PROFILE of Mr.IKUO Vol_03/1999.01.15号
以久遠氏は春になると、愛用のキャノンの一眼レフと交換レンズ一式を携えて、花の写真を撮りに行く。昔は人物写真が多かったが最近は花ばかりである。花屋さんの花には興味がないようで、山野に自然に咲いている野の花を好む。望遠レンズやマクロレンズや接写リングを使って、花を画面一杯に拡大し背景をぼかして写すことが多い。従って、55mmの標準レンズは殆ど使わない。
写真は光の芸術である。そして、花は色が命である。どちらも太陽の光が重要な要素となる。最近は太陽光の蛍光灯が売られているが、写真にするとやはり蛍光灯の青色が出る。しかし戸外での撮影でも、太陽の光が不足するとカラーの発色が悪く、自然色が忠実に再現できない。カラー写真には太陽の光が欠かせないのである。従って、花を撮ろうとすると、対象は自ずと自然の花になる。
風に吹かれて、ゆらゆらと揺れている草花を接写するのは大変である。風が一瞬止む瞬間を狙ってシャッターを押すのであるが、太陽が雲に隠れているとシャッターが押せない。風が強くて花が揺れ過ぎていてもダメである。空を見上げ、ただひたすら太陽が雲の間から顔を出すのを狙って、風の動きを探りながらシャッターチャンスを待つのである。従って、端から見ると、三脚に構えたカメラを放り出して、被写体を見たり、空を見上げたりという妙な光景になる。
それに、花を写す場合には時間帯も大事である。時間帯と言えば、富士山撮影もそうであるらしい。富士山ばかりを撮っている従兄の話しでは、富士山は10時を過ぎると何処からともなく見る見うちに雲が湧いて来て、山頂をあっと言う間に隠してしまうらしい。
花も同じで、花が綺麗に写るのは、午前10時くらいから13時半くらいまでである。花弁に露のような水玉が残っている時間帯が良い。この時間帯を過ぎると、肉眼では気付かないが、カメラは萎(しお)れ始めた花びらを忠実に写してしまうのである。焼き付けて初めて気が付くことになるが、萎れた花弁は活気が亡くなって焼付けしてもどうも迫力に欠け絵になりにくい。
しかも、カメラのレンズは正直である。接写をすればするほど、綺麗なものは綺麗に写る。しかし、汚れや萎れなどの欠点も拡大して強調してしまう。従って、写す前に被写体をよく調べなければならない。欠点のない花を探すのも大変である。