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My Favorite Books   私の好きな本    1995年版 (2008年補記)
                     池田博明


       忘れられた傑作を含む. 映画に関連する本は別記.

番号  著 者  書 名  出版社  分類
カート・ヴォネガット 『猫のゆりかご』 (早川文庫) 小説
猫のゆりかご ヴォネガット作品では,言葉を変えることで世界をとらえ直そうと意図した『猫のゆりかご』が第一に好き.「猫のゆりかご Cat's cradle」とは「あやとり」のことである.『プレイヤー・ピアノ』『タイタンの妖女』『スローターハウス5』『母なる夜』『ローズウオーターさん,あなたに神のお恵みを』『スラップスティック』『チャンピオンたちの朝食』なども傑作.晩年の小説作は自己韜晦的になっている.
 早川文庫のヴォネガットの装丁は和田誠.ボコノン教という新興宗教の教義は基本的に,フォーマであるという.「フォーマ」とは無害な非真実,つまり害のないウソのことである.「汝殺すなかれ」といったような真実がフォーマである.
 ヴォネガットは2007年4月11日に84歳で逝去.ご冥福を祈ります.
ジョージ・オーウェル 『オーウェル評論集』 (岩波文庫)  評論
オーウェル評論集 1984年はオーウェルに同題の小説があることから注目された.『1984年』や『動物農場』の社会認識は注目できる.エッセーは特に素晴らしい.ミニ紹介
 『オーウェル評論集』に収録された文章はどれも一読の価値がある.オーウェルは他人や社会や状況を見るとともに自分自身をふり返ることができた.また,言葉づかいに表れる真実にたいへん敏感だった.小説『動物農場』で行われた歴史の書き換えは,現在もいろいろな場面で実際に行われているし,『1984』の二重思考(ダブル・シンク)という概念は現代を切り裂く用語のひとつとして重要なものであった.イラスト中心のBeginnersシリーズに『Orwell』があるのだが,翻訳されないままである.非常に残念.自分で翻訳して読むしかないのだろうか.平凡社から出版されていた『オーウェル著作集』は古本でなんとか入手できました.
渡辺一夫 『フランス・ルネサンスの人々』 (岩波文庫)  評論
フランス・ルネサンスの人々 高校生のときに図書館で読んで以来,私にとって最高の列伝である.本を書くならこのように誠実に書くことができればと思わされた.何度も読みかえしている,私の本のベスト1.せっかく岩波文庫に入ったのに品切れ!2008年に光文社から『きけわだつみの声』が再刊された.元版の渡辺一夫の序文も感想として収録されている.短い文章ながら心を打つ名文で、2008年後期、田母神もと航空幕僚長の人間性を理解していない主張を臆面もなく延べた本が堂々と販売される時世が嘆かわしい.人間が機械になってしまう戦争という狂気を告発しつづけた渡辺一夫の志こそ、いま復権されて注目されるべきだ.田母神氏の耳ざわりのいい主張を受け売りしてすむのならドストエフスキーもカミユも必要なかった.人間は基本的に肥大化した脳を制御できない、愚かな生き物なのだ.
ナット・ヘントフ 『誰だ,ハックにいちゃもんつけるのは』  (集英社コバルト文庫) 小説
誰だハックにいちゃもんつけるのは 絶版なのが惜しい.原題は「The Day They Came To Arrest The Book」,つまり,“やつらが本を逮捕にきた日”.ここで問題になっている本は,マーク・トウェインの『ハックルベリー・フィンの冒険』で,「ニグロ」という言葉のゆえに,図書館から本を追放しようとする動きに対して,司書が中心になって反対する物語である.翻訳者は坂崎麻子.ミニ紹介
 アメリカの合衆国憲法修正第1条に関するディスカッション・ノベル.集英社のコバルト文庫の海外翻訳作品はコッポラが映画化したヒントン作の『アウトサイダー』や『ランブルフィッシュ(非行少年)』など興味深いラインナップだったのだが・・・。反抗する中学生を描くナット・ヘントフには『ジャズ・カントリー』という傑作もある.
 他に絶版文庫でぜひ再刊してほしい傑作は,ルグインの『天のろくろ』(サンリオSF文庫.脇明子訳)である.
ウイリアム・サローヤン 『人間喜劇』 (晶文社)  小説
 サローヤンの傑作.小島信夫の訳者後書きが一見の価値がある.ただし,この本の本来の訳者は田中小実昌である.田中の下訳を直す必要がなかったと小島信夫は書いていた.ちくま文庫からは『ヒューマン・コメディ』として出版されている.
ジェーン・オースティン 『自負と偏見』  (新潮文庫) 小説
