海戦

著者:丹羽文雄。中公文庫。

昭和十七年、つまり戦時中に発表された作品。文庫本(伏字復元版)は00年刊行。
この作品に描かれている「海戦」とは第一次ソロモン海戦のことで、 著者はこの作戦に報道班員として従軍し、実際に戦闘をその目で見てきており、 さらに負傷までしている。 その体験を素人(軍人でない、という意味)の言葉で描き表わしたもので、 素人ゆえに戦闘の経過や全体的な展開をつかむには用を成さないが、 臨場感という意味では元軍人が書いたへたな手記などを読むよりも ずっと上である。とにかくリアルなのである。 これが軍人だったら当り前の話なのでわざわざ書かないだろうことまで書いてある。 たとえば戦闘終了後にこんなやりとりがある。
艦内拡声器が何か叫んだが聞き取れなかった著者が 甲板士官に「何と言っているのですか」と聞くと、
士官「主砲を射つと言ったのです」
著者「まだ敵がいるのですか」
士官「敵はいません。もうツラギからかなりはなれています。 一発主砲に装填したままのが残っていますから、それを射ってしまうのです。 のこしておくと危険ですから」

とまあ、こんな感じで。装填済みの残弾は、 なんと射って処理していたのですね、知らんかった。 これは軍人さんの手記では読めない話だったと思う。

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