海の勇士ボライソー・シリーズ

著者:アレグザンダー・ケント。 現在23巻。ハヤカワ文庫(NV)。

我らがディック、英国海軍士官リチャード・ボライソーの物語。 舞台は18世紀後期から19世紀初期、イギリスとフランスが 陸と海とで死闘を繰り広げている時。強制徴募で掻き集められた水兵と ともに狭い艦内に押込められあ状態で、敵フランス艦と対決する場面は 物凄い迫力である。すぐ隣りにいた少年兵が一瞬の内に無残な肉片に、 と変り果てるリアリズム。これが戦争、と思うしかないのか。

最新刊 第25巻 「決然たる出撃」(02年03月)

アダム・ボライソー・シリーズ第1巻です(笑)。 これまで脇役だった人がそのまま主役を演じるのだから、 かなりグレードダウンの感が否めない。 ストーリー的にも意味がわからない、というか必然性に乏しい部分が多くて ずいぶんと読みづらいと思ったのは私だけだろうか。
時代背景がナポレオンのワーテルロー後の平時、ということも盛り上がらない 原因のひとつだろうか。 ただし、フリゲート艦にとっては全盛期であって、 イギリスでもようやく44門搭載艦が建造されるようになる頃ですね。 44門艦、それも18ポンドカノン砲、それ聞いただけで、 フリゲート艦好きの私はわくわくしますね(^^)。 いや、大きいのをたくさん積めばいい、というわけではなく、 強力、かつ快速でスマートな艦が好きなので。 44門フリゲート、それだけでもう負ける気がしません(笑)。

<既刊リスト>

第1巻 「若き獅子の船出」
第2巻 「革命の海」
第3巻 「わが指揮艦スパロー号」
第4巻 「栄光への航海」
第5巻 「南海に祖国の旗を」
第6巻 「コーンウォールの若獅子」
第7巻 「反逆の南太平洋」
第8巻 「激闘、リオン湾」
第9巻 「遥かなる敵影」
第10巻 「不屈の旗艦艦長」
第11巻 「白昼の接近戦」
第12巻 「スペインの財宝船」
第13巻 「提督ボライソーの初陣」
第14巻 「危うし、わが祖国」
第15巻 「孤高の提督旗」
第16巻 「姿なき宿敵」
第17巻 「栄光の艦隊決戦」
第18巻 「急行せよ、カッター戦隊」
第19巻 「最後の勝利者」
第20巻 「大暗礁の彼方」(97年2月)
今では英国海軍中将となったボライソー、かつて親友だったヘリック少将が 軍法会議にかけられる。その結果は?そして郵便船に最愛の人と乗り込んで ケープ・タウンへ赴くがその船で反乱が。この人の行く道には困難しか ないのだろうか。

第21巻 「復讐のインド洋」(98年1月)
本編で描かれている1809年頃は、 海においてはトラファルガーの敗戦による影響で、 陸においてはイベリア半島でのウェリントン公の活躍で フランスにとってはなんとも旗色の悪い頃だったような。 しかもナポレオンは不貞ではあるが幸運の女神ともいえる妻と 離婚する頃でもある。
さて、そんなことはさておき、今回はインド洋で フランスの策謀家提督が行っている、英国の通商路破壊を くいとめるために、ボライソー中将が派遣されるが、 そこには復讐に燃える仏提督の罠が!
ということで、その裏にはなんと米国が登場します。 この頃は英国と米国とは、戦争状態ではなかったが、 当時は米船舶の乗組員を英軍艦が強制的に徴集するので、 米国民が英国に対してかなり反感を持っていたようです。 実際1812年には戦争になりました。 しかし、本編で登場する米国の44門搭載フリゲート艦は、 確かに優秀な艦でしたが、当時の両国の海軍力を比較すると 英国は1000隻を超える艦艇を保有するのに対し、 米国は20隻程度・・・。 しかも戦列艦においては、英国250隻に対し、米国0隻・・・。 もっとも英国はそのほとんどの艦船をフランスに対して張りつけていたし、 米国には優秀な私掠船団もあったので(「マーカム家の海の物語」参照)、 いい勝負してたりして。
今では最強を誇る米海軍にもそんな時代があったんですね。

第22巻 「海軍大将ボライソー」(99年2月)
われらがディックがついに海軍大将まで昇りつめた。 しかし米国との関係は思わしくなく、 フリゲートの小艦隊を率いてリーワード諸島へ派遣される。 そしてついに英米戦争に突入、敵にはあの恐ろしい 新鋭大型フリゲート艦が・・・。
ということで地位が上昇しても相変わらず手足を縛られながら 戦わされる不幸な主人公。 そして物語には当時の最大の強敵だった44門フリゲート艦が 登場します。 史実では、「コンスティテューション」、「プレジデント」、 「ユナイティド・ステーツ」の3隻だったが、 本編では「ユニティ」、「ボルティモア」という名称で2隻が登場、 さらに背景で「コンスティテューション」が実名で登場して 英国の「ゲリエアー(ゲリエール)」を降伏させていました。 つまり当時の米国最強の軍艦が勢ぞろいしていたわけですから、 それはもう楽しませてくれます。
そして今回も大活躍の「半顔の悪魔」タイアック、いい味出してます。 ヘリック、キーンに変る位置を占めてきた、と言えましょう。

第23巻 「聖十字旗のもとに」(99年12月)
例によって今回も第二次英米戦争が舞台である。 元々はフランスの植民地だった北米に後から来た英国がのさばり、 その後大陸が独立して、北米の覇権を争った時代、というところか。 今だったらもう考えられないことだが、昔は侵略戦争なぞ 文明国の当然の権利だった時代なんだよなあ。 そしてその頃の各国はそれを競争して行っており、 利害がぶつかればそこでも戦争が起こったりすることは 当然の成り行きですらあったのだ。 だから今の価値観で過去を裁くなんて愚かしいことを、 マスコミが挙ってしてのけるのは無意味どころか罪悪ですらあるのに それに気付けない日本国民って、やっぱり異常である。 いや別に、本書の紹介で書くことではないけれど、つい筆がすべって(^^ゞ。
しかし、本書で好きな言葉、「我ら幸いなる少数」。 響きがとても好きだし、何よりその意味が気に入っている。 意味が知りたい人は頑張って読んでね(笑)。

最新刊 第24巻 「提督ボライソーの最期」(00年11月)
題名からご想像のとおり、われらがディック≠ェ戦死してしまいました。 しかし、本シリーズはまだ続けられるようで(謎)、 甥のアダムが後を引き継いでいくようです。
今回の舞台は1814年から15年の地中海、ということは そうです、エルバ島です。 ナポレオンが退位して和平気分に浮かれる本国をよそ目に、 マルタ島に赴くボライソー。 地中海の通商路を確保するためなのだが、 和平を楽観した海軍本部は軍艦と乗組員をどんどん削減している最中で 例によって持ち駒が少ない。 敵はフランスに加担するアルジェリア海賊と謎の2隻の大型フリゲート。 だんだんと追い詰められるような状況で、最期の罠のばねが弾ける・・・。

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