談そのものが白けてしまうことになる。一度白けたムードは簡単には元に戻らない。そうなったら、改めて出直すしかないのである。

毅然としたセールス

 トップセールスマンという人たちは「安く売っているからトップなのだろう」と思っている人がいたら大間違いである。普通の営業マンは、お客さんから「少し安くして呉れ」と言われると、注文を取りたい一心で大抵値引きをOKしてしまう。ところが、トップセールスマンの人たちは案に相違して滅多なことでは値引きしないのである。お客さんからの値引き要求には 31 % の人が「絶対に応じない」と答えている。7割ぐらいの人たちは値引きに応じている訳であるが、「絶対に」という人が三割いるくらいでだから、「滅多なことでは値引きしない」という人が殆どということだろう。

 これは、商品の価格や保証について「あの人から買っておけば、何かあっても心配はない」というギャランティー面での高い評価を日常の営業姿勢の中でお客さんとの間に培っている証拠だろう。お客さんから、このような評価を得るようになる迄には、お客さんとの間に人間的な信頼関係が出来上がっていなくてはならない。それに至るまでの、たゆまぬ研鑽努力を見落としてはならない。駄目な営業マンは、この蓄積が全くと言ってよいほど出来ない。

 彼らの値引きをしないという点については、「価格の安さ以外の要素で、自分なりにアピールして販売して来た」というプライドの高さが感じられ、毅然とした販売姿勢が窺われる。それも、頑に拒絶するのではなく、柔らかい言葉とにこやかな笑顔でキッパリと拒絶してしまうのである。拒絶というと表情が強張って頑なイメージになるが、背筋を延ばしてにこやかに明るい声で断る態度は、むしろお客さんには爽やかな印象を与えるようである。

マナーと礼儀

 トップセールスマンというのはマナーも一流だろうと思っていたが、暗に相違して、「マナーに気づかう」という人の割合が意外に低い。「言葉使いやマナー」に気を使う人が 43 % 、「身だしなみ」に気を付ける人が 40 % と、半数以上のトップセールマンが気にしていないことになる。しかし、ザンバラ髪やヨレヨレの線の消えたズボンをはいているようなトップセールスマンは探してもいない筈である。

 トップセールスマンは、身だしなみも、言葉使いも、振る舞いも、礼儀作法も実に見事なものである。お客さんに不快な思いをさせるようではトップセールスマンにはなれない。お客さんを不愉快にさせるようであれば、絶対にトップセールスマンには選ばれない。従って、これは彼らにとっては当たり前すぎてパーセントには現れなかったのではないかと思う。アンケート項目としては余り意味がなかったのだろう。

 最近の若い営業マンの言葉使いを聞いていると、本人は無意識にだと思うが、まるで友人と喋っているような場違いの気安さや目上の者に対する敬の精神が希薄で、言わずもがなの失礼な言動が時々現れヒヤッとすることがある。丁寧語や敬語の使い方は危なっかしいし、語彙が少なく表現力が稚拙なためにこういうことが起こる。社交術の未熟さ故の失敗であるが、トップセールマンはこういう失敗は絶対にしない。

旺盛な行動力とサービス精神

 トップセールスマンとしての行動面の特徴としては、「サービスは人より上回っており、顧客から厚い信頼を受けている」と自負している人が 42 % 、「顧客への情報提供に優れている」と自負している人が 31 % という数字である。

 お客さんに対しては、仕事だけでなく普段から私的なサービス活動も疎かにしていないのである。お客さんの家の庭の草取りをする、というようなことまではないとは思うが、お客さんが何を求め、お客さんに何がしてあげられるか、何が喜ばれるかということをお客さんの立場に立って顧客サービスに徹しているのだろうと思う。

 若干、パーセントが低いようにも思うが、「誰と比較してか」という点が明瞭でないので、一概には言えない。一般的に自分を誰かと比較するとき、自分と同レベルの人と比較するのが普通であることから考えると、トップセールスマンレベルとしては相当な自信ということが出来よう。


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