バサラ将軍

著者:安部龍太郎、文春文庫。

95年刊行の「室町花伝」に、98年「師直の恋」を加え再編集の上、改題、文庫化。
室町時代初期の人物を小説にした6編からなる短編集であるが、その目の付け所がユニークで面白い。 主人公がなぜに足利尊氏でなくて弟の直義なのか、高師直なのか、 新田義貞でなく義興のそのまた家来なのか(笑)。 それと、それぞれが独立した短編集ながら、時代背景が時系列になっているところも 楽しかったりする。

「兄の横顔」

時は建武二年(一三三五)、足利尊氏がまだ将軍になる前の話。 大塔宮(護良親王)排除の真相にせまる、わけないか(^_^;。 主人公は足利直義ですが、当然ながら尊氏も登場します。 この兄弟、いかにも仲違いしそうに描かれてますね(笑)。
「師直の恋」
時は暦応三年(一三四〇)、高師直が主人公。 歌舞伎などではすっかり悪者にされておりますが、 この人無くしては足利幕府も無かったかもしれない、 というほど軍事面に優れていたそうです。 ちなみに、「太平記」に記されている、人妻に言い寄ったときの エピソードだそうです。
「狼藉なり」
時は・・・記述無し、これまた師直が主人公。 土岐頼遠の処刑を題材にした面白い短篇に仕上がってます。 この小説に描かれる師直の人柄がなんか気に入りました。
「智謀の淵」
時は正平十三年(一三五八)、新田義興の元家来、竹沢右京亮(誰?)が主人公。 元主人を騙して弑逆し、首を土産に寝返ってみたものの・・・。 この弑逆の場所ってのがまた、矢口の渡しなんだそうで。 そしてこの右京亮の領地というのが荏原郡六郷(大田区六郷)なんだとか。 すっげえ気になる(笑)。
「バサラ将軍」
時は永徳二年(一三八二)、主人公は三代将軍足利義満、こちらも人妻への横恋慕が題材です(笑)。 「天皇になろうとした将軍」とも思えない可愛らしい話じゃないか。
「アーリアが来た」
時は応永十五年(一四〇八)、どうでもいいような商人が主人公。 南蛮(パレンバン)から将軍に象が献上されたことを題材にして、 その実は当時の将軍義持派と義嗣派との対立の図式を浮かび上がらせているんですね。
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