PROFILE & 時評・雑感   以久遠氏の Beauty,Business & Favorites    VOL. 52 / 2003.03.15

イラク戦争に拘るブッシュの真実?

 開戦に向けて、いよいよ、イラク問題が緊迫して来た。国際世論も国内世論もイラク戦争に反対であるにも拘らず、ブッシュの気違いじみた言動には呆れるばかりである。9.11テロにしても結局は犯人を特定出来ていないにも拘らず、何となくアメリカの一般国民はイスラム・タリバンの仕業だと信じさせられてしまった観があるが、ブッシュのアフガン・イラクへの異常なまでの執着にはどうしても隠された「裏」を感じざるを得ない。

 ブッシュが、国連の決定を無視してまでイラクを攻撃しなければならない理由とは何なのか?ブッシュがキリスト原理主義者であることが最近報じられ、キリスト原理主義とイスラム原理主義との宗教戦争という見方もあるようだが、その見方は穿(うが)ち過ぎるように思う。

 それにしても、ブッシュの拘り方は異常過ぎる。かって、米ソ冷戦時代におけるニクソンやケネディーの、キューバに対する異常なまでの執着心と似ているような気がする。

 米ソの冷戦状態もそうであったが、アメリカの言動を理解するには彼らの思想の根底に強烈に流れている帝国覇権主義を無視することは出来ない。アメリカの覇権主義から考えれば、超大国ソ連が消えた今、最も恐れているのは中国の超大国化であろう。

 中国の現在の高度成長が続けば、近い将来超大国に育つ可能性は大きい。今すぐにどうということはないが、超高度成長時代の最中にある中国はかっての日本のようなものである。アメリカの傘下に組み込まれた日本はアメリカにとって何の心配もなくなったが、共産社会主義国である中国が自由主義の資本主義国家になることは考えにくく、こうはいかない。

 このまま成り行きに任せておけば、将来、アメリカの覇権主義に「待った」をかけるのは広大な国土と12億人以上の国民を有する中国を除いてはあるまい。アメリカは恐らくそう考えている筈である。その中国が力を増していくために絶対的に必要なものはエネルギーである。ということは、アフガンやイラクが中国と手を結んだ場合、いかなアメリカでも中国と中東を力で抑えることは出来なくなる。そうなれば、超大国ソ連が経済によって呆気なく滅びたように、アメリカもいずれ弱体化し同じ轍(てつ)を踏まないとは言い切れない。

 となると、アメリカは自らの覇権を確立するためには、中国がアフガンやイラクと手を結ぶ可能性を排除することが必要である。そのためには、アフガンとイラクをアメリカの息のかかった国家に作り変えなければならないということになる。そうすればアメリカは石油や天然ガスなどの莫大なエネルギー資源を手に入れることが出来、エネルギー供給面から中国の発展を阻害しコントロールすることが可能となる。そうなれば、必然的にアメリカの覇権を未来永劫に維持出来ることになる、という訳である。

 ブッシュは、否、類稀なる天才集団であるブッシュの側近たちは「アメリカの100年(即ち今世紀)の覇権確立」という壮大な夢を見ているのではないか、という気がしている。彼らなら、このくらいのことを考えているとしてもおかしくない。そう考えると、21世紀の最初を担うアメリカ大統領という位置にあるブッシュの狂気じみた表情や姿に使命感みたいなものが漂っている理由が理解できる。とてつもなく壮大な帝国主義であるが、今もなお世界中で「9.11テロはブッシュの自作自演か?」と潜(ひそか)に語られていることが真実味を帯びて来る。

 ゴリ押しと言われようと何と言われようと、アフガンからイラクまでを強引に制圧するためには、ブッシュとしては国際世論と国内世論の支持を得るためのそれなりの衝撃的な事実が存在しなければならない。「9.11テロ」を思い返してみても、国防総省ビルに飛行機が突っ込むことがあり得ようか?常識的に見ても、国防にあれほど力を注いでいるアメリカらしからぬ事件である。アフガンであれだけの近代的な武器を披露して呉れ、しかも最もリスク管理の徹底している国にしては無防備過ぎるし、不思議なことに国防総省では死者も少ない。アメリカの最先端軍備をもってすれば、戦闘機に比べれば大して速くもない旅客機をビル突入の前に打ち落とすことぐらい分けない筈である。

 貿易センタービルにしても、ビルが全壊することまでは予期していなかったのではないか?旅客機がビルに突き刺さるだけではインパクトが弱いと判断して二機を突入させたのではないのか?そうでなければ事件の数日後に、十数人の犯人たちから首謀者まで、更に証拠品の類まで発表した手際の良さは、あの混乱の中で特定するには余りに短期日過ぎる。というのは、国内事件であることがバレてしまった炭疽菌バラマキ事件も、最初はイスラム過激派の犯行という発表だった。それらを考えると、「9.11テロ」についてもじっくり再検証する必要があろう。