自負と偏見 大学4年にウイルス性肝炎で入院していたときに病室で読んで感動した. 日常のなかのささいな出来事に意味を見出すオースティンの目はすばらしい. 『高慢と偏見』と訳されることもある.中野好夫訳が読みやすい. ミニ紹介
 1990年代にBBCでオースティンがドラマ化されて大好評.映画では『プライドと偏見』や『ブリジット・ジョーンズの日記』,そしてモンティ・パイソンのお笑いブームなどイギリス喜劇はちょっとした注目を集めている.自分をも皮肉の対象にしてしまうイギリス人の凍りつくような笑いは人間の笑いのもっとも進化したかたちである.その原点にあるのがオースティンの観察眼と,対象との微妙な距離のとりかた.
石牟礼道子 『苦海浄土 わが水俣病』   (講談社文庫) ノンフィクション
苦界浄土 水俣病は悲惨な歴史である.患者さんの立場に寄り添う石牟礼さんの目はあたたかく,感動的である.大宅壮一ノンフィクション賞第一回の受賞作品であるが,石牟礼さんはわたしは語り部にすぎないと,受賞を辞退した.この第一回受賞作がもうひとつ,柳田邦男の『マッハの恐怖』だったから,素晴らしい受賞作ぞろいだったことが分かる.
 天草方言で書かれた聞き書きの章を声を出して読んでいくと,どうしても涙がわいてきて仕方がない.授業中に高校生に紹介するときにも,泣きそうになってしまう.そんな言葉だ.
 公害に関しては田尻宗昭『公害摘発最前線』(岩波新書.絶版)も名著であった.水環境に関する中西準子『都市の再生と下水道』(日本評論社)も名著である.
田中小実昌 『ポロポロ』  (中公文庫) 小説
ポロポロ コミさんこと田中小実昌の父親は神父であったという.そのお祈りの言葉を「ポロポロ」と表す感性が面白い.コミさんの作品はいつも似たような筆致でつづられていて,傑作も駄作もないと思うが,しいてあげるとこの1冊.コミさんは芥川賞を受賞した後,2000年に逝去.
コンラート・ローレンツ 『ソロモンの指環』 (早川文庫) 科学随筆
ソロモンの指環 動物行動学の名著のひとつ.最近は感動しなくなったとウソぶいていた大学1年のとき,図書館から借りて読んで,頭をガツンと殴られたような気がした.動物を飼育して,彼らを理解する喜びに満ちた本.
10 なだいなだ 『TN君の伝記』 (福音館日曜文庫) 評伝
TN君の日記 TN君とは中江兆民のことである.評伝文学の傑作のひとつ.兆民の型破りな生き方と幕末から明治の日本とフランス革命時のフランスが描かれている.福音館日曜文庫には日向康の田中正造伝『果てなき旅』もある.兆民に関しては幸徳秋水『兆民先生』のほか,兆民全集がある.飛鳥井雅道『中江兆民』(吉川弘文館,1999年)はよくまとまっている.幕末に関しては福沢諭吉『福翁自伝』や杉田玄白『蘭学事始』も大変に面白い.
11 小島信夫 『抱擁家族』  (講談社文芸文庫) 小説
 家族のなかに「アメリカ」が象徴的に入り込む.人間関係のゆがみが生み出す奇妙な可笑しさ.埴谷雄高『死霊』や北杜夫『楡家の人びと』,島尾敏雄『死の棘』と共に,私がもっとも高く評価する戦後文学のひとつ.逝去以後,小島信夫の作品の文庫や単行本がほとんど書店から消えてしまった.深沢七郎とともに新しい読者を開拓できないほど本が無くなってしまっている作家のひとり.
12 上野瞭 『日本宝島』  (理論社) 小説
日本宝島 上野瞭の児童文学は『目こぼし歌こぼし』(あかね書房及び講談社文庫.絶版)も『ちょんまげ手まり歌』(理論社)も傑作である.寓意に満ちた構成,冒険物語の展開,もっともっと話題になってもいい本なのにと思う.
13 岡嶋二人 『あした天気にしておくれ』  (講談社文庫) 小説
あした天気にしておくれ 岡嶋二人は私にとって,東野圭吾と並んでもっとも次作が楽しみなミステリ作家だった.
 なかでも競馬界を扱ったこの作品がいちばんである.人が誰も死なないミステリーだが,サスペンスじゅうぶんである.序章の最後に印象的な言葉がある.「私は、鞍峰の信頼と、望月の感謝を得たが、もっと大切なものを失った.自分自身である」.この痛切さが通奏低音となって作品を支えている.『容疑者Xの献身』以降,書店では東野圭吾の旧作が増刷されて並べられよく読まれるようになった.これまでの愛読者としてはどうしてもっと読まれないのか臍をかむような思いをしてきていたので大変にうれしい.次に,岡嶋二人の傑作群も同様に注目を浴びてほしいものだ.
14 井上ひさし 『下駄の上の卵』 (岩波書店) 小説
下駄の上の卵 岩波の総合雑誌「世界」に連載された.第二次世界大戦直後の山形県米沢市付近の少年たちが草野球に夢中になり,とうとう東京まで列車をタダ乗りして来て,ボールを買おうとする物語.井上ひさしの戦後へのこだわりが感動的な小説.書名は山形の方言「たまげた(びっくりした)」から由来した.地名などの魅力は山形県民以外には理解できないかもしれない.せつなさがある.

