著者:宮城谷昌光。文春文庫。作品一覧へ
91年刊行、94年文庫化。
中国古代、いわゆる春秋時代に晋君の臣下であった趙氏の代々の当主に焦点を当てた短編集で、 それぞれ独立した形の四篇の短編小説でありながら、 全体を貫いてひとつの小説と言えなくもない一冊です。
「孟夏の太陽」
二代目・趙盾が主人公。趙氏は重耳に仕えた趙衰が有能だったため その息子・趙盾も重臣に取り立てられるが、 なんと中軍の将、すなわち元帥に任命されてしまい 内部の権力争いに巻き込まれて難渋することになる。
ところで、晋公・重耳が薨去したおり、諡号は「文」であり、 かれは死後に文公とよばれるが、諡号は文が最高であるから、 晋の累代の君主のなかで重耳が最高であると評定されたことになるんだとか。「月下の彦士」
三代目・趙朔のお話。 このころの晋は楚と反目し合っており、 その中間地にいる鄭という小国を巡っての争いが絶えない。 そんな中でも臣下同士の権力闘争は行われており、 趙朔はそれに巻き込まれて殺されてしまう。 ところが日頃から親しくしていた友人たちが命にかえて 趙主(趙朔)の遺児(趙武)を守り通し、趙武はとうとう晋の宰相となる。「老桃残記」
趙武の孫・趙鞅、六代目の主です。 趙成子(趙衰)、趙宣子(趙盾)、趙荘子(趙朔)、趙文子(趙武)、 趙景子(趙成)と続いた後に来るのが趙鞅となります。 このとき、晋は周王朝のお家騒動から内乱状態にどっぷりと巻き込まれてしまいます。 それがすんだら次は衛の国の跡目争いに忙しく過ごす日々が描かれている。「隼の城」
趙鞅が下女に産ませた子・無恤が血統の優れた兄たちを差し置いて家督を継ぐ話。 このころ晋の朝廷を運営するのは四卿しかおらず、 知瑤、趙無恤、韓虎、魏駒、という。 この中で知瑤が最も勢力を誇り、権力欲を持っていたが、 他の3人の団結によって滅ぼされ、残ったのが、趙氏・韓氏・魏氏、 ときに紀元前四五三年のことである。
知瑤の敗死によって、春秋時代が終わったとする史家は少なくないらしく、 かれらは三晋(晋の三国)と呼ばれ、 それに「秦」「楚」「斉」「燕」が加わって戦国時代がはじまったとされています。