デビッド・ボウイ    Last Update 2007.2.25 by K.T.
「ヒーローズ」

僕は王にもなれるだろう
そして、君
君は女王になれるだろう
だれも奴らを倒せやしない
だが、僕らは勝利できる
1日だけ
英雄になれるだろう
1日だけなら

そして、君
君は下劣になれる
そして、僕
僕は酒びたりにもなれる
なぜなら僕らは
恋人同士
そう、恋人同士
これは確かに事実

だれも二人を一緒にさせやしない
だが、僕らは時間を掠めとって
1日だけ
僕らは英雄になれたはず
永遠の絶対の
(君もどうだい)

僕は君が泳げたらと想像する
イルカのように
まるでイルカが泳ぐように
だれも二人を一緒にさせやしない
だが、僕らなら勝利できる
永遠の絶対の
英雄になれる
1日だけなら

僕は王になる
そして、君
君は女王になる
だれも奴らを倒せやしない
だが、僕らなら英雄になる
1日だけ
僕らは僕らでいられる
1日だけ

壁の前に立ち
想い出している
頭上では銃が放たれたが
僕らはキスしあう
何ものも崩壊はしなかったのだが
恥辱とは遠く離れて
そう、僕らなら勝利できる
永遠に絶対に
その時、英雄になる
1日だけ

英雄になる 
英雄になる
英雄になる
1日だけ
英雄になる

僕らは誰でもありはしないし
誰も僕らを助けまい
全てはただ夢想なのだろう
ならば君もとどまるべきではないのだろう
だが、僕らはずっともっと安全でいられた筈
そう1日だけ、1日だけならば

00年5月ナッシュビルからミレニアムツアーを開始した新生クリムゾン、アンコールの最後にいつも演奏したのが、このボウイ&イーノの「ヒーローズ」だった。なつかしい。
フィリップが77年の録音時にもギターで参加した因縁の曲。壁に囲まれた当時のベルリンでの録音という点がポイントなのだが、日本版ライナーノーツの訳ではあまり意識されてないようで、敢えて意訳気味に訳してみた。
当初、shot about(above?) our headsの箇所を銃が頭を打ち抜いた、we're lyingを僕らは倒れ横たわっていると捉えていたが、撃たれずに生きて、現在は空想しているというのが正解のようだ。
しかし、lyingが「嘘をつく」と「横たわる」のダブルミーニングである可能性もまだ捨てがたい。
このへんの事情はtomo助さんの「こっそり訳詞集」ヒーローズのページでどうぞ。ボウイの他の曲も丁寧に訳されています。

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ブラックアウト
君は
君は歩み行く
唇が表情に笑みを刻みつける
そのひきつった顔で
鳥籠を
彼女は籠の中の美女
あまりにも
あまりにも高くつく
その手で
そのおぞましい手で注ぐ
この腐れワインを飲むには
俺を医者に行かせてくれ
聞いたんだ 誰かさんが
この街に戻って来るって
勝負はおしまいだ
手札を切ったらブラックアウト
俺は日本カブレだけど
これじゃ武士の名折れ
天候はどんより冷たく
籠の中に氷塊
この俺は駒鳥状態
紙巻の煙をふかすだけ
豹達は
興奮状態で
狂ったように闊歩している
吼えている

もし君が今夜居てくれないのなら
俺は今夜にも飛行機でずらかろう
今更失うものはないし
得るものも何もない
この雨に濡れ君に別れのキスをしよう
この雨に濡れキスしよう
雨に濡れキスしよう
雨に濡れ
俺を医者に行かせてくれ

この街から抜け出させてくれ
自分の足で立たせてくれ
熱気が俺をブラックアウトへ落とし入れる
この街から抜け出させてくれ
我が身を護らせてくれ
くそっ 自分の足で立たせてくれ
この街が閉鎖されている限り
皮下でブラックアウトすれすれ
自分の足で立たせてくれ 

