球磨川ラフティング体験記


1994年、夏の最後の行事として、日本3代急流の一つ熊本県球磨川に、
ラフティングツアーに出かけることにした。

本題の前に、少々語句説明を...
ラフティング: 丈夫なゴムボートに乗り,激流下りを行なう遊びのこと。
沈: 船(ボートおよびカヌーを含む)が沈没すること。
瀬: 川のなかで、川底の傾斜や落差により,流れが急になり波打ってる所。 その急流度は1級〜6級までに区分けされ、数値が上がる程、 急流となり波(ホワイトウォーター)も荒くなるため,沈しやすい。


今回辿ったコースは, 熊本県人吉市にある中川原公園から球泉洞までの全長約18Kmで, カヌーだと4時間程度,ボートだと休憩込みで6時間位かかる工程である。 その間に,熊太郎,高曽,二俣,修理, 網場の5大瀬を含む48瀬と呼ばれるホワイトウォーターが続くのだ。 我々は、これをボート2台(ラフト1号:3人,ラフト2号:4人)で, 征服しようとした。ちなみに私が乗船したのはラフト2号。
前夜祭(中川原公園)
前日に出発口となる中川原公園まで移動し、この日の朝全員で中川原公園を出発。 まず昼飯の目的地である渡(地名)まで行くことにする。 出発して間もなく早速トラブル発生、 ラフト1号の浮袋の部分に小さな穴が空いており、 そこから空気が洩れているようである。 これくらいでラフティングを中止するわけにはいかないため、ラフト1号の面々は, 時折ボートの中で,セッセと空気入れを踏み, ボートの空気を保ちつつのラフティングとなった。

渡までは約2時間の航路で,その間は初心者向きの緩やかな瀬が続くため,
「なんだなんだ。こんなもんかー」
とほざきつつ、 沿道の通行人や時折通る納涼列車の乗客に笑顔で手を振ったり, 球磨川名物川下り船(2500円)に乗ったババアの声援に, 歓声と笑顔で答えてやったりと,余裕のラフティングを楽しんでいた。 しかし、この余裕も渡に着く一歩手前の熊太郎の瀬に入るやいなや, 一辺に吹きとんでしまうことになるのだ。

この熊太郎の瀬は,3級の瀬で,見た目たいしたことなさそうだが, いざその瀬に入り込むと,波の起伏が激しい。 それに川の真中には、どでかい岩がどっかと腰を据えているため、 これを避け、なおかつ鮎釣り師の竿をよけながら、通らなければいけないのである。 無残にも我々のボート(ラフト2号)は, この波と岩の強力タッグチームにものの見事に横転させられてしまったのである。 もう少し詳しく状況を書くと,川のほぼ中央部に大きな岩があり, そこにボートの側部からぶち当たり,バランスを崩したところで一人落ち, 次の波を後方から受け,ボートがさらに傾いた瞬間, 残りのメンバ全員が川の中に放り投げ出されたのである。 原因は,いくつか考えられる。 それまでの瀬が穏やかだったために完全になめてかかって臨んでしまったこと、 右岸にたむろする鮎釣り師に気を使い過ぎ、 岩のある真中のコースをとってしまったこと、 岩が目前に迫るまで,岩に気づかなかったたことなどである。 実際に体験するとわかるが,ボートにしろカヌーにしろ, 水面と目線が近いため,前方の様子や水面の落差が判断しずらく、 状況判断だけには常に気を配る必要があるのである。

こういう激流で沈してしまうと, 波の勢いがすさまじいため落ちるや否や川底まで一気に引き込まれて行く。 私はこの瞬間,「これが溺れるということかー」と, 水中でもがきつつも生まれて初めての感覚を冷静に味わった。 水中に何秒いたか正確には覚えていないが、 下に引かれていく力は強烈でとても自分一人の力では浮き上がれそうになかった。 が、予備知識として、ライフジャケットを着けている場合は、 ``慌てず自然に浮き上がるのを待てばよい''の言葉を信じ、 じっと浮き上がるのを待った。 すると激流の和らいだところまで辿り着いたのであろう、 気がつくといつのまにかプッカリと水面に顔を出していた。 こういう時のライフジャケットの力は偉大であり頼りになる代物である。
ところでこの沈による被害はというと, 私の場合たばこが水で駄目になってしまったことと, 最初に顔が水面に出た際に不意に襲った水を飲んでしまい, その日一日がムセムセ状態になってしまったぐらいだったのだが, 別の隊員は、持ってきた水中カメラをボートの底に置いており, 不幸にもそれを掴む間もなく,沈してしまったのである。 勿論水中カメラは,いづこも知れぬ川底へ消え去り, それまでの撮っていた写真もみなパー、もったいない... (写真じゃなく,カメラが。だから写真も少ない) 諦め切れないその隊員は,泳ぎが得意なこともあって, 「次の日に潜って探す」と言いだし,それならと次の日に皆で行ってみたものの, 昨日の大雨のため水が極度に汚れており,とても潜って探せる状況 ではなく結局諦めた。

