
先にも、勝負にならないほどに廉価な中国製品が世界市場をウィルス的な勢いで侵略し続けている現象についての恐怖を述べたが、最近、アメリカにおいても中国製のけたたましく安い製品の輸入がアメリカ国内の製造業に深刻なダメージをもたらしそうな状況で無視出来なくなりつつあり、経済問題化しそうな雲行きである。
中国は、現在、恐るべきばかりの高度成長を遂げている。この状況があと十年も続けば、必ず、中国は物品で世界を牛耳る大経済国家となることは容易に想像できる。価格競争力温存のために已む無く日本の企業や台湾の企業の多くが中国に進出しているために、それらの国では国内産業の空洞化がかなり進行している。韓国やフィリッピンやシンガポールやインドネシアなどの後進国への進出を積極的に進めて来たアメリカはまだ日本ほどには空洞化が深刻ではないようだが、昨今の中国製品のアメリカへの流入量は目を見張るものがあるようである。
共産主義国や社会主義国の台頭は、常に覇者であり続けなければならないアメリカにとって大問題であることは言を待たない筈であるので、アメリカが昨今の中国の産業経済状況を指をくわえて黙って見物している筈がないと思っていたら、案の定、である。中国「元」の平価切り上げ問題が燻(くすぶ)り始めた。ソ連邦が消滅した現在、アメリカの前に将来立ち塞がって来るのは共産主義国である中国であることを考えれば、大統領スタッフのネオコン(新保守主義者)たちの発想からすれば、十分、中国の産業経済を叩く可能性は大である。
現在、中国に進出している企業の多くは日本、台湾、朝鮮、ヨーロッパ諸国の自由主義経済圏の国々であって、しかも、依然として中国への進出意欲は満々である。アメリカ企業は自由主義経済圏へは積極的に進出しているが、共産主義圏や社会主義圏への進出は極めて消極的であり少ない。
この事実から見ても、アメリカが共産主義国や社会主義国への生産移動を歓迎したくないことは容易に想像できるが、ましてやそれらの国々の産業経済発展に力を貸そうとしていないことが分かる。むしろ、産業を発展させるくらいなら、金額は大きくなるが完成品である商品でもって支援することの方がメリットは大きいと考え、力を殺(そ)ぐことに意を注いでいるようにも見える。食料や燃料などのエネルギーを供給することによって自国の産業が育たないことを企図しているのではないかとさえ見える。SARS発生は案外、内心では喜んでいたかもしれない。
もし、将来、中国が巨大な経済国家となって、共産主義圏社会主義圏の国々に対しては安い商品を輸出し、産業が空洞化した自由主義資本主義圏に対する輸出に対しては輸出課徴金を課して来たら国内産業の基盤はガタガタになって目も当てられないことになる。また、イラクやアフガンなどの反米国家との結びつきを強めることだって無いとは言えない。むしろ、十分あり得ると見るべきである。ただ、中国の産業が大きく発展するには中国国内の電力設備や配送インフラなどの整備が必須となるので、現在の中国にはまだその恐れは少ないが、現在の高度成長がどこまで続くかによって十分その可能性はあるということである。
数年前、中国南部の内陸部の一部を視察して来た私個人としては、産業基盤のインフラ整備が大中国の巨大な領地の隅々まで果たして出来るのだろうかという疑問は今でも去らないが、奥地は兎も角、日本の国土の数倍はあろうと思われる海岸部だけでも大変な生産拠点となり得ることは間違いない。広大で安い土地と豊富過ぎる安い労働力に恵まれた中国は、将来、間違いなく自由主義経済圏にとって脅威となるだろう。
中国が、共産主義から資本主義へ体制変革がなされる可能性でもあれば良いが、恐らくそういうことはあるまい。自由主義経済圏の生産体制が国内から脱出して、自由主義圏も共産主義圏も社会主義圏も物品の供給を中国に頼らなければならない時代にならぬとも限らぬ。最近のアフガン、イラク、北朝鮮に対する異常なまでの敵対主義を見ていると、アメリカのネオナチズムの政治家たちはそれを恐れているのではないだろうか、という気がしてならない。
となれば、自由主義経済圏としては、同じ自由資本主義仲間であるインドを生産拠点として育成すべきであるという発想をするのではないだろうか。また、アメリカが自由主義経済圏の諸国に中国での生産活動を自粛するよう求めて来たらどうなるだろうか?ふっ、とそんな思いが脳裏を過ぎったが、アメリカが自由主義経済圏の利益の保護のために中国への進出を自粛させるためには強大な力を蓄えておかなければならない。それは、強大な経済力であり、強大な軍事力である。従って、アメリカの帝国主義は益々強大化することになるだろう。