著者:麻倉一矢。PHP文庫。作品一覧へ
98年文庫本書下ろし
そもそものきっかけは柳沢吉保が赤穂藩の製塩法を上野介に探らせたためで、 上野介は単なる逆恨みの被害者という設定で、 その後の討入りまでの成り行きは、これがまた綱吉の後の将軍位を争う 甲府徳川家と紀伊徳川家の代理戦争という図式である。 「生類憐みの令」は綱吉に跡継ぎが生まれないことから出来た政策で、 綱教に嫁いだ鶴姫が子を生せば世継ぎとしたい綱吉としては吉良と縁続きの 紀伊家の評判が落ちるのは困る。 側用人による側近政治を嫌う紀伊家が次代将軍では困る柳沢としては、 浅野の遺臣どもに上野介を討たせて紀伊家の面目を潰したい。 歴史を素直に眺めれば六代将軍の座は家宣(甲府綱重の子・綱豊)なわけで、 柳沢・甲府側が勝利したことになるが、 その結果として吉保は権勢を失ってしまうのだから歴史とは皮肉なものである。 深く考えさせられるところもいろいろあるけれど、ま、単なる小説です。