やはりアルバム「ヒーローズ」収録で、フリップのギターがフィーチャーされている。
詞は明らかにベルリンを舞台にしたもの。(NYの大停電じゃないようだ)
鳥籠は西ベルリンを指す。街が閉鎖されているというのは壁で囲まれていることを言っている。籠の女はベルリンの象徴。女=街と手を切りたいと言う情景ではあるが、事実ベルリンの暮らしは重苦しく高くつくし、この頃ボウイは麻薬と手を切ろうとあがいていたのである。氷塊=アイスはコカインの結晶。駒鳥状態=ロビン・フッドはヘロインの粉。当然煙もその手のものか?皮下も皮下注射を暗示している可能性あり。cageを檻ではなく籠と訳したのは駒鳥の語とのかねあい。
公式に歌詞とされている以外に、「我が身を護らせてくれ」という叫びが合間に繰り返される。末尾につぶやき声も聞こえるが、ここでは公式の歌詞のみで訳出する。
尚、訳するにあたって、ともすけさんのこっそり訳詞集のBlackoutを参考にさせ頂いている。そっちも是非見て頂きたい。07.2.25

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「アップ・ザ・ヒル・バックワーズ」
自由を得ても 空しくなるだけ
可能性はあっても 売りに出されたらしい
一人がそれを掌握し
君らの関知せぬこととなる
一人がそれを制御し
君らの関知せぬこととなる

震撼の連続 臆病者は破滅し
大地の回転 証言者は転落する
一人がそれを掌握し
君らの関知せぬこととなる
一人がそれを制御し
君らの関知せぬこととなる
そうそうそうそーう後ろへ向かいよじ登る
こいつは順調ちょーおおお

僕らの眠る時 奴らが動き出す
僕らは法的にも無力 愛情の絶える時
一人がそれを掌握し
君らの関知せぬこととなる
一人がそれを制御し
君らにゃ無関係なこととなる

過大な崇拝物 この現実に対し
自分が良ければ 他人は適当
一人がそれを掌握し
君らの関知せぬこととなる
一人がそれを制御し
君らにゃ無関係なこととなる
そうそうそうそーう後ろへ向かいよじ登る
こいつは順調ちょーおおお

是非「スケアリー・モンスターズ」の詞も参照して欲しい。ボウイが日本語の詞を用意しているため、「スケアリー・モンスターズ」については内容の誤解はないだろう。「アップ・ザ・ヒル・バックワーズ」もそんな歌に続け歌われ、本来私の訳のように社会派の辛口の歌の筈。それがボウイの本質。
しかし、ライナー訳ではおちゃらけた訳になっていて、どうも誤解を広めているようだ。
アルバムにはR.フリップが全面参加。この曲でも、エンディング部分で彼特有のディストーションギターが聴ける。
また、ボウイの訳詞集「スピード・オブ・ライフ」が出版されているが、これは素晴らしい。この本はおすすめ。
但し、その本のなかでは「分かったところで君には関係ない事」ってニュアンスになっている部分だが、私は「 一人が支配しても 君は知らない」って意味に具体的に訳した。どっちにもとれるかもしれないが、どうせならKTオリジナルの解釈で提示しておこう。

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「スロー・バーン」 
このひどい街で生きろというのか
心の価値も拳のように固く握りつぶされる街
壁には監視の目
扉には聞き耳
僕らにできるのは目の届かぬ闇で踊ること
いいように命を弄ばれたまま
まるで苛立ちの燠火に
突き動かされるように
まるで苛立ちの燠火に
振り回されるように
しかし僕らは何者だというのか
こんな時代のとるに足らない存在か
苛立ちの燠火
苛立ちの燠火

ここ毎日は最高に異常な日々
ここ連夜は底なしに暗い闇
誰も気づきやしないさ
貧民窟に響く声
誰も知ろうとはしないさ
時代に取り残された人々を
まるで苛立ちの燠火に
突き動かされるよう
まるで苛立ちの燠火に
むちゃくちゃ翻弄されるかのよう
頭上を覆う恐怖の真下で
足下に広がる恐怖の只中
苛立ちの燠火
苛立ちの燠火

まるで苛立ちの燠火に
突き動かされるよう
まるで苛立ちの燠火に
むちゃくちゃ翻弄されるかのよう
こんな中に僕らは生きる
ここはまさにまっ只中だ
苛立ちの燠火
苛立ちの燠火

