「ビコ」
77年9月
ポートエリザベス 晴れ
警察の619号室では
相も変わらぬ尋問だった
ああビコ ビコ だからこそだ ビコ
ああビコ ビコ だからこそだ ビコ
Yihla Moja, Yihla Moja
−その人は死んだから
夜眠ろうとしても
見る夢はいつも血の赤
外は白と黒の対立の世界
その一つの色が死んだ
ああビコ ビコ だからこそだ ビコ
ああビコ ビコ だからこそだ ビコ
Yihla Moja, Yihla Moja
−その人は死んだから
蝋燭は吹き消せても
火事を吹き消すことは出来ない
一旦燃え上がった炎は
風もそれを煽りたてる高く
ああビコ ビコ だからこそだ ビコ
ああビコ ビコ だからこそだ ビコ
Yihla Moja, Yihla Moja
−その人は死んだから
そして世界中の目が
君を注目している 注目している
46664コンサートでN.マンデラの前、Y.ンドゥールと一緒にこの曲を歌うガブリエルは本当に感動的だった。この曲はそういう歌なのだ。
難しい単語はない。従来訳がトンチンカンでもない。しかし、私はこの曲を訳し、少しでも多くの人にガブリエルのメッセージを伝えたく、「ビコ」を訳した。
簡単な詞である。私の訳も従来訳と字面上は大差ないようにみえるかもしれない。しかし、ニュアンスが違うつもり。違いが分かるように、くどいけれど敢えて言葉を足してベタに訳してみた。
まず、Because Bikoの部分をどうとるか。従来訳のように「なぜならビコは」とか、「それ故にビコは」ではない筈。私の考えではビコの死故に僕らも行動しなければならないという呼びかけが続く筈。この曲は行動を促す曲なのだ。Yihla
Mojaは遺志を継げという意味らしい。「だからこそだ」と区切ってビコの名にはかけないようにした。そして、「その人は死んだから」と「から」を足した。
最後のwatching nowの目的語は何か。何を見ているのか。ビコの死を見ているのでもなく、炎の推移を眺めているのでもなく、それは遺志を継ぐべき僕らが見られているという事。私の考えでは、行動を起こすかどうか僕らが注目されているということ。そこで蛇足でも「君を」と語を足してみた。
他にも血の赤とか、白と黒の対立とか、言わずもがななのだけどしつこく訳した。(尚、one
colorとは黒の象徴であったビコその人の事) それもこれも正確に伝えたいがため。05.5.5
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「ソールズベリー・ヒル」
ソールズベリーヒルに登ると
街の灯りが見えた
風は吹き、時は止まり
夜の闇からは鷲が飛び立った なにやら近づく男がいた
僕はその声を聴いた
立ちすくみ、神経を張りつめ
僕は否が応でも聴かなければならなかった
知識なんて信じなかった
自分の想像力だけが頼りだった
僕の心臓はドクンドクンドクン
男は言った、坊主、荷物をまとめな
古巣に連れ戻してやるぜ
黙って言うとおりに従った
酔狂な奴だと思われるだろうが
水をワインにかえている
開いた扉も閉じる時は来る
その場しのぎて生きてきて
僕の暮らしは十年一日だった
何を言うべきか、どの関係を断つべきか
僕が考え始めるまでは
舞台装置の一部みたいに感じて
僕は組織から逃れてきた所だった
僕の心臓はドクンドクンドクン
男は言った、坊主、荷物をまとめな
古巣に連れ戻してやるぜ
古巣にね
幻影が網を張り巡らしているなかでは
僕は自分の望む場所にはいられやしない
自分が解放されていると思える時に
自由はピルエットを踊るのだ
虚ろな影に見つめられてきた
目を閉じても見続けるような連中だ
礼儀を知ない奴らだ
よし、別の自分を見せようじゃないか
今更代役は立てられない