津野海太郎・二木麻里,2000年,『「オンライン読書」の挑戦』.晶文社



 My Favorite Short Stories 私が好きな短編小説 
                 池田博明    1983年1月20日

番号  著 者  短編題名  掲載誌・本  出版社
ヘンリー・スレッサー 「水よりも濃し」 ヒッチコックマガジン 1962年2月号
 水よりも濃いのは血である.クライム・ストーリーの1篇.
アーサー・ミラー 「ある老人の死」 『ミニミニミステリ傑作選』 (創元推理文庫)
 スラムに住む老人と警官の心の交流.
レイ・ブラッドベリ 「見えない少年」 『万華鏡』 (サンリオSF文庫)
 ブラッドベリにはたくさんの傑作がある.このサンリオSF文庫(絶版)は川本三郎訳.
G・K・チェスタトン 「イズレイル・ガウの誉れ」 『ブラウン神父の童心』 (創元推理文庫)
 ブラウン神父ものの中でもっともブラウン神父の発想がよく出ている1作.ボルヘスが編集したチェスタトン選集でも,ブラウン神父ものから,この一篇を採択していた. 
ロアルド・ダール 「やりのこした仕事」 『ブラック・ユーモア選集E』 (早川書房)
 ダールも短編の名手である.
泡坂妻夫 「DL2号機事件」 『亜愛一郎の狼狽』 (創元推理文庫,角川文庫)
 ミステリ作家・泡坂妻夫と探偵・亜愛一郎のデビュー作.泡坂氏は雑誌「幻影城」の新人コンテストで,この作品で登場した.一読感嘆した記憶がある.この亜探偵の短編ミステリ集『狼狽』に限らず『転倒』『逃亡』など傑作ぞろいである.
連城三紀彦 「桐の柩」 『戻り川心中』 (講談社文庫)
 雑誌「幻影城」に「花葬」シリーズとして書いていた推理小説の1篇.連城の「変調二人羽織」も見事なデビュー作だった.一読感嘆した記憶がある.
シャーリー・ジャクスン 「くじ」 『異色作家短編全集』 (早川書房)
 死後ますます評価が高まるシャーリイ・ジャクスンの傑作短編.
ジュール・ルナール 「にんじんのアルバム」 『にんじん』 (新潮文庫,角川文庫,旺文社文庫)
 『にんじん』は不思議な作品である.これほど淡々と残酷というものを描いた作品はあまりないのでは.
10 赤川次郎  「理由なき反抗」 『埋もれた青春』 (角川文庫)
 16歳の香里は友だちから、TVドラマ“ガラスの家”をみているかと聞かれる。香里の家族そっくりだというのである。ドラマと実在の家庭で起こる事件が同時進行する「理由なき反抗」。1987年ごろに赤川次郎作品をまとめて読んだ時期があった。 その頃のベストはこちら

  

生物教師が高校生に薦める名篇 (順不同)
          池田博明  2000年1月

番号 著 者  書 名  出版社 分類
杉田玄白 『蘭学事始』 (講談社学術文庫) 自伝
 小学校の頃に家にあった小学生用『日本の歴史・幕末』でもっとも印象に残った挿話は蘭学事始のことだった.ちょうどNHKの子供向け連続TVドラマで,幕末の緒方洪庵塾を取り上げていた.♪古い鎖国の石垣崩し,導く文化の輝く潮,という主題歌はいまだに唄える.『蘭学事始』刊行の際の福沢諭吉の序文も印象的である.辞書があっても利用しない,いまどきの生徒に是非知ってほしい本である.
岡倉天心 『茶の本 The Book of Tea』 (講談社学術文庫)  評論
 この本は最初から英語で書かれている.この文庫には対訳も載っている.茶道に関する知識だけではなく,外国語で日本を紹介するという挑戦的な試みを知ってほしい.
毛沢東 『矛盾論』 (岩波文庫) 哲学
 岩波文庫では,実践論と矛盾論で一冊になっている.唯物弁証法を理解するのに,最適な一篇.いまどき毛沢東なんて時代遅れ? そうではない.弁証法は歴史を作った哲学としても重要であると思う.
江川 卓 『謎とき『罪と罰』』  (新潮選書) 文学
 ドストエフスキーの傑作を,その言語を手がかりに読み解いてみせた批評の傑作.謎ときシリーズは『カラマーゾフの兄弟』『白痴』と続いた.
北杜夫 『どくとるマンボウ昆虫記』 (角川文庫)  随筆
 北杜夫の『楡家の人びと』『幽霊』『白きたおやかな峰』『羽蟻のいる丘』などどの作品も味わい深い.『どくとるマンボウ昆虫記』は昆虫きちがいだった頃の思い出をつづった名編.
梅棹忠夫 『モゴール族探検記』  (岩波新書) 探検記
 高校時代に現代国語の教科書でその抜粋を読んで,全編に興味が出て,購入した.この本を読んで人類学者になろうとさえ思った.文章がみごとである.影響されて,大学時代には,ひらがなタイプも買った.わが文章作法のお手本である.『知的生産の技術』(岩波新書)にも,影響された.
橋本進吉 『古代国語の音韻について』   (岩波文庫) 国語学
 白文の万葉集から古代の音韻を再現するという方法に驚かされる. 
畑正憲 『われら動物みな兄弟』  (角川文庫) 随筆
 ムツゴロウこと畑正憲さんの処女作.畑さんが,物書きになれるかどうかを賭けた一作で,ムダのない本である.第2作の『天然記念物の動物たち』も良い.畑さんの本は次第に内容が薄くなっている.So it goes.(そういうものだ)
板倉聖宣 『模倣の時代』 (仮説社) 評伝
 脚気の原因について日本の医師たちの探求の歴史.高校生よりもむしろ教員の方に薦めたい.
10 武者小路実篤 『武者小路実篤詩集』 (角川文庫) 詩集
 角川文庫(1999年1月発行)の荒川洋治の解説が傑作だ(誰にでも実篤風の詩が書ける.詩の歴史にとって,誰にでも書けるそのことが大切だという).武者小路の詩も小説も,ぜひ青春時代に読むといい.ちなみに,私は会田綱雄の寓話的な詩や石垣りんの生活感ある詩が好きである.