02年の「ヒーザン」からのシングルカット曲。ピート・タウンゼントのギターが最高。
国内盤対訳は"Slow Burn"を「ゆっくり燃える炎」と訳しているのがまず良くない。「スピード・オブ・ライフ」でも「こっそり訳詞集」でも触れているが、この語はじりじりこみ上げる怒り、抱え込んだ苛立ちの意味。それをふまえないとダメ。
国内盤対訳はそのうえ「ゆっくり燃える炎」を社会の象徴のように解釈し、炎が僕らを管理し、僕らを焼いていくかのように訳しているが、これも間違い。Slow Burnは、抑圧され、抱え込み、決して消えることのない、表だって炎を上げることも許されない怒り。だから、Slow Burnは僕らの胸中にあるのだ。もう自分ではどうしようもない位の苛立ちの歌。
私はこの語をどう訳そうか悩んだが、ここは詩らしく「苛立ちの燠火」としてみた。
この曲はボウイの繰り返し表明しているテーマ、我々もそこに住み、知らぬ間に管理される現代社会への警鐘ではあるが、末尾の"And here are we At the centre of it all"に、果たして希望を読むか、絶望を読むかが各人に委ねられている箇所だと思い、あえて私は「生きる」の語を用いた。

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チェンジズ 
僕の待ち望む物が何かなんて知ったことじゃない
時間は疾走し続けるのみ
無数の行き止まり
上手くやりおおせたと思ったたびに
そう甘い筈ないといつも思う
だから自分に立ち戻る
僕は決して感じたりはしない
他人がいかさま師をいぶかるような視線など
詮索されようにも僕は素早すぎるから

か、か、か、変わるんだ!(血筋に立ち向かえ)
変わり続けるんだ
金持ちになんかなりたくもない
か、か、か、変わるんだ!(血筋に立ち向かえ)
変わり続けるんだ
別の人間に変わるべきなのさ
時間で僕は変わる
時流にあわせたりはできない

僕の見るさざ波は形を変え続けているのに
まるで穏やかに移ろう水流から
逸れてないかのようだろう
そして日々は目の前を行き過ぎるのに
いまだ同じようにしか見えないのだろう
お前らの馬鹿にしている若者達が
この世界を変えようとする時が来て
なだめすかしたって無駄
若者達は自分のやろうとしてる事を充分自覚してるから

か、か、か、変わるんだ!(血筋に立ち向かえ)
変わり続けるんだ
大人になれとか卒業しろとか言うな
か、か、か、変わるんだ!(血筋に立ち向かえ)
お前らこそ見苦しいぞ
お前らは僕らを縛るだけだ
時間で僕は変わる
お前らは時流にあわせることもできまい

奇妙な魅力が僕をとりこにする
僕の経験の速度で変化が進んでいく

か、か、か、変わるんだ!(血筋に立ち向かえ)
変わり続けるんだ
ロックンローラー諸君よ気をつけろ
か、か、か、変わるんだ!(血筋に立ち向かえ)
変わり続けるんだ
じきに諸君も歳をとる
時間で僕が変わるんだと言ったろ
時流にあわせたりはしない
時間で僕が変わる
時流にあわせたりはできない

ピカソのように変貌を遂げ続けるボウイ自身のマニフェスト。「ハンキー・ドリー」の冒頭曲。
括弧の部分は「スピード・オブ・ライフ」の古川説の通りturn and face the strain説を採用した。
但し、古川訳よりも北沢訳よりも、意味が通じるように訳したつもり。たとえばtheyとかyouとか具体的に分かりやすく訳そうよ。You've left us up to our necks in itの箇所なんか手元にどちらでも訳のある人は拙訳と比べてみて欲しい。素直に訳そうよ。
それとやっぱりドモるところがこの曲のカッコイイ所、訳詞でもドモりたかったんだよなあ。

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ガンマン」
90年のブリューのソロ、「ヤング・ライオンズ」収録作。ブリューとボウイの共作曲がブリューのページに掲載中。そちらも是非見てください。

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