以久遠氏の Beauty,Business & Favorites   巻頭   VOL. 47 / 2002.10.15 毎月15日更新 since 1998.12.15

多言にて慎みなく云々するは去る  

 多言(たげん)とは、多弁、口数の多いこと、饒舌(じょうぜつ)ということである。饒舌とは概して「口が軽い」ということでもある。つまり、言わずもがな、のことを言うのが多言ということになる。わが国には「口は災いの元」という諺があるが、ポルトガルにも「多言は身を害す」という諺があるらしい。葉隠にも「人事(他人のこと)を言うは大いなる失なり」とある。喋り無さ過ぎも意思の疎通に支障を来たし困ったことであるが、古今東西、多言に良いことはないらしい。

 沢山ある多言に関わる諺の中に、「多言にて慎みなく云々(うんぬん)するは去る」という言葉がある。人間関係の機微含蓄をあらわすいい言葉である。「言い過ぎることはいけない。言う際にはその言葉の中に慎みが必要である。さもないと人はその人から去って行く」という意味である。

 「慎みなく云々する」という点が大事である。即ち、人間関係には双方に労わる気持ちと慕う感情がなければ、いい人間関係は出来あがらないし続かないのである。言い過ぎはお節介にもなる。葉隠に次のような言葉がある。

     "人に意見をして疵(きず:悪いところ)を直すと云うは大切の事、大慈悲、ご奉公の第一にて候。意見の仕様、大いに骨

     を折ることなり。人の上の善悪を見出すは安き事なり。それを意見するも安き事なり。大かたは、人の好かぬ

     云いにくき事を云うが 親切の様に思い、それを請(う)けねば力に及ばざる事と云うなり。何の益にも立たず。

     人に恥をかかせ、悪口すると同じ事なり。我が胸晴らしに云うまでなり。

      意見と云うは、先ずその人の請くるか請けぬかの気をよく見わけ、人魂になり、……云い様種々に工夫し、時

     節を考え、……云わずしても思い当たる様にか、……渇く時水呑む様に請け合わせ、疵直るが意見なり。殊の外

     仕にくきものなり。……然るに、恥を与えては何しに直り申すべきや。"

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