    

これが我が愛する文庫だ!(上記した作品は略述に留めた.順不同)
            池田博明

世界の十大小説に選出されるような作品は基本的に入っていません.世界の十大小説が知りたい場合には,岩波新書のモームの本でも読んでみて下さい.千年間の芸術ベスト100という企画もありました.

番号 文庫名 書  名 解説
講談社学術文庫 杉田玄白『蘭学事始』  講談社学術文庫には貴重なセレクトがされている.特に自然科学系は貴重な学術書が多い.
岡倉天心『茶の本』
岩波文庫 『オーウェル評論集』/渡辺一夫『フランス・ルネサンスの人々』  古典の傑作が収録されている岩波文庫だが,20世紀末には『踊る地平線』など面白い作品も収録されるようになった.渡辺一夫ではエッセー集『狂気ということ』も岩波文庫にある.
ラブレー『ガルガンチュワとパンタグリュエル物語』  渡辺一夫渾身の訳業.日本語の豊かさを学ぶことが出来る.
中公文庫 田中小実昌『ポロポロ』  田中小実昌を一冊読むなら,これがお薦め.
『日本の詩集・訳詩集』  全集・日本の詩集の1巻だが,貴重なアンソロジーになっている.
ちくま文庫 サローヤン『ヒューマン・コメディ(人間喜劇)』   ちくま文庫にはマイナーな作家が多数収録されている.貴重な文庫で,サローヤンの作品も複数が収録されている.
ケストナー『人生処方詩集』   この詩集は教訓臭の強い作品で,最初は角川文庫に入った.
講談社文庫 石牟礼道子『苦界浄土』/連城三紀彦『戻り川心中』/岡嶋二人『あした天気にしておくれ』  講談社文庫には目利きの編集者がいると思われる.他にはない傑作が収録されている.
『目こぼし歌こぼし』  上野瞭の小説『目こぼし歌こぼし』は品切絶版.
講談社文芸文庫 小島信夫『抱擁家族』  小島信夫の最高傑作.江藤淳『成熟と喪失』も併読できる.
井伏鱒二『厄除け詩集』  カルメン・マキが唄った「だいせんじがけ・だらなよさ」(寺山修司作詞)は,漢詩を訳した井伏の詩の一節を「さよならだけが人生だ」を逆さ読みしたもの.岩波文庫にも収録されました.
伊藤整『街と村/イカロス失墜/生物祭』  伊藤整の実験精神あふれる小説.品切絶版.
角川文庫 『武者小路実篤詩集』/畑正憲『われら動物みな兄弟』  武者小路実篤詩集は、1999年1月発行の荒川洋治の解説が傑作.畑正憲の本は処女作でエッセイスト賞受賞作.
谷川俊太郎『谷川俊太郎詩集1・2』  谷川の文庫版詩集である.この文庫詩集には「ジャズ」や「21」などの,実験精神あふれる詩も収録されている.
新潮文庫 オースティン『自負と偏見』/北杜夫『楡家の人びと』    オースティンの『自負と偏見』は,中野好夫の翻訳がみごとである.北杜夫の小説では『幽霊』や『どくとるマンボウ昆虫記』も傑作である.
シリトー『長距離走者の孤独』  怒れる若者,シリトーの描く孤独と反抗.
モーム『短編集1.雨・赤毛』  以前は新潮文庫でモーム作品集をそろえることが可能だったが,現在は品切で入手不可能.私は古本屋で新潮文庫版モーム作品集をそろえたが,高価だった.
早川文庫 『猫のゆりかご』『ソロモンの指環』   ヴォネガットの作品は,ほとんどが早川SF文庫に収録された.私のベスト5は『猫のゆりかご』『タイタンの妖女』『スローターハウス5』『ローズウオーターさん,あなたに神のお恵みを』『チャンピオンたちの昼食』.ローレンツの『ソロモンの指環』は思い出の本.
ディック『パーマー・エルドリッチの三つの聖痕』  フイリップ・K・ディックの傑作もほとんど早川SF文庫に入っている.『宇宙の眼』『アンドロイドは電気羊の夢を見るか』『ユービック』『流れよ我が涙と警官は言った』等など,夢中で読んだ.
ラヴゼィ『煙草屋の密室』  ピーター・ラヴゼィとコリン・デクスターの英国ミステリーは私が最も好きな世界である.『煙草屋の密室』はラヴゼィの第一短編集.
サンリオ文庫 ブラッドベリ『万華鏡』  ブラッドベリはどれも名短篇.サンリオSF文庫は絶版.
ル・グィン『天のろくろ』(訳書,1979年) 天のろくろ アーシュラ・K・ルグインの傑作のひとつ.アメリカではTV化されたという.「天のろくろ」という言葉は英訳された「荘子」の誤訳の一節から取られたという.
 夢が現実化してしまう主人公オアは,ドストエフスキーの『白痴』のムイシュキン公爵や『カラマーゾフの兄弟』のアリョーシャの系譜である(脇明子のあとがきによる)。マッド・サイエンテストものの一種であるが,惜しくも絶版で,その後復刊されていない.サンリオSF文庫には、トンデモ訳が多かったが、このル・グイン作品,31歳の脇明子訳はみごとな出来ばえ.
10 創元推理文庫 泡坂妻夫『亜愛一郎の狼狽』  泡坂妻夫の亜探偵ミステリーはどれも傑作.「狼狽」は亜シリーズの第一短編集.
チェスタトン『木曜の男』  チェスタトンの奇作である.創元推理文庫で彼のブラウン神父もの以外の小説も割合に読むことができる.『奇商クラブ』『詩人と狂人たち』など.
創元SF文庫 『 ** 』  (指定席)
11
集英社文庫 ヘントフ『誰だ,ハックにいちゃもんつけるのは』  この本は絶版である.コバルト文庫の外国ものはユニークだったが,売れなかったらしい.ナット・ヘントフの翻訳された小説はどれも一読の価値あり(講談社文庫に『ジャズ・カントリー』など).
ロス『素晴らしいアメリカ野球』  抱腹絶倒もの.野球を描くことがアメリカ社会を描くことになる.よくぞ翻訳したと感心する(常盤新平訳).

