関ヶ原連判状

著者:安部龍太郎、 上・下巻。新潮文庫。

96年に新潮社より刊行。99年文庫化。
関ヶ原に関する書き物はこれまでどれくらいたくさん書かれたことか知れない。 そして私はその内のごく一部しか読んだことが無いかもしれない。 しかし、この説は始めてお目にかかる、そして興味深い内容であった。
物語としても十分に面白いが、その背景の考え方の方がもっと楽しい。 物語の最前線を務める人物はおそらく架空の人物だが、 その指揮者を演ずるのはなんとあの細川幽斎。 そしてそのアイテムが「古今伝授」と「連判状」、という視点が新鮮だ。 「古今伝授」と細川家の駆け引きは別に新しい話でも何でもないが、 そもそもそれが幽斎の大謀略の手段である、というところが面白い。 さらには「連判状」。 今までも日向守謀反の陰にあるだろういろいろな陰謀説が論じられてきた。 その範囲ではこれもそれらの内のひとつにすぎないが、 そこから朝廷の影響力に結び付けていき、 これほどまでに政治の世界を生々しく巧妙に物語にできるところが凄いと思う。 そしてこれらは全て本当にそうだったのかも知れない、 ということだから面白いのだ。
2000年を迎えた今からは丁度400年昔の出来事であるが、 本当のことは既に定かではなくなってきている。 過去のことは常にその時代の都合によって何度も歪められて伝えられたからだ。 だから歴史家たちは古今の資料を引っくり返して前後関係から わずかな矛盾点など見つけ出し、 そこから新しい推論を常に導き出しており、それは今でも続いている。 歴史小説家がそれに感化され、新しい視点から作品を描いてくれることは 嬉しい限りである。 何故ならば、過去(歴史)とは未来以上に不安定なものだから。

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