スターレスアンドバイブルブラック 和訳へ
英詞他情報
「グレート・デシーバー」
いかさま師かと思えば神、ダイナミックな対比、リリカルな美かと思えばぐいぐい骨太の言葉で押してくる、R.P.ジェームスの真骨頂。曲調も詞と一体となって、激しさと優美さを対比させる作り。
訳すには難関が最初から立ちはだかった。Health-food faggot with a bartered bride。中川五郎訳では「売られた花嫁と暮らす健康食品狂いのホモ」となっているが、本当の所は何を意味するのか雲を掴むよう、極めてわかりにくかった。
faggotはホモと訳せなくもないが、一般的には薪とか棒の束、山積みのかたまりの束。フリップの弁では肉団子だ(ホモ説はこじつけ)とのこと。
新婚生活には健食が必要なのかななんて回り道して考えたが、最後にはこれを詐欺師の小道具として捉えて、「えせ健康食品の山に替え玉の花嫁添える」に決めた。
中川訳との違いについてさらに言うと、dipper rideのrideは中空に掛かるの意味。gin-shop slagのslagはゴミじゃなく淫売女、次に出てくるsheはこれを差す。A golden smile and a propositionのpropositionは通常は「提案」だが、ここで「仕事」と訳すってのはちょっとなぁ、A golden smileで「誘いかける」と訳すのが自然だ。中川訳は基本的にはセンスがいいのだが、却って分かりにくく訳している箇所があるのも確か。しかし見事な言葉使いはdrop a glass full of antique sherryを「なみなみつがれたグラスを落とす」なんて訳す所。鮮やか。ここらは殆どそのまま頂き。
尚、グレートデシーバーの詞はR.P.ジェームスとR.フリップの共作。エレファントトークのFAQ(肉団子−ホモの話もあり)でも言及あり。フリップの作詞したというリフの部分は、バチカンの商業化を揶揄しているらしいが、私としてはシガレット、アイスクリームが嗜好品、ひいては世俗を、一方マリアの小像が聖を表すという対比であると思う。そういった解釈で、歌版のページに「歌えるグレートデシーヴァー」も訳しているが、これは苦心して音韻にこだわった詞。

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「ラメント」
内容はミュージシャンの嘆きなのに、初版の国内版LPでは邦題が「人々の嘆き」となっていた。何ていい加減なことやっているんだ。レンブラントの名画「夜警」を歌ったナイトウォッチを「夜を支配する人々」、ウイルレッチュウノウが「秘め事」ってのはまだしも、ミンサーはちょこちょこと忍び来るものの意味なのに「詭弁家」にした意図は何なんだ。「リスナーの嘆き」である。
さて、詞で分かりにくい箇所は、電話の男に感謝して、30パーセントだ、35パーセントだって言うくだり。手がかりとすべき中川訳もちんぷんかんぷんで困ったが、なんとか自分なりに筋路をみつけたつもり。
単に「時間があるなら」と訳すから分からなくなる、「問題に費やす時間があるなら」と訳す、つまりthe time to spendで切れるのではなく、spend the problemなのだとまずは気づいた。表記上で詞の行が変わるからって意味が分断される訳じゃないってこと。次に、複数行に渡っていてもand indicateはI'll explain同様I'll indicate、つまりIの述語だと分かった。「私が説明し、示す問題」なのだ。中川訳ではindicateの部分を、文章がいったん途切れて次に移り「いくらならいいのか金額を指し示そう」って電話の相手に金を渡すかのように訳しているから意味不明になる。
indicate a sum to lendは単純に訳すと、「貸し出し総額を示す」だが、これは消耗しきったミュージシャンの与えつづけ、持ち出しっぱなしって意味だろう。それが資産の35%にのぼるという意味。持ち出しの多さに呆れて親爺は卒倒するって、話の筋もつながる。中川訳では親父が発作もちだったてのが何を意図しているのか分からない。

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「ナイト・ウォッチ」
闇のなかの無名の夜警、栄光は絵画として残り続ける、またしても光と陰、瞬間と永遠のコントラスト。明暗の対比はレンブラントの絵の特色でもある。絵を思い浮かべながら訳した。 レンブラントの「夜警」に関連する話はエレファント・トーク・FAQで。

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「ミンサー」
R.P.ジェームスの名もクレジットされ、歌詞も明らかに歌われているのに、何故かインスト曲扱いされて詞は無視されている曲。誰の判断なのか?確かに意味不明のちょっとした短い詞ではあるけど、敢えて訳に加えた。

「スターレス・アンド・バイブル・ブラック」&「フラクチャー」
このサイトでは「暗黒の世界」という従来のアルバムタイトルを使うのはやめている。
スターレス・アンド・バイブルブラックという句は英国の詩人、ディラン・トマスの戯曲「ミルクの森で(Under Milkwood)」中の句が出典。そんなこと知らなくてもクリムゾンの世界の理解にはなんら支障ないのだけれど、一応、ジャケットのクレジットの最後にも"Acknowlegement to D.T.(D.T.へ感謝)"とあるのに言及しておく。また、"RED"中の曲、「スターレス」のタイトルと詞も同じフレーズから発想されているのはいうまでもない。
フラクチャーの語については、2,000年作の"TCOL"中の「フラクチャード(突破した)」のタイトルへと引き継がれていく事になる。

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Back    Next Last Update 00.10.1 by K.T.