      

生物の先生に薦める本 (順不同)
             池田博明   

授業のための参考書はたくさんあり,それぞれのところで記している.また,定番の参考書は挙げなかった.
ここで挙げるのは個人的な思い出のあるもので,私自身の掘り出しものといった本です.

番号  著 者  書 名  出版社  分 類
加藤嘉太郎 『家畜の解剖と生理』 (養賢堂) 解剖
 授業に役立つ本である.著者は家畜の解剖の専門家.比較解剖学の本としても貴重である.
ガウゼ 『生存競争』 (思索社)  生態
 ガウゼの法則で著名な古典である.理論と現実との差にこだわる精神が,西欧的なものだと感嘆した.
橋爪大三郎 『はじめての構造主義』 (講談社現代新書) 哲学
 構造主義は数学を援用したものだということを明快に述べたもの.入門書の水準を高めた.
中西準子 『都市の再生と下水道』  (日本評論社) 環境学
都市の再生と下水道 どのようにして環境を守るか,その理論と実践がこの本にある.戦後日本の名著のひとつに挙げたい.この本はいまや入手困難なので、代わりに中西準子『環境リスク学』(日本評論社,2004)を挙げておきたい.
岡田節人 『細胞の社会』 (講談社ブルーパックス)  器官学
 初版が特に傑作(今は入手不能だが).細胞が集って組織を作り,器官を作るという当たり前のことが,細胞培養技術による成果とともに平易に書かれている.
クロー 『遺伝学概説』  (培風館) 遺伝学
 遺伝学の基本から最先端までを独学するのに良い本.集団遺伝学の良い本がなかった時代には特に貴重な本だった.
ウィルマ・ジョージ 『メンデルと遺伝』   (玉川大学出版部) 科学史
 メンデルの時代の遺伝学と彼の伝記,そして仕事が当時の図を盛りこんで,書かれている.啓蒙書として書かれたページ数の少ない本だが,大変に優れたもの.
牧林功・新井一政 『自然観察テクニック』  (日本交通公社出版事業局) 自然
 交通公社のDO LIFE GUIDEシリーズの118巻め.いまや絶版かもしれないが,その志の高さ,レイアウトの良さ,わかりやすさなど,このシリーズには傑作が多かった.平野幸彦さんの『甲虫とつきあう本』も傑作であった.
濱田隆士ほか監修 わくわくウオッチング図鑑10『日本の恐竜』 (学習研究社) 恐竜
日本の恐竜 このシリーズ中,特にこども向けの本とは思えない質の高さだった.いや,こども向けの本だから質が高くないといけないのだと思わされた.
10 浜口哲一 『生き物地図が語る街の自然』 (岩波書店) 自然
 浜口さんの実践は着実に自然学を構築していっている.ナチュリスト必読の本である.拙評あり

