以久遠氏の Beauty,Business & Favorites 文化人間学 VOL-05 / 1999.2.15号
最近、何かと自然が話題に上るようになったが、その所為か、紀行や民芸など地域文化や遺跡などを紹介するテレビやビデオが増え、手軽に地方に接したような気分に浸ることが出来るようになった。山手線の旅、名湯秘湯めぐり、百名山、遺跡発掘、自然界の不思議などなど……。
仕事の傍ら海外国内を問わず各地を訪れていると、四季折々、様々な地域文化に直に触れることが出来て楽しい。やはり、メディアだけでは紹介しきれない部分が沢山あり、行く先々で新しい発見がある。まるで、別世界に来たかように一変するのに驚かされることがある。街の佇まいが醸し出す雰囲気がそういう感じを抱かせるのか、各地でそういう経験を何度もして来た。
何が、そういう感じを抱かせてしまうのだろう?と常々、不思議に思っていたが、中国南部を旅しているとき、ハッとひらめいた。特に女性の足ばかり見ていた訳ではないが、その一つが女性のスカート姿である。
一昨年の冬、大中国の南部、桂林から広州を経て深川駅を通って香港への列車の旅をした。中国内陸部にある桂林は近代化が遅れていて、さながら日本の明治時代といったところである。海岸に向かうにつれ近代的な都市が増えてくる。広州の深川市は高層ビルが立ち並び超近代的な町である。
桂林では舗装された道路は僅かに都市の中心部だけで、それも質の悪いアスファルトのために穴ぼこだらけで、バスは右に左に揺れながら走る。一歩郊外へ出れば、車はもうもうと土煙を上げて走っている。 もちろん信号機もなければ横断歩道もない。その土埃の中を通勤のおびただしい自転車が往来している。
これではスカートも穿けないだろう。どの女性がスラックス姿で、皆同じような服装をしている。スカート姿の女性は非常に少ない。深川、香港と段々都会になるにつれて、スカートの女性が目に付くようになる。スカートが増えた分だけ街もカラフルになるような感じである。それだけ街がファッショナブルになるということだろう。
1997年4月から兵庫県の明石に単身赴任し住んでいるが、ここでも中国で感じたことと同じことを感じた。明石は日本標準子午線の街で知られているが、もともとは漁師町で、瀬戸内気候の雪が降ることも殆どない温暖な街である。文化の町というより労働の街である。この明石の街も、やはりスカートの女性が極めて少ない。スラックス姿ばかりである。
所得水準は神戸市より少し上であるから、経済力がない訳ではない。にもかかわらず、街中にはファッションの店や本屋そのものが少ない。大きな本屋さんは一軒しかない。朝の通勤時にはスカートの女性も見かけるが、彼女らは隣の神戸や大阪への勤め人で、明石の町で働いている人達ではない。
女性のスカート姿は、文化水準のバロメーターになるのではなかろうか。