2002-03シーズンの木星 目次

Last Updated 09/26/03


概況

2002-03シーズンの木星面は、14年ぶりとなる北温帯縞(NTB)の淡化を初めとして、興味深い現象がいくつか観測されました。

RS後方のSEBは、2001年1月以降間欠的な白斑活動が見られ、そのたびに活動域(RS後方の明帯)は後方への拡大を繰り返していましたが、2002年12月に、この領域のさらに後方で別な白斑群の活動が始まり注目されました。 活動は12月14日に体系II:145°付近で始まりましたが、私は26日に初めて捉え、28日には大型の明るい白斑がSEBnを分断している様子を見ることができました。 白斑群は従来の活動域を押し分けながら徐々に前方に拡大し、1月末頃にはRS付近に達したようです。 2月はRSから発生源までが新しい白斑群で埋められ、大変活動的な様相となっていました。 白斑群の活動は2月中頃まで続いたようですが、その後供給が途絶えると活動域は急速に縮小し、3月末には発生以前の状態に戻ってしまいました。

私の16cmではよくわかりませんでしたが、高解像度の画像などで見ると、今回の白斑群は従来の活動域とは一体化せず、SEBnの暗塊やSEBZを斜めに横切るstreakで隔てられていることが多かったため、独立したmid-SEB outbreakとみなすことができます。 しかし、RS後方の定常的活動域自身は、後端が10〜20°後方へジャンプして活性化することが知られていますので、発生源が従来の活動域のわずか20〜30°後方に過ぎない今回の活動は微妙なところにあります。 今回の活動を独立したmid-SEB outbreakとした場合、過去のRS後方の白斑活動を見直す必要があるだろうと私は考えています。

NTBが1989年以来、実に14年ぶりに淡化しました。 近年のNTBは常に濃く安定なベルトでしたが、2002年11月後半に体系II:100°台で淡化が始まり、急速に全周に波及して、12月末には後述するCurrent-Bの暗部を除き、痕跡状のstreakが残るのみとなってしまいました。 かつてのNTBは、木星面で最速のジェットストリームであるCurrent-Cの活動に合わせて5〜10年周期で濃化と淡化を繰返していましたが、1990年以降は活動パターンが変わってしまい、安定な濃いベルトとなって、Current-Cの活動が継続的に見られるようになっています。 今回の淡化は、活動パターンが変化した1990年以降、初めてということになります。

淡化したNTBでは、2つの顕著なベルトの断片が残り注目されました。 これらは当初、3つの短い暗部でしたが、2003年1月初めに後方の2つが合体し、長さ約10°の暗斑と約25°のstreakという組合せになりました。 これらの暗部は、平均-1.4°/dayという、体系IIに対してかなり速い前進運動を示しました。 NTBで体系IとIIの中間の値を示す帯流としてはCurrent-Bが知られていますが、上記のドリフトは過去のCurrent-Bの平均(9時間53分8秒)と比べると1分以上遅くなっています。 しかし、この緯度はNTB南縁のCurrent-Cと北緯31°付近の遅いCurrent-A(9h56m)に挟まれた速度勾配の大きな場所に当っており、体系IとIIの中間の値を示す模様には、Current-Bを適用するのが妥当と思われます。 Current-Bは、かつてCurrent-Cの活動の翌年などにNTB断片の前後端で観測されていましたが、過去8回記録されているだけで、1945年以降は1例を除き観測されていません。 今回の出現は大変珍しいと言えますが、BAAのRogers氏によれば、1990年代以降の高解像度の画像を精査すると、NTBの微小なrift模様でこの帯流がしばしば記録されているとのことです。

Current-Bの暗部は2003年4月から5月にかけて相次いで淡化消失してしまい、NTBは全周で淡化を完了しました。 今後は、次のCurrent-Cの出現に注意を払わなければならないでしょう。

RSは体系II:85°付近にあり、ゆっくりとした後退運動を続けています。 シーズン初めや暗斑の衝突により南部にアーチが発達することもありましたが、概ね楕円形の本体が見られ、オレンジ色の色調が目立っていました。

BAはシーズンを通して輝度が低く不明瞭で、特に2003年3月頃には極めて不明瞭になりましたが、不思議なことに私の16cmではぼんやりと明るく見られることが度々ありました。 小口径では微小な構造がわからない分、ある範囲を持ったコントラストや色の違いはむしろ捉えやすいのかもしれません。 BAの直後に付随するSTBの短い断片は、縮小して極めて濃い暗斑となり、春先はこちらの方が目立っていました。

近年、SEB南縁では高気圧性の白斑や暗斑とRSとの衝突が度々観測されていて、今期もSEBsの暗斑との衝突が注目されましたが、私の観測ではほとんど捉えることができませんでした。

NEBは2000年から続いていた拡幅が終息し、ひと回り細くなっています。 ベルト北縁には今期も顕著なbargeが観測されましたが、小白斑(notch)はベルト北部が淡化してNTrZに露出したため、ほとんど見ることができなくなりました。 それでも、1997年から永続しているForm-Zと呼ばれる白斑は、今シーズンはNTrZに広がる大型の白斑として見ることができました。

北半球では、昨シーズンのNNTBに続きNTBも淡化したため、コントラストが低くなっています。


木星の暦(UT)

2002年07月20日 01時19分
西矩 2002年11月09日 17時06分
2003年02月02日 09時12分
東矩 2003年04月29日 19時32分
2003年08月22日 10時58分

月毎の観測

観測日数  スケッチ  CMT 
2002年8月の観測 3  3  2 
2002年9月の観測 6  6  7 
2002年10月の観測12  15  36 
2002年11月の観測 9  14  28 
2002年12月の観測13  29 105 
2003年1月の観測 16  33 145 
2003年2月の観測 12  25 114 
2003年3月の観測 16  26 111 
2003年4月の観測 9  13  49 
2003年5月の観測 9  13  39 
2003年6月の観測 4  4  8 
合計 109 181 644 

展開図

全面展開図 2002年1月6日〜8日

ドリフトチャート

大赤斑と永続白斑などのドリフトチャート
SEBsの暗斑やSTrZの模様のドリフトチャート
EZのfestoonなどのドリフトチャート
EZsの模様のドリフトチャート
NEBnのbargeと小白斑のドリフトチャート
NTBとNNTBの模様のドリフトチャート

自転周期

主な模様の自転周期

観測記録

スケッチのリスト
CMTのリスト

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