 このようにアメリカが覇権主義を採る限り、必ずアメリカはイラク戦争を開始するということである。そして、イラクにアメリカの息のかかった政権が誕生すれば、恐らく、このような馬鹿馬鹿しい戦争はイラクで終わりになるだろうと思う。しかし、肝心のイラク戦争がいつまで続くかが問題である。

 こういう筋書きまで考慮しているのかどうかまでは分からないが、小泉首相や石破防衛庁長官にもブッシュの狂気が感染しているようである。イラク問題について確固たる政治的理念を有していない小泉首相と石破長官の迷走が激しくなって来た。発言も益々支離滅裂の様相を呈して来て、正しく付和雷同としか言いようがない有様で滅茶苦茶になって来ている。

 ある記者に、国連決議でイラク開戦を否定された時に「ブッシュと足並みを揃えるのか?」と質問され、小泉首相は「その時の雰囲気で決める」と答弁をした。「雰囲気」でアメリカが開始する戦争に参加するか否かを決めるというのだから、法治国家が聞いて呆れる。この一事を見ても、北朝鮮の金正日のことを、ああだこうだと批判する資格は小泉首相にはない。一国の総理たる者が「世論を聞いて政治をすれば誤まる」だとか「雰囲気で決める」といった乱暴な発言をするようでは国を滅ぼしかねない。

 小泉首相の発言を聞いていると、まるでヒットラーの再来である。偶に饒舌に喋ることがあるかと思うと、内容たるや、どうしても戦争がしたいブッシュと彼の幕僚たちとの板挟みにあってか、イラク問題と北朝鮮問題を交互に使い分けている。石破防衛庁長官に至っては、イラクをオームに比喩して「ほっといたために、サリン事件を起こされた。起こってからでは遅いだろう」とまるで恐怖政治のような論法で国民に迫っている。国家と一宗教団体を同一視するなど、論外である。このような詭弁を弄した言い回しは、更に段々とエスカレートするだろう。

 昔、国民に説明しようと努力はしているのだが「あ〜う〜」ばかりの首相や、「言語明瞭、意味不明」と評された首相がいたが、四文字熟語の小泉首相も似たようなもので、せめて五言絶句くらいの説明は欲しいものである。しかし、中国人は理解できるだろうが、日本人向けにはやはり「て・に・を・は」の付いた言葉で喋っていただきたい。ただでさえ法律に弱いのだから、分かり易い言葉で。さもないと国中が混乱し収拾つかなくなる恐れがある。

 わが国は、10年位前までは終戦記念日が近づくと、世界で唯一の原子爆弾被爆国として、日本が世界平和を推進する使命を担っているという趣旨の平和宣言を発して来た。それがいつの間にか広島市長と長崎市長のローカル宣言にすり替わり影を潜めつつある。これに反比例するように、今ではむしろ、軍備放棄の平和憲法を持っていることが国際社会から取り残される原因であるかのような妙な論理がまかり通り始めている。

 わが国の憲法は、「戦争のための武器は持たない」と宣言しているにも拘らず、日本の政権党は湾岸戦争やアフガン戦争を経る度に自衛隊の機能を済(な)し崩し的に実質的な軍隊へと変革を進めている気配が濃厚になって来ているのである。今回は更に、イラクと北朝鮮とに絡めて自衛隊の軍隊化を既成事実にしようとしているように見える。

 第二次大戦に負けて、アメリカに世界に類の無い素晴らしい「軍備放棄の平和憲法」を作って貰っていたお陰で、日本国民は戦争に狩り出されることもなく助かっているようなものである。そうでなければ、とっくの昔に徴兵制度が復活し、今回のブレアー首相のイギリスと同じになっているだろう。そういう意味では第二次大戦戦勝国のアメリカやイギリスに感謝しなければならない。彼らが作ったその憲法を彼らが改憲しろと言える筈がないのだから、この際、軍備を持たない国家としてそのことをむしろもっと強くアッピールし、如何にして世界平和へ貢献するかを目指すべきではないのか。今はむしろそのことを最大限に利用すべき時である。

 イラク問題については、本来であれば国連警察軍が国連の警察権として査察と監視を続けるべきものである。ブッシュの論理は資本主義自由経済の国であれば軍備は認めるが、そうでない国には軍備は認めない。「だから、放棄しろ」というように聞こえる。国家が憲法において軍隊を所有することを定めていること自体は国家主権の問題であり、それについて外国がとやかく言うことは主権の侵害である。

 イラク政権が社会主義であるべきか、資本主義であるべきかということについてはイラク国民が選択すべき国内問題である。外国が関与することは内政干渉の謗(そし)りを免れ得ないだろう。ただ、その国家が極めて危険な国家であると国連が認めた場合は、国連査察団あるいは国連警察軍を駐留させて監視することも必要となるかも知れない。フセインが国民から支持されていない独裁者であるなら、国民に自由な選択が出来るような国にすることが国連の使命となるべきである。


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