以久遠氏の Beauty,Business & Fasvorites  ビジネス座談    VOL-03/1999.01.15

同じ食事を三度 

 商談だけの付き合いでもお客さんの信頼を得ることは出来るが、親密な関係に至るまでには相当な時間と期間を要する。短期間で親しくなろうと思ったら、やはり飲食接待が効果的である。その時大事なことは、表面だけの接待に終わらせてならないということである。表面だけの接待とは、如何にもお義理的な接待ということである。そうならないようにするためには、必ず、接待の中にお互いだけに通じるプライベートな部分を形成するよう心掛けなければならない。

 では、親密になるにはどうすればよいかということになるが、最も手っとり早い方法は、お客さんと同じ昼食や夕飯を食べることである。しかも、少なくとも三度はお客さんが選んだ同じ食事を相伴しなければならない。不思議なことに、「三度同じ物を食べる」という、こんな他愛無いことが、お互いの気持ちの中に、たちまちにして十年来の知己の感情を湧き起こさせて呉れる。

 どうして三度なのか、あるいは自分が嫌いなものを相伴するなぞと、何でそんなことまでしなければならないのか、と疑問に思われるかも知れない。私の経験から述べているだけであるので、確たる答えは出来ないが、親しい仲間の表現として「同じ釜の飯」という言葉もあるように、一緒に同じものを食べるという行為が、お互いの気持ちの中にある種の安心感と親近感を醸しだす因になっているのだろうと分析している。

 接待は和食か?洋食か?勿論、どちらでも構わない。接待とは、その間、お客さんの幸せを一手に引き受けることである。従って、高級な店で高価な料理でなければならないということではない。お客さんが召し上がりたいものを差し上げることが最高の接待ということである。と言うことは当然なことだが、食事は勝手に注文してはならないということになる。

 料理はお客さんに選んで貰うのが原則である。それがたまたまラーメンかも知れないし、ラザニアかも知れない。お客さんの中には、お寿司が嫌いな人もいるし、健康管理の面から肉類を禁じられている人もいる。蟹や海老を食べると、ジンマシンが起きる人もいる。お客さんにとって最高の御馳走は、お客さんが今一番食べたいものである。

 お客さんにメニューを渡して「お好きな物をどうぞ」と選んで貰うのである。「お任せします」ということであれば、「嫌いなものはありませんか」と聞いて注文することになる。「ご老体には歯に優しいやわらかい食事を、妙齢の女性には上品に映る食べ易い食事を」が、食事接待の基本ルールである。自分が食べたいものを勧めるようでは落第である。

 時々、まるで自分しか食べたことがないかの如くに、「これは美味いですよ」と強引に勧める人がいる。しかし、何が美味いかは、お客さんが決めることである。却って、お客さんの機嫌を損ねる恐れがある。言い方には注意しなければならない。「この店はこれが美味いですよ」ならよい。

 お客さんが、「Aをお願いします」と答えられたら、「ボーイさん、Aを二つお願いします」と、同じものを注文しなければならない。この同じものを注文するという点が接待のコツである。1度や2度の接待ではお客さんも気づかないが、3度目位になると、大抵の人が「この人は、食事の種類まで私に付き合って気を使って呉れているな」と気づいてくれる。この、同じ食事を摂ることに大きな意味がある。

 アルコール類やコーヒー紅茶等の飲み物にはこういう効果はないが、食事にはこのような不思議な効能がある。さり気ない気遣いほど、心にしみるものはない。是非、一度試して見られることをお勧めする。その際、間違っても、この人は会社の費用で、俺をダシにして高いものを食べているな、呑んでるな、と感じさせてはならない。社用族は、端から見ていても余り恰好の良いものではなく、却って相手にはいい印象を与えないものである。

 ゴルフも一緒に食事をするという行為が含まれているので親睦効果は大きいが、近間で短時間に接待できる手軽さという点では何と言っても食事に勝るものはない。また、話題もいきなり生々しい仕事の話しではお客さんは構えてしまうので、最初は仕事に関係ない話題に花を咲かせることである。これが短時間に親しくなるコツである。


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