著者:中津文彦。PHP文庫作品一覧へ
94年刊行、96年文庫化。
義経の生涯については、不明な点が多く、後に俗にいう義経伝説がいくつも生まれたわけですが、 この本のタイトルは何を意味しているかというと、義経は平泉で死んでなかった、というもの。 泰衡に攻められて自決するのは義経の影武者で、どころかその襲撃も見せ掛けで、 本物の義経は対鎌倉戦に備えて靺鞨の精強なる騎兵と新兵器・震天雷を入手するために 海を渡っていた、という、いやもうまったくの作り話です(笑)。
そうはいっても鎌倉と奥州平泉と朝廷が繰り広げる駆け引きは実にリアルで、 単なるミステリー小説とわかっていても、 さもありなん、とついつい引き込まれてしまうところが多々あったですね。 特に興味深かったのは、頼朝が義経の居場所を知っていて知らんぷりするあたり。 義経を反逆を企んでいる大罪人であるとして朝廷を揺さぶり追討の院宣を出させ、 御家人を守護、地頭として諸国に派遣して、捜索に名を借りて 大がかりな支配体制の転換を図ろうとしているから、 見つからないことにしておいたほうが都合がよかった、という理屈ですわ。