以久遠氏の Beauty,Business & Favorites    ビジネス座談    VOL-03 /1999.01.15

印象的な営業マン  

 世の中には一度か二度しか会ったことがなく、しかも、その後十数年も経っているというのに、何かの拍子に「そう言えば、彼はどうしているかなぁ」と面影をふっと思い出させる忘れ難い人がいる。そうかと思えば、三度も四度も会っているのに、どうしても覚えられない極めて印象の薄い人もいる。脳の記憶のメカニズムがどうなっているのか知らないが、ヒヤッ!としたり、マズイ!と思ったりした経験をお持ちの方も多いだろう。

 印象の強い人というのは、彼の言動の何かが記憶の深層部のあちこちに強烈なクサビを打ち込むのだろうと思う。こういう人とは、十数年振りに再会しても十数年のブランクは一瞬の内に雲散霧消してしまう。瞬く間に、話題は過去から現在に到達し、話題が沸騰して実に楽しい。不思議なことに、直ぐに忘れてしまう人というのは何度会っても、その都度初めて会ったような気にしかならない。そのため、名刺の名前を見て、その度に、思わずしげしげと相手の顔を見つめ直し、「失礼しました。以前、お会いしたことがございますね」という失態をしでかすことになる。

 また、記憶がその程度であるから、前に会った時の話題も忘れてしまっている。同じ話や同じ質問を繰り返すのも失礼だし、前に答えたのと違っていても具合が悪い。こうなると、どうしても口数が減る。下手なことは言えないという警戒感が顔を出し、相手が喋り出すのを待つという態度になりがちなのである。

 沈黙が漂い始めると、「いい天気ですね」とか「お元気のようですね」というような当たり障りのない話題から切り出すことになり、会話がなかなか盛り上がらない。こうしている内に思い出せればよいが、どうしても思い出せない人の場合が困る。時間が経つ程に白けたムードが忍び込み、何となく気まずい空気が漂ってしまい別れのタイミングまでも難しくなる。その癖、別れた後には再び彼の面影はいつしか再び忘却の彼方へ消え去ってしまうことになる。何故なら、双方とも印象に残るような会話をしていないからである。

 このように、ビジネスの世界では印象の薄い人はどうしても不利である。少しぐらい気障っぽくても鼻についてもよいから、意識的にオーバーパフォーマンスを心掛けて、印象を強くした方がよい。出来れば、一度会っただけで覚えて貰えるくらいの、強烈な印象を与えるインパクトが欲しい。

 強烈な印象を与える要素としては、外面的なものと内面的なものがある。外面的なものは、容貌や振る舞いなど見た目の印象である。内面的なものは簡単に言えばその人の持っているオリジナリティーというか、雰囲気みたいなものである。外面的な印象は刹那的で、三国一の美男美女か、けたたましい悪人面でもない限り記憶には残りにくい。その点、真面目さ、誠実さ、迫力、信念、知識といった後天的に自ら築き上げたものは、内面からパワーを発揮し相手に強烈な印象を残す。

 内面的な印象は継続し、記憶の底に蓄積する。容貌や体躯など親から受け継いだ先天的なものはどうにも仕様がないが、内面的なものは本人の努力次第でどうにでもなる。印象的な営業活動の仕方は自分で考えればよい。さまざまの方法がある。


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