     

私が好きな岩波新書
           池田博明
 2008年10月岩波書店PR誌『図書』(11月臨時増刊号)で識者が薦める岩波新書を挙げていた。
 それぞれが専門と関わる3冊をあげているのが興味深い。2008年現在で私も選出してみた。

番号  著 者  書 名  発行年
梅棹忠夫 『モゴール族探検記』 (1956)
 ひらかなの多い文章なのに、決して安易な感じはしない。読みやすくスリリングである。高校の現代国語の教科書に載っていた。図書の特集では三人があげている。
遠山啓 『数学の学び方、教え方』 (1972) 
 量概念をきちんと理解することが、数学を学んだり、教えたりするときにもっとも大切だということと、生活単元学習を批判した名著。最近(2008年)、理科離れに伴って生活単元主義も復活してきた。生活単元学習は一時しのぎである。図書の特集では遠山の『数学入門』をあげている人が二人いたが、こちらのほうが傑作である。
田尻宗昭 『公害摘発最前線』 (1980)
 法律がなくても現在ある法律の運用で社会を改良する行政処理ができることを説いている。法律の遵守ばかり強調される昨今、管理職はこの本の爪の垢でも煎じて飲むがいい。図書の特集では二人があげている。品切れ本。
伊佐山芳郎 『嫌煙権を考える』  (1983)
 ようやく神奈川県でもタバコ規制の条例が成立しそうだ。迅速に実行してほしい。パチンコ屋や酒場は客が減るなどと心配しているとマスコミが無批判な《街角情報》を垂れ流しているが、タバコを規制したってパチンコをしたい人、酒を飲みたい人は、たとえ禁煙でも店にいくに決まっている。勿体をつけて規制に懸念を表明するマスコミの見識のなさにはあきれる。図書の特集では伊佐山の『現代たばこ戦争』を一人があげた。
時実利彦 『脳の話』 (1962) 
 これも高校の現代国語の教科書に載っていた。歴史をふまえて書かれているので古びない。類書が無いため未だに読む価値がある。図書の特集であげた人はいない。
内田義彦 『資本論の世界』  (1966)
 資本論の発想の過程を再現したスリリングな論考で、学問の方法がわかる。図書の特集では内田の『社会認識の歩み』を二人があげている。
渡辺一夫 『フランス・ルネサンス断章』   (1950)
 『フランス・ルネサンスの人々』の下敷きになった著作。発刊当時はもちろん買っていない。復刊で入手した。図書特集では一人があげていた。
中野好夫 『スウィフト考』  (1969)
 岩波の図書に連載中から愛読した名篇。奇人変人の伝記は面白い。図書の特集で挙げた人はいない。
サマーセット・モーム 『世界の十大小説』 (1958-60)
 現在は岩波文庫に収録された。読み巧者モームの紹介はみごとである。図書の特集であげた人はいない。
10 池田博明 『(未刊)』   (200*)
 岩波新書に書いてみたいテーマ『監督・勝新太郎』『森崎東の映画世界』『ハエトリグモ』『モーツァルトのコシ』等


     

私が好きな中公新書
           池田博明 
 2009年5月中央公論社では『中公新書の森』を発刊し、名著を振り返っていた。2009年現在で私も選出してみた。
なんらかの賞を受賞している作品は除いた、『お医者さん』とか、『ゾウの時間、ネズミの時間』など。
           品切れ本が多く、ショック!  

番号  著 者  書 名  発行年
湯川秀樹・梅棹忠夫 『人間にとって科学とはなにか』  (品切) (1967)
 対話集。高校時代に読んだ。科学とは当為の学問ではない、認識の学問であるという言葉が印象深い。既に品切、「思い出の中公新書」アンケートでも誰も挙げていない。
伊藤嘉昭 『アメリカシロヒトリ』  (品切) (1972) 
 昆虫の生活史研究の重要性とその成果を分かりやすく示した好著。その後に伊藤嘉昭が書いたミカンコミバエの侵入を不妊化したオスを利用して防いだ『虫を放して虫を滅ぼす』(1980)もよい。
上野 瞭 『現代の児童文学』 (1972)
 児童文学がおとなも読める広がりと成果をあげていることを明らかにした先駆的な名著。いまでこそ児童文学も現代文学として認められているが、1972年当時の状況は違っていた。
佐藤忠男 『ヌーベルバーグ以後』 (品切) (1971)
 日本映画のヌーベルバーグについて作品を通じて具体的に解説した本。今村昌平の項が特に印象的。
正木進三 『昆虫の生活史と進化』 (品切) (1974) 
 北方のコオロギと南方のコオロギの生活史の違いと進化の歴史を振り返る。この名著も品切れなんですね。
岡田暁生 『西洋音楽史』  (2005)
 単なる好き嫌いでは対話が成立しない。新しい視点で西洋音楽史を構築しようとする野心作。オペラの社会史を描いた岡田『オペラの運命』(サントリー学芸賞受賞作品)も面白い。
  (これから追加) 『**』   ()
  (これから追加) 『**』   ()

