以久遠氏の Beauty,Business & Favorites     雑感とPROFILE    VOL. 50 / 2003.01.15

拉致問題

 2003年の新しい年が明けた途端、北朝鮮とイラクの問題は、毎日、鬼気迫る勢いで緊迫した場面を迎えている。世界はブッシュとフセインと金正日の三人に掻き回されている。日本もその渦中にあり、その片棒を担いでいるのが小泉さんである。どれも、沈没しそうな日本経済を救うものではなく、むしろ日本経済の息の根を止めるような重大な問題であるが、何故かマスコミも政府も、その点には全く触れようともしていない。

 と言うより、マスコミも政府も意図的に国民の目を経済問題から目をそらさせ、イラク問題と北朝鮮問題に向けさせようとしているようにさえ見える。特に、北朝鮮については拉致を認めさせ、拉致された5人を日本へ帰国させたところまではよかったが、北朝鮮が核開発の再開を発表したことによって国際情勢はアメリカのみならず全世界を巻き込んで複雑な様相を呈し始めて来た。

 恐らく、5人の一時帰還の拉致問題は、ひょっとしたらブッシュ側近がシナリオを書いたのかも知れない。そのシナリオに沿って何から何までアメリカのブッシュの承認を得ながら進めて来た小泉首相と外務省の官僚が、思わぬ流れに乗って「らしからぬ」独断で勝手に進めた可能性もある。

 何故なら、数十年もの間、「拉致はなかった」と北朝鮮の言い分を全面的に認めて来た自民党保守政権が、何一つ説明もせずに過去の政府発言を覆えし、一転して「拉致」を主張したことは実に不可解と言わざるを得ない。しかも、これまで数十年にわたって一切を黙して来た北朝鮮に、一体、どういう手を使って「拉致」を認めさせたのか?外務省が独自に交渉して成し得たのであれば、わが国の外交手腕も捨てたものではないが、そこら辺りに胡散臭さがあり非常な興味を覚える。

 金正日としては、5人を一時帰国させることによって小泉首相に恩を売り、その見返りとして食糧支援を期待していたのだろうが、5人が帰国しなくなったことによって、人質は戻らず食糧支援も得られないという状況に陥り、目論見が外れた形になっている。金正日にとっては最大の誤算だろう。普通であれば、金正日政権が転覆してもおかしくないような外交的失政である筈だが、北朝鮮のTV放送は揺るぎもしないし、元北朝鮮の工作員と名乗る亡命者達も一人としてそのような指摘をしないのも解せない。

 心情的には人道的な立場からの正当な政治折衝であったと思いたいが、こう考えて来ると、ひょっとしたらブッシュと金正日のデキレースではなかったのかと疑いたくなる。そうでなくても、ブッシュとしては拉致問題で北朝鮮と日本が揉めて呉れれば、ブッシュはイラクに専念出来るというメリットが生じる。もしそうであれば、小泉首相はまんまとブッシュの思惑に乗ってしまったことになる。

 最近のテレビ報道を見ていると、あれほどまでに声高に拉致問題を手柄のようにアナウンスしていた小泉首相が、最近は殆どコメントも述べず、むしろ「拉致」という言葉すら口にしなくなったのも、何か、裏があるように思えて来る。恐らく、そう感じている国民は私だけではあるまい。小泉さんとしては、小泉内閣の人気下落と小泉降ろしの政界不安の挽回策としてブッシュを利用して一芝居打った博打的パフォーマンスだったのだろう。

 ただ、裏の事情はともあれ、現実に5人が帰国し、今はまた、数十人の拉致疑惑問題が表面化しつつあることは喜ばしいことには違いない。まだまだ時間はかかるだろうと思うが、流れは確実に拉致問題の全容解明に向かっているように思える。


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