涙、らんかんたり 武田勝頼の正室

著者:阿井景子。講談社。

99年刊行。
長篠の敗戦の後、信長に対抗する手段として甲相同盟を強化するために 勝頼の正室として迎えられた北条氏政の実妹を主人公に描く小説。
実家と婚家が手切れになると、正室を実家に帰すのが普通であるのに、 夫人は勝頼のもとにそのまま残り、天目山で最期を迎えており、 戦国時代としては珍しい例なので、その話自体は広く知られているが、 それを主人公として小説にしてしまうところが面白い。
物語は奥の夫人の立場で描かれているので当然戦闘シーンなど皆無であるが、 かえって逆に戦国武将の日常生活にふれているところが新鮮であり 話としてはそれなりに楽しめました。 勝頼といえば諏訪神社の末裔ですから、神事などは厳格に執り行われていたでしょうが、 そのようなことは最近はやりのIF戦記ものにはほとんど書かれた例がありませんでした。 それがこの物語では丁寧に書かれていたので最初は驚いたのですが、 よく考えてみればこれが当たり前のことなんですよね。 いくら戦国時代といっても、四六時中戦争ばかりしていたわけではなく、 政治も行わなければならないわけで、 そうなると当然国内行事のことにふれられるはずですから。 それが全然出てこない方が不自然な小説と言うべきなんでしょうね。
タイトルの意味はおそらく、政治の道具としてわずか14歳で他国へ輿入れさせられ、 19歳で散らなければならなかった夫人のその悲劇を現したものでしょう。 ああ、なんて可哀相な(T_T)。なんつって (^_^ゞ。

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