僕の笑顔が何を意味してたのかを見せてやろう
僕の心臓はドクンドクンドクン
さあ 荷物を預かってくれ
奴らは僕を古巣へ連れ戻したのさ
P.ガブリエル作品。クリムゾンとはフリップが彼のソロ開始時期の作品に全面的に協力していた事、T.レビンがクリムゾンとP.ガブリエルバンドを掛け持ちしていた事など因縁が深い。この辺の裏話はここで。
尚、ライブでは詞は所々変えて歌われているが、それにしても、日本版のライナーノーツに昔から記載している歌詞は明らかに間違いだと思われる。それが一向に改まらない。それを元に訳そうとしても意味は通じやしない。そこでolga.netの歌詞を参照した。
この曲はショウビジネスの世界(古巣)へ舞い戻ろうと彼が決意した時期の、ソロ1作目からのもの。その辺のニュアンスは日本版のライナーノーツ訳からは読みとれないだろう。
「ヒヤ・カムズ・ザ・フラッド」ソロ2作目(通称・スクラッチ)収録の、フリップのソロアルバム「エクスポージャ」にも収録の、「洪水」も訳しています。エクスポージャのページのここで是非読んで下さい。04.9.13
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「サン・ジャシント」
厚い雲 立ち昇る蒸気 焼け石のたてる音 湿気ったテント内の焚火の
僕のまわり バッファロー皮の服 束ねたセージ 肌をこするための
外には 冷気 立って日の出を待ち構え
赤の化粧 鷲の羽根 コヨーテの声 始まろうとしている
何かがうごめく 舌と心とで吟味してみる
それは死に絶えようとしているかのよう ゆっくり 命を終えようとしている
呪術師が僕を街へと上らせる インディアンの大地は 遙か下方彼方
土地を区切った おのおのの家屋 プール 浮き輪で遊ぶ子供に 冷たい飲み物
干上がった河床を行くと 男子やら女子やら団員がインディアン風の歌をうたって
亡きジェロニモ風ディスコ 牛ステーキ屋に腰掛け 白人達は夢うつつ
老人の袋の中のがらがら蛇が告げる 山の頂きを見るのだ 登り続けろ
道の彼方上荒れ野の雪 白く吹きすさぶ
僕は道を踏み外さない 怖れを克服する強さの道
聖ジャシント 道を踏み外さない
聖ジャシント 毒蛇が咬みつき闇が視界を奪っても この道を踏み外さない
膨らませた頬に伝わる涙 意気地もなくなり 弱気になっても
僕はこの道を踏み外さない この道を踏み外さない
聖ジャシント 黄色い鷲が太陽から僕に舞い降りる それは太陽から
僕らは歩む この大地
僕らは息する この大気
僕らは飲む このせせらぎ
僕らは生きる 道を踏み外さない
いかにもPGらしく勇気づける歌。PGW、通称セキュリティ収録曲。PGは民族音楽の要素を取り入れるにとどまらず、民俗的スピリチュアルな要素にも関心を寄せ、詞のなかに鷲をはじめ様々なインディアンのシンボルを配置する。
詞は主人公の身の回りから始まり、白人の文化との対照、改めて民族のルーツを意識的に歩む3段階を描く。対比される表層的な西部風俗の白人達、water wingsとはクリムゾンのインドアゲームスの詞にも出てくるが、輪ではなく羽根型の浮き具だけど、まさか詞のなかで説明してられないので浮き輪とした。ビフテキ屋は滅び行くバッファロー=インディアンを示す。過酷であろうと、主人公はインディアンとしての自覚を持つ。Hold the lineのlineとは、実際の山道であり、インディアンの規範であり、与えられた運命でもある。Holdはそれを辿る、守る、がっちりつかみ支える、従容として従うニュアンス。
鷲が来てからは主語がweになる所をきっちり訳したい。05.10.31
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「ショック・ザ・モンキー」 NEW!
