
いつになったら景気が良くなるのだろうか?日本経済の迷走については、この数年、経済人ならず老若男女誰もが心配していることであるが、現実に経営の第一線に立つ者にとって将来を見通せるのはせいぜい3ヶ月先か6ヶ月先ぐらいなもので、とても経営と言えるようなものではない。その日暮らしのような経営の実態は、まさしく匍匐(ほふく)前進するような暗中模索の日々である。
日本経済の底力からすれば、将来的にはいずれ間違いなく必ず成長期を迎えると確信しているが、それがいつかとなると残念ながら全く不明であると言わざるを得ない。日本経済の将来を展望して企業の向かう先を定めて手綱を握るのが経営に携わる者の使命であるにもかかわらず、現実の経済環境は中東問題や国内の不良債権、それに加えてデフレの進行など山積する諸問題のために景気予測を難しくしている。
メディアや政府は大企業の利益が上向いて来たと盛んに喧伝しているが、その実態はリストラと正社員からパート社員への転換によって人件費コストを下げて利益を挙げているに過ぎない。利益が増えた分、その反対に弱い階層を増やしているだけで、社会的に見ればプラスが増えた分、マイナスも大きくなっているに過ぎず、社会全般が上向いている訳ではない。これは日々減少し続ける国民の貯蓄額に表われている。
貯蓄額の低下は購買力の低下をもたらし需要の先細りを示している。本来、需要の増大が経済発展の原動力であるエンジンに活力を与えるものであるが、需要の減退は逆にエンジンから活力を奪い失速させることを意味する。従って、このような環境の中では一年先を予測することは殆ど不可能に等しいと言える。となると、経営的に見て、今なすべき最も重要な施策は何であろうか?
デフレ対策としては出来るだけ過剰在庫を持たず現預金を蓄え、来るべき成長期に備えての強力な販売組織の構築であり、次世代商品の開発であり、不要不急のコストを一時的にしろ削減することである。しかし、これも、法人と個人という違いはあるが、やはり需要の減退そのものなのである。
大手の会社が手掛けるのは交際費のカットであるが、世の中にはカットしようにもカットのしようがないくらいの僅かな交際費しか使ってない企業も沢山ある。特に、中小企業は非課税交際費の枠が極めて小さく、税金面において大企業のような優遇策を受けていないので、中小企業には湯水の如く交際費を費消している企業は殆どない。また、日頃から無駄な経費支出については神経を尖らせているので削れる経費というものは極めて限定されてしまう。ということは、中小企業のコストダウンには自ずと限界があるということである。これが、安い中国製品の侵入に対して中小企業の経営を益々難しくしている。
従って、管理部門であれば光熱費や事務用品費の節約、広告宣伝費や厚生行事費のカットなどであり、営業であれば出張回数と出張人数や日数の低減であり、生産部門であれば残業規制というのが最もポピュラーな施策ということになる。しかも、これらの項目は取引先へ迷惑を掛けずに社内だけで対処出来るというメリットがある。このように書けば、一見、成る程という気持ちになるが、これこそが自らの首を真綿で締めているようなもので、じわいわと経済規模を縮小させる因となって、更に景気の回復を遅らせるという弊害をもたらすことになっているのである。
しかも、一般的に、中小企業の生産体制というのは工場の持つ能力を120%くらい稼動させることによって成り立つように設計されていることが多く、このような経済状況の中でも中小企業においては事業と黒字を維持するために一定の生産数量を確保することが必須となる。需要減退という限られた需要量の中で一定の数量を販売するためには競争相手よりも先に販売することが要求される。そうなれば、必然的に価格競争に陥ることになるが、こうしてデフレは益々スパイラル的に進行する。このように、デフレ不況というものは中小企業に対しては経費削減と生産維持というジレンマを強いることになる。