私が好きなマンガ作品
           池田博明   

番号  著 者  書 名  出版社  数
さくらももこ 『神のちから』 (小学館) 1巻
神のちから 不条理マンガの傑作である.『ちびまる子ちゃん』の作者のもうひとつの世界.電車で拾って読んだ『ビッグコミック・スピリッツ』に「葬式をしてみた一家の話」が掲載されていて,一読驚嘆した覚えがある.この作品集のどの作品も「変」だが,なんといっても葬式の話のとぼけた味が一番のお薦めである.
鎌田洋次・プランダ村(脚本) 『ハンサム・ウーマン』 (小学館)  5巻
ハンサム・ウーマン  交渉代理人,ネゴシエーターの女性を主人公にした連作短編集.頭がよくて,気はやさしくて,力もちというハートウオーミングな正義の味方の女性が主人公である.娘たちにはこんな風に育ってほしいと思っていた.そして,男性だったらば,理想の姿は宮崎駿が描いた犬版の『名探偵ホームズ』でしょうか.
つげ忠男 『きなこ屋のばあさん』 (晶文社) 1巻
 つげ忠男はつげ義春の弟で,マンガの世界は暗く,寡作である.これは第一短編集だが,なかでも「きなこ屋のばあさん」が傑作である.
つげ義春 『つげ義春集』  (筑摩書房) 1巻
 ガロ時代の傑作が「沼」から始まって,すべて収録されている.「紅い花」「ほんやら洞のべんさん」「通夜」「李さん一家」「チーコ」「ねじ式」「海辺の叙景」など.ちくま文庫で9巻本の全集が発刊中。楽しみです。
岩本久則 『岩本武蔵』 (青林堂)  1巻
 私がもっとも好きなマンガ家である.キートンの喜劇のようなドライな味がある.
水木しげる 『悪魔くん』  (二見書房文庫) 1巻
 私は妖怪の存在を信じていないが,水木しげるの妖怪の世界は大好き.妖怪は世界を豊かにしてくれる.
杉浦茂 『猿飛佐助』   (ベップ出版)(講談社漫画文庫) 1巻
猿飛佐助  私が子供のころにもっとも好きだったマンガである.串にささったダンゴや,佐助の手の描き方もよくマネしたものである.
矢口高雄 『蛍雪時代』  (講談社文庫) 5巻
 秋田県の寒村で育った矢口高雄の中学生時代を中心に描いた連作形式の自叙伝.講談社文庫で出版されている『ボクの学校は山と川』も矢口の真骨頂が示されている.
ますむらひろし 『アタゴオル』 (メディア・ファクトリー) 10巻
 ますむらひろしは山形県出身.不思議な親近感がある.ますむらの創造したアタゴオルでは,ボーヨーとしたネコの世界が展開される.また,宮沢賢治の童話をネコで描いた作品では,『風の又三郎』がベスト.『銀河鉄道の夜』がアニメ化されたが,アタゴオル・ワールドとしては『風の又三郎』の方が良かったのでは.
10 諸星大二郎 『栞と紙魚子の生首事件』   (朝日ソノラマ) 4巻
栞と紙魚子 1995年から少女ホラー雑誌「ネムキ」に書かれた女子高校生「栞と紙魚子」シリーズを集めた本.表題作は生首を拾ってしまった栞が古本屋の紙魚子の持っていた本「生首の飼い方」を見て,生首を飼うはめになるというお話.他の諸篇も推して知るべし.妖怪に会っても動じないこのコンビは好評で連作『青い魚』『殺戮詩集』『夜の魚』『何かがやってくる』と続いている. 


     

   ▼私の好きな言葉 Anthology 


猫のゆりかご オーウェル評論集 フランスルネサンスの人々 誰だハックにいちゃもんつけるのは
天のろくろ ポロポロ ソロモンの指環 TN君の伝記
神のちから 猿飛佐助 ハンサム・ウーマン
栞と紙魚子 メカスの映画日記
冬の神話 都市の再生と下水道 ちょんまげ手まり歌 日本宝島
感性の変革 苦海浄土 あした天気にしておくれ(講談社文庫) 目こぼし歌こぼし
日本の恐竜


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My Favorite Song 私が好きな日本の流行歌
                 池田博明    2008年5月5日