沈した隊員も全員無事に岸にたどり着き,渡で昼食を取った後, 再びラフティング開始した。 途中,難所の一つ二俣の瀬(4級)では, 我々のボートは様子を見るため,ラフト1号の後に回ったのだが, 後ろから見ていると思わずビビってしまった。 というのも,前方のボートが荒波に飲まれ一瞬消えたかと思うと, ボートの先端がほぼ直角に浮き上がり, それと同時にボートの前方にいた隊員の足が,いきよい良く天に突き出し, 全員ボートの後方に押しやられたのだ。
「おっおっ、遂にやつらもやったか(沈したか)?」
と,ラフト2号の面々は歓喜したのだが, 残念ながら?それはまぬがれたようで,一同ちょっとがっくりする。 それを見た我々は,恐怖心にかられながらも慎重に二俣の瀬に臨み, 無事何事もなく通過した。 やっぱりこういう場合は、状況を見極めた上での心構えが一番重要のようである。
ちなみに、私は今回で2度目のラフティングとなり, 昨年の四万十川でのスリルを味わいたくて参加したのだが, そのスリル度数は,四万十川の比じゃなかった。 さすが,日本の三代急流と言われるだけあって,そのスリルといったら, 遊園地のジェットコースターやウォーターシュートなんて,目じゃない。 ジェットコースターを初めとする遊園地の乗り物は、 乗る時点からある程度先が読めるし予備知識も十分に入っているが、 ラフティングの場合、 その場に行ってみなければわからないという未知の世界のスリルがある。 これがおもしろいのだ。 気軽に楽しむなら四万十川, ラフティングの醍醐味を思う存分味わうなら球磨川というところだろうか。

これは四万十川ラフティングの写真
(前記のとおり今回の写真はない)

おもしろいことを目撃したのは、急流ばかりではない。 途中,波のない淀みにさしかかった時,ラフト1号のメンバ3人は, スピードを上げるためか,漕ぐ位置をかえ,一人は前方で視界確認, 残りの2人が両手にウォールを持ち漕ぎ始めたのだが、 必死に漕いでる割には全然前に進んでいないように見えるのだ。 傍目から見ていてもなんか全体の雰囲気がおかしい。 よーく見ると,前方で漕いでいた隊員の漕ぐ方向が逆なのである。 つまりそやつは皆と逆の上流に向かって漕いでたわけで、進むわけないのである。 人間いつ何時奇妙な行動をしでかすかわからないものだ。
そんなこんなで何とか全員無事にゴールにたどりついたのだが、 ここで最後の波乱が待っていた。 ゴールへは我々のラフト2号が先に着いたのだが, 後からきたラフト1号を見ると,何か様子が変なのである。 前の2人は普通に漕いでいるが、 後ろの一人は前方の袋にしがみ付くようにしている。 よくよく見ると,ボートの後ろ半分がしぼんでなくなっているではないか。 後で話しを聞くと、最後の瀬で岩にぶつかったらしく、 ボートの後方部(我々の乗ったボートは前方と後方に空気袋が2つ付いており, どちらか片方が裂けても一応大丈夫)が破裂したという。 幸いゴール間近であったため,ラフティングを中止することはなかったが, 最後までハラハラドキドキさせる川下りとなった。 この日は午後から本格的な雨に見舞われ,夏とはいえ日も陰った夕方は、 ビショ濡れ状態とあいまり、寒いことこの上ない。 正直なところラフティング後半は、早くたどり着きたい一心だった。 やっぱり水遊びは,天気の良い日に限る。
追記
今回は,昨年の四万十川の参集が良かったこともあり, 全隊員に参加を募ったのだが,危険を未然に察知した(女の勘か?)のか、 女性隊員は一人も参加していなかった。 結果は大正解だったかもしれない。 もし女性が参加し、沈したボートに乗っていたら... 大パニックとなっていただろう。
しかし女性の皆さん、恐がることはありません。 通常ボートの安定度は抜群で,めったに沈することはないのです。 (今回は,沈する要素があまりに重なってしまったということ) それに破裂したのも、ボートが古く手入れもろくにしていなかったためで、 下記の極意を守り望めば,おもしろいこと間違いなし。 興味のある方は、ぜひチャレンジしてみて下さい.

ボートで川下りする場合の極意

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