
年金改革
明日にも年金制度が崩壊するかのような勢いで、年金の議論が沸騰し始めて来た。政権維持に支障がありそうな問題は先送りしてぎりぎりまで放って置く自民党政治の長年の膿がカサブタを破って表面に出て来たようなものだが、年金問題の答弁を聞いていると本筋から逸れた話ばかりで、ある意味では「恐怖政治」のような手法で正当化しようとする無責任さだけしか伝わって来ない。
話題となっている争点は、年金の支給額、支給開始年齢、年金掛け金の負担率ばかりである。肝心の年金原資をどうやって捻出するかという点に論点が集約しないように逃げの姿勢だけが目に付く。道路公団同様、年金原資も既に破綻してしまっているのではないか?保険料負担率のアップや年金額の引き下げを問う前に、年金財政の現況を公開するのが先であろう。
その上で、国民年金、厚生年金、共済組合、議員年金等の制度面の均一化と一元化が議論されなければならない。その中でも特に議員年金が制度的に一番問題がある。厚生年金や国民年金は25年の加入期間がないと受給資格は発生しないが、議員年金の受給資格は国会議員で10年、県会や市会などの議員の場合は12年という短い期間で受給資格が得られ、しかもその年金の半分前後は税金で賄われている。
さらに悪いことは、加入期間も年金額も税金補助額も、全てが議員立法で改正できるというお手盛り制度となっているところである。議員がどれくらいいるか見直してみよう。村会議員、町会議員、市会議員、県会議員、道議会議員、府会議員、区会議員、都議会議員、衆議院議員、参議院議員と、全国的に見れば物凄い議員数である。
しかも、10年か12年、即ち三期か四期、議員を勤めれば高額な議員年金(国会議員で年間450万以上)が貰えるのである。それも厚生年金や国民年金とは別に、それぞれの年金が重複して支給されるというまるで税金泥棒のような制度である。しかも、昔に比べれば平均寿命も大幅に伸びており、全国的に見れば驚くほどの議員OBが年金を貰っていることになる。この議員年金に注ぎ込まれる税金の額は膨大な筈である。更に、国会議員に至っては、政党助成金が議員一人当たり1億円くらい支給される。企業献金廃止を廃止する代わりに政党助成金を出すという建前であったものが、企業からは献金を貰い、更に税金からは政党助成金を手に入れるという詐欺のようなことがまかり通っているのである。
これらの税金の無駄使いにはメスを入れないで、年金財源が破綻していると言う議員や官僚の無責任発言には呆れるばかりである。先ず、これらの現実を俎上に挙げて明らかにして年金原資問題を考えるべきで、異論は多いが議員定数の削減も俎上に上げて検討する事態に来ているように思う。更に、20年来唱え続けられている行政コストの削減も抜きにしては考えられないだろう。
また、年金問題の討論の中で語られている明らかな詭弁を誰も指摘せず、詭弁が堂々とまかり通っているのは遺憾である。竹村健一までも喋っていたのには驚いた。と言うのは、「『年金保険料20%を負担し、年金給付は50%』というのは『2.5倍』の給付である」という真しやかな屁理屈である。負担率と給付率だけを見れば一見そう見えるが、これは大いなる詐欺的詭弁である。騙されてはいけない。保険料を負担した期間と払い込んだ年金保険料の総額、年金の受給期間と受給総額に分けて論議されなければならない。
例えば、22歳で就職し、62歳でリタイヤし、65歳から年金を受給して77歳で死亡したと仮定しよう。総期間の平均賃金が30万(X)と仮定すれば、個人が負担した額は「30万(X)×0.2×12ヶ月×40年=2880万」となる。一方、受給額は「30万(X)×0.5×12ヶ月×22年=3960万」となり、掛け金ベースで見ると、「1.375倍」でしかない。77歳よりも早く死ねばその差は更に小さくなる訳である。
これは、年金に掛けるよりも自分で運用した方が得という論理が成り立つ可能性が高いことを示している。何故なら、将来に亘って現在のようなデフレ状況が延々と続くとは思われないし、むしろ近い将来的には経済政策はインフレに振れる可能性の方が大きいし、そうなれば当然名目経済成長率は高くなり金利が上昇することになるからである。
