天皇(エンペラドール)の密使

著者:丹羽昌一。文藝春秋。

95年刊行。
時代は1914年、内戦の続くメキシコが舞台、 革命軍の指導者の一人、パンチョ・ビリャと渡りあった 日本人青年がいたという。 そこにはさらに、支倉常長の末裔と名乗る女性と、 米国人作家アンブローズ・ビアスも登場する。 これは小説ではあるが、これらの人物は全て実在した、らしい。
この時代の北米大陸では、今でこそタブーの人種差別が 当然のこととして罷り通っていたんですねえ。 南北戦争後、黒人奴隷に替わる労働力として、 最初は中国人を有難がったが数が増えるに連れて不安感が増大し、 ついには1882年に中国人排斥法制定に至る。 次は日本人が有難がられたが、これも歴史は繰り返す、の言葉通り 結局は疎んじられることになる。
当時の世界観にしてみれば、ヨーロッパこそ世界の中心であり、 そこへ遅れてやってきたアメリカ、日本は言わばよそ者扱い。 よそ者はよそ者同士仲良くやればよさそうなものだが、そうは問屋が卸さない。 人種差別も手伝って、日米感情は悪化の一途を辿っていき、 最悪の結果を迎えることになるが、とりあえずそれはまだ先の話である。
小説の作りとしてはやや拙いところがみられるが、 題材の着眼点としては非常に面白い作品でした。

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