小猿の生存への脅威
小猿の生存への脅威
僕が駆け出すとき護ってくれ
火を抜けるときに護ってくれ
何者かが僕を樹々から叩き出した
もはや屈服するから
お願いだから 護ってくれ
小猿を 小猿を
君らは小猿の脅威になっている自覚がないのかい
狐は化かせ 鼠は捕らえろ
似猿をまねるのもいい それは解かっている
君らにも解かっていなきゃいけないことがある
もう我慢できないよ
ねえ小猿とじゃれ合いたくはないのかい
小猿と 小猿と
君らは小猿の脅威になっている自覚がないのかい
車輪は回り続けて
何かが燃え続けて
嫌な事だけど僕は学びつつあるのだ
これは脅威 脅威
小猿が傷ついているのを見てくれ 小猿が
僕が眠りにつくとき護ってくれ
息をするときに護ってくれ
君らは豚に真珠を投げつけるようにして
小猿を無能にしている
お願いだから 護ってくれ
小猿を 小猿を
君らは小猿に脅威となっている自覚がないのかい
小猿への脅威
のるかそるかの賭けだ
僕の下の大地が揺れて
そしてニュースとなり広まる
これは脅威 脅威
小猿が傷ついているのを見てくれ 小猿が
小猿への脅威
小猿への脅威
小猿の生存への脅威
小猿の生存への脅威
PGWからシングルカットされ、そこそこ流行った曲。なのに、ライナーの対訳は意味不明で、「モンキーを心底おどかしてやれ」ではチンプンカンプン。そんな訳しか存在しないままでは良いと思えない。
(詞として秀作かどうかは別として)せめて説明つくものを、ガブリエルの意図が伝わるものを私は世に示したかった。08.01.13
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「カム・トーク・トゥ・ミー」
不毛の砂漠が現れる ジャッカルは気高く身構える
僕は君を求め自らの行く手を感じ 緩慢なうねりの夜を抜け
恐怖が何を呼ぼうと まやかしだと言い切って
国境の柵のあいだから手をさしのべる
来いよ 二人話そうじゃないか
渦巻き荒れる嵐の願いにも 噤んだ言葉は固く
蜥蜴の重い舌 稲妻走る不朽の塔
闇が盗人のように忍び寄り 警戒を解かせない
なぜ君は木の葉のようにふるえるんだい
来いよ 来てはなそうじゃないか
どうか声をかけてくれ
頼む 話してくれよ
惨めさを抜け出せるんだぜ
来いよ 来て話そうじゃないか
僕は奪いに来たわけじゃない
全てを疑ってもかまわないから
君が今何を感じているのか教えてくれないか
来いよ 来て話そうじゃないか
話そうじゃないか
大地の力は未完の眠たい朝露から 暗いミルクを吸いあげる
乳首の肌から絹のようになめらかに ラッパが斉奏される
君は目を半ば閉じてうずくまる 誰も他にいないかのように
顔にはまだ張りつめた緊張
来いよ 二人話そうじゃないか
どうか声をかけてくれ
話をしさえすれば
惨めさから抜け出せる
話するだけでいい
どうして気持ちを変えようとしないんだ
君の未来はこの場で限られてしまう
そうやって目や耳を閉ざすのなら
来いよ 来て話そうじゃないか
話そうじゃないか
僕はその瞬間を想像できる
沈黙をうち破って現れる
互いに言うべき全てのこと
拒むことなき心
ともに痛みを分かち合えるまでに
あらゆる障害は消し飛ぶのだ
どうか声をかけてくれ
頼む 話に来てくれよ
まるで昔みたいに
来いよ 二人話そうじゃないか
僕は奪いに来たわけじゃない
全てを疑ってもかまわないから
君が今何を感じているのか教えてくれないか
来いよ 来て話そうじゃないか
話そうじゃないか
どうか声をかけてくれ
話をしさえすれば
惨めさから抜け出せる
話するだけでいい
どうして気持ちを変えようとしないんだ
君の未来はこの場で限られてしまう
そうやって目や耳を閉ざすのなら
来いよ 来て話そうじゃないか
話そうじゃないか
92年作「US」の冒頭曲。これは真に訳すべき歌詞、広めるべき歌詞である。
シルビアン&フリップの「ファーストデイ」では深い理解に立って丁寧な仕事を見せた斉藤真紀子訳も、USのライナー対訳ではいまいち雑。
例えば、私の方が正しいとは思うが、目や耳を閉ざすなら君の可能性は限定されるの意味と思われる箇所を、未来が決まったというのに見聞きしないという意味にしていたり。
また、噤んだ重い舌の描写のあたり、沈黙が破られる瞬間のくだり、これらもライナー訳は私の訳と較べて頂ければわかるが、取り方がかなり違う。
また、同じくUS収録の「シークレット・ワールド」の歌える訳がこのページにある。
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