となれば、年金保険料の払込総額よりも年金受給総額の方が少なくなる恐れが大ということになり、計算高い若者は益々年金離れを起こし、年金加入者が減って年金問題はいつまでも解決できないということになる。
今度の総選挙では、どこが勝ちどこが負けたのか分かり難いが、負けたのが憲法改正反対、即ちイラク派兵反対の護憲政党が負けたことだけは間違いない。自民党も民主党も改憲、即ちイラク派兵を肯定している点では大差は無く、明確に反対しているのは社民党と日本共産党だけであった。社民党と日本共産党は小選挙区制という選挙制度によって負けたとも言えるが、憲法第九条の改正が国民に将来どのような負担を強いることになるかについて、もっと強力に訴えるべきであったろうと思う。
短い選挙運動期間だけでは大したロビー活動も出来ない。それだけに、低い投票率を持ち上げるだけのパワーが出なかったのが大きな原因であろう。私は特に支持政党はないが、良識派の政党が消滅しそうな状況にあることは日本の将来から見ても大きな問題であるし寂しい。社民党には日常の政治活動の中で積極的にロビー活動を行なって頑張ってもらいたい。小選挙区制度の中では投票率は上がらないだろうし、中選挙区制度を復活して小政党が活動できる基盤を整えなければ日本の政治は良くはならないだろうと思っているが、選挙制度のことについては何かの機会に触れることになるだろう。ここではイラクへの自衛隊派遣問題について述べたい。
今月24日の朝日新聞の一面トップに、日本が「武器生産と武器輸出」に乗り出すことが報じられていたが、これは、イラク派兵といい武器輸出といい、アメリカの双子の赤字の元凶となっている分野についてまで日本が肩代わりをしようとしていることを示すものである。何の再生産も無い軍需産業が健全な経済を毒することは明らかであるのに、小泉政権は、何故に今更「死の商人」を作ろうとしているのだろうか?
過去において、「死の商人」たちが日本をどこに導いて行ったか、第一次大戦や第二次大戦で十分学習したのではなかったのか?小泉自民党や民主党が好戦党であることを考えると、わが国の政治体制は危険な二大政党制へと急傾斜しつつあるように思われる。極めて危険な動きであると言わざるを得ない。前号でこのまま改憲へと進んで行けば、いずれわが国にも「徴兵制度」が復活することになるだろうと述べたが、小泉首相や石破防衛庁長官の、まるでブッシュと心中でもしそうな言動を見聞していると益々その懸念が強くなる。
ブッシュは、9・11ニューヨーク貿易センタービル事件の首謀者も明らかにせず、イラクの大量破壊兵器も発見できず、アフガン戦争にしてもイラク戦争にしても、ブッシュが唱えるビン・ラディンもフセインも依然として生死不明のままであるのに、勝手に戦争終結を宣言したことがイラク国民に受け入れられていないことは日々のテロ活動を見ても火を見るより明らかである。
この問題は世界中の国で大問題化しているが、わが国においては報道規制でも掛かっているのか、殆ど報道されない。自由な国である筈なのに、一体、日本はどうなっているのだろうか?新聞も、テレビも、論説委員も、誰も触れようともしないのは何故だ?
しかも、ブッシュは22日に平然と「イラクのテロは沈静化しつつある」と発言した。ヨーロッパ諸国や中国ロシアが派兵拒否の姿勢を示している中では、その発言が日本に向けられたものであることは明らかである。毎日死傷者が発生している烈しいテロ活動と、「日本の自衛隊がイラクに到着した日に東京の中心部においてテロが行なわれるであろう」というアルカイダの警告によって逡巡している小泉首相に「早く自衛隊を出せ」と命令しているのである。「嘘つきブッシュ」の面目躍如である。
現憲法の下では自衛隊の海外派遣が憲法違反であることは言をまたない。憲法違反のまま自衛隊を派遣し、万が一、自衛隊員が戦死したらどうなるだろうか?被害者の家族が小泉首相と石破防衛庁長官と小泉内閣の面々に対して行政訴訟や民事訴訟を起こしたら、内閣側の弁護士は何を根拠に何を弁護するのだろうか?そして、裁判所はどのような判決を下すのだろうか?現時点では憲法遵守は国民の義務である。そういう意味で、独裁政治化しつつある現状に歯止めを掛けるための最後の砦となるだろう。