番号  歌    歌 手  作 詞 者  作 曲 者
なごり雪 イルカ 伊勢正三 伊勢正三
歌詞が美しい。語る言葉がのぼり調子の歌に変わってゆく過程が見事である。“去年よりずっときれいになった”という繰り返しも美しい。 
夕 立 井上陽水 井上陽水 井上陽水
追い立てられるような切迫感がたまらない。「青空ひとりきり」など『二色の独楽』に納められたどの曲も好き
綱 渡 り 山アハコ 山アハコ 山アハコ
LP『綱渡り』は名作だった。孤独な歌、孤立した心の歌である。パセティックな響きが心を打つ。
舟 唄 八代亜紀 阿久 悠 浜圭介
「お酒はぬるめの癇がいい」という決め付けが素晴らしい。勝新も八代亜紀が大好きだったらしい。勝新のカルトTVドラマ『警視K』には「雨の慕情」がBGMとしてしょっちゅう流れていた。この唄も傑作。
しあわせ芝居 桜田淳子 中島みゆき 中島みゆき
「わたし、みんな気付いてしまった。しあわせ芝居の舞台裏」という認識は新しい哲学である。
聖母たちのララバイ 岩崎宏美 山川啓介 木森敏之,John Scott
岩崎宏美ほど歌のうまい歌手は他にいない。「思秋期」「ロマンス」なども傑作。
愚 図 研 ナオコ 阿木耀子 宇崎竜童
阿木・宇崎コンビには『横須賀ストーリー』など山口百恵の歌った名曲があるが、研ナオコの「愚図」はせつない佳曲である。
シューベルツ 北山修 端田宣彦
北山修がビートルズのジョン・レノンのように見えていた時期があった。なぜなら彼の書く詩は時代を捉えていたからだ。「悲しくてやりきれない」「青年は荒野をめざす」など。「風」はフォーク・クルセィダーズが解散した直後のヒットだったが、後ろをふりかえってもただ風が吹いているだけという虚無的な風景には真実があった。
浅草の唄 藤山一郎 サトウハチロー 万城目正
森崎東監督の映画『喜劇・女売り出します』(松竹)で、浅草を背景に流れる印象的な歌。昭和22年のヒット曲「強いばかりが男じゃないと、いつか教えてくれた人」。
10 ええねん ウルフルズ トータス松本 トータス松本
すべてを肯定する勢いのよさがある。ビートルズの『イエロー・サブマリン』では、「NO」の国が「YES」の国に変わることが主題だった。

  

 My Favorite Child's Song 私が好きな童謡   池田博明    2008年5月5日

        原則的に、作者一篇として選出しました。

番号  著 者  歌いだし  作 詞 者  作 曲 者
かわいいかくれんぼ ヒヨコがね、お庭で サトウハチロー 中田喜直
戦後日本の童謡の最高傑作。この童謡には、「情景」があり、「物語」があり、「変化」がある。このコンビには他にも「わらいかわせみにに話すなよ」「ちいさい秋みつけた」などの傑作がある。
サッちゃん サッちゃんはね、サチコって 阪田寛夫 大中恩
この詩は話し言葉で書かれていて歌になりにくいリズムである。それを見事に歌にしてしまった大中恩、天才の仕事である。
あの町この町 あの町この町 日が暮れる 野口雨情 中山晋平
次第に日が暮れていく情景を描いた不思議な作品。野口雨情以外の誰が遊びから帰って星が出るほど暗くなるまでを童謡にしようと考えるだろうか。野口・中山コンビには名作「シャボン玉」「黄金虫(こがねむし)」もある。
おかあさん おかあさん、おかあさん 西條八十 中山晋平
ただ母親に呼びかけるだけの言葉が歌になっている信じられない傑作。西條・中山コンビには名作「肩たたき」(かあさん、お肩をたたきましょ)もある。結城よしを作詞・山口保治作曲の「ナイショ話」も同じ系統の傑作である。
夕 日 ぎんぎん ぎらぎら 葛原しげる 室崎琴月
夕日を「ぎんぎんぎらぎら」と表現した鮮やかさは比べものにならないほどの表現力である。
春よ来い 春よ来い、早く来い 相馬御風 弘田龍太郎
春が待ちきれない思いを歌った傑作。春を歌った童謡には「どこかで春が」「春の小川」など傑作が多い。
汽車ポッポ お山のなかゆく 汽車ポッポ 本居長世 本居長世
歌詞が走り出したら止まらない汽車の疾走感をよく表現している。本居長世作詞・作曲の勢いのある大傑作。
おつかいありさん あんまりいそいで こっつんこ 関根栄一 団伊玖磨
団伊玖磨の童謡はまどみちお作詞の「ぞうさん」が有名で3拍子の異色童謡である。リズム感のある「おつかいありさん」も捨てがたい。
からすの赤ちゃん からすの赤ちゃん なぜ泣くの 海沼実 海沼実
海沼実には優しい童謡が多い。「やさしいおかあさま」「里の秋」「夢のお馬車」「みかんの花咲く丘」「蛙の笛」、リズミックな名曲「おさるのかごや」「あの子はたあれ」「ちんから峠」「見てござる」など。
10 う み 海は 広いな 大きいな 林柳波 井上武士
文部省唱歌には自然の情景を歌った傑作があった。他にも「月」(出た 出た 月が)がある。
11 さんぽ 歩こう 歩こう わたしは元気 中川李枝子 久石譲
映画『となりのトトロ』のオープニング・テーマである。エンディング・テーマは「となりのトトロ」(宮崎駿作詞、久石譲作曲)。どちらもリズムや音を取るのが難しいと思われるのだが、現代の子は難なく耳から覚えて上手に歌う。


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