
不況になると倒産が増える。これまではバブル期の不動産投資や株式投資の失敗による倒産が主であったが、昨年あたりから業績悪化による倒産が増えて来ている。全倒産件数の50%を越えるくらいが不況型倒産と言われるものである。売上が不足することは回収額が小さいことを意味する。即ち、運転資金が不足して、銀行から借金(短期借り入れ)をして賄うことになるが、昨今のように、銀行の自己資本比率が悪化すると銀行自体の存続問題となってしまう。経済活動の潤滑油の役割を担っている筈の銀行が、自らの首を締めることになることを知ってか知らずか、自らの自己資本維持のためにお金の流れに堰を造ってしまうのである。
銀行が貸付を拒否すれば、それを当てにして事業を営んでいる企業は、最悪の場合、手形が落とせず倒産となる。倒産までは行かなくても、自己の融通できる範囲内での取引を行なわざるを得なくなり企業活動は縮小してしまう。経済社会の資金の流通機構である筈の銀行が産業のネックとなってしまうのである。こうして経済活動全体が徐々に徐々に縮小に向かって行く。
このような金融の異常事態下であるから、本来であれば倒産しそうにない企業がある日突然倒産するという事態がいつ何処で起こってもおかしくないというのが現状の経済社会である。その被害を被らないためには、日頃から得意先の信用情報には目を光らして債権保全策を十分検討しておく必要がある。特に、裁判を起こして回収しなければならないというのも増えているので、日常の営業活動の中で常に下記のことを念頭においておく必要がある。
T. 売買契約書があればどういう処置が出来るか。
1. 手形の不渡りが発生したり、倒産と見做される事態になったとき、売買契約に基づきそれを理由として次のような手段が
可能となる。
@ 所有権留保特約条項(現金支払いが完了するまで所有権が留保される契約)に基づいて、商品の引き上げが出来る。
A 上記の場合において、商品が第三者に渡っていても、代金が未だ支払われていなかったときは第三者から直接
代金を回収することが可能。
B 期間の利益喪失約款に基づいて、支払日、支払い条件を即時解約して現金即時払いが要求できる。
C 契約違反を原因として、会社資産に仮差押え、仮処分等の法的な手続きができる。個人保証があるときは、同
じことが連帯保証人の個人資産に対して実行可能である。
D 他の法律に抵触する可能性が高いが、債権譲渡を受けることも可能。
E 滞留金について、年 30 % 〜 50 % 位の違約金がとれる。(実際はお金が無いので取れることは殆どないが、届け出債権として
申告することは可能である)。
U. 売買契約書がなければ、どうなるか。
1. 売買契約は、口頭でも契約は成立しているが、法的手段をとる場合には証拠がないために非常に弱い立場となる。
@ 締め日取引をしている場合、無条件に期間の利益を相手に与えていることになるため、他で不渡りを起こして
いても支払日を待つしかない。支払日に支払って貰えないことが確定しない限り、何ら法的な手段は取れない。
A 手形取引においても同様で、貰った手形の決済日に不渡りにならない限り何ら法的な手段は取れない。
B 法的な手段を取るためにはその理由となる「原因」が必要となるが、契約書がない場合、原因証書を作るのに
数日を要することが多く、その間に債務者の財産が四散し保全出来なくなる恐れがある。
V. 契約書や証拠書類として見做される可能性のあるもの。
契約書がない場合でも、長年、一貫して作られて来た書類は有効な証拠として採用されることがある。
@ 打合せ議事録などに相手のサインや印鑑を貰った書類(殆ど契約書並の効力がある)
A 請求書の控え
B 納品書の控え
C 受領書(相手方の受領印かサインがあること)
D 相手から来た通信文書
E 発注書
F 確定日付(公証人役場で貰う日付印)
G 証明できるものがある場合の「営業ノート」等の記録やメモ類