容疑者Xの献身 (文春文庫)  [bk1]  [Amazon]
容疑者Xの献身 bk1 天才数学者でありながら、高校教師として不遇な日々を送っていた石神は、一人娘と暮らす隣人の花岡靖子に密かな想いを寄せていた。その靖子は、別れた夫・富樫に復縁を迫られ、娘と共に絞殺してしまう。そのことを知った石神は二人を救うために完全犯罪を企てる。しかし、その事件を担当した刑事の一人が草薙だったことから、靖子の近くに石神がいることがかつての親友であった物理学者・湯川学に伝わってしまう。純粋に友人として石神に会いに行った湯川は、石神の靖子への想いに気付いてしまい、そのことをきっかけに石神の計画にも狂いが生じ始める。

ガリレオシリーズ第3弾、初の長編。第134回直木賞受賞作。

どうしても崩せないアリバイ。しかし、視点を変えた瞬間に一気に謎が解けその真相を現わす。そこには愛する者のために人生を捧げようとした男の凄まじいまでの覚悟があった。
ガリレオシリーズの警察は道化としては書かれていない。にもかかわらず、どうしても靖子の犯罪を立証できない。読んでいるこちらも「何故アリバイが崩せない。石神はどんなトリックを使ったのか」と悩みながら読む。読者もまた、石神のミスリードにかかかるのだ。真相が明らかになった時、そこに在った犯罪は確かに「献身」といえるものだった。
「そんな馬鹿な」と言いたくなるが、そうさせない石神の想いがある。その想いには背筋が凍るものがある。最後に花岡親子が選んだ答えは、果たして石神に酬いるものだったのか、どうか。石神は花岡親子の心だけは答えを出せなかったのだろう。
さすが東野圭吾、一気に読ませられました。
ゲームの名は誘拐 (集英社文庫)  [bk1]→
オンライン書店ビーケーワン:ゲームの名は誘拐 敏腕広告プランナー・佐久間は、クライアントの重役・葛城にプロジェクトを潰された。酒が入ったまま何とはなしに葛城邸に出向いた佐久間は、家出してきた葛城の娘と出会う。父を嫌っているという娘と佐久間は共謀し、”ゲームの達人”を自称する葛城に勝負を挑む。
娘を人質とした狂言誘拐。携帯、インターネットを駆使し、身代金の強奪をたくらむ。
犯人側のみの視点で描かれるミステリー。

狂言誘拐が始まってからは、一気にラストまで読めた。緊張感ある展開に、飽きはこない。さすが東野圭吾。少し、ラストペースダウンした感じはあるが、充分楽しめた。
しかし、完璧を求める佐久間なら、樹理が本当に樹理か、写真を手に入れて確認してしかるべきだと思うのだが……。計画を実行する前にね。
名探偵の掟 (講談社文庫)  [bk1]→
名探偵・天下一大五郎が、密室や時間表トリックなど、12の難事件に挑む……のだけれど(笑)
本格推理の暗黙の内に決められてる「お約束」を鮮やかに「笑って」みせた一冊。しかし、小説から離れての天下一や大河原の本格のお約束へのコメントは、何気にずばっと突いてくるかも。だけど、笑える。どうしようもなく。なんだってんだ、まったく(笑)
それぞれの話の結末だが……やっぱり本格で「意外」ってのを考えるとこうなっちゃうのかなあ(笑) これを見ると本格のトリックってそれなりに普通なのだろうか(笑)
名探偵の呪縛 (講談社文庫)  [bk1]→
作家である「私」は資料探しに訪れた図書館で、いつのまにか別世界に迷い込み、探偵天下一となっていた。「本格推理」という概念の存在しないこの街をつくったのは何者か。
「本格推理」に対する作者の思いってところか? 天下一がああいったことになっちゃってたということは、「名探偵の掟」のラストから通じているのかね。あのあたりを読んでまっさきに思ったのはそれだったのだけれど。「結局『名探偵の掟』で引き金をひいいちまったのかな、と」
「掟」は本格推理のお約束を笑うことで考えるもので、「呪縛」は本格推理の世界を考えるもの、というやつか?……月村のセリフとかね。
はたして、東野圭吾は「本格推理」へと立ち戻るのか?
卒業 雪月花殺人ゲーム (講談社文庫)  [bk1]→
七人の大学四年生が秋を迎え、就職に忙しく動き回りながらも残された大学生活を過ごしている中、七人の内の一人・祥子が死んだ。自殺か他殺かがはっきりしないなか、加賀恭一郎らは祥子の死の真相を探る。しかし、仲間で開いたお茶の席で第二の事件が起きる。

はあ……何というか、切ない感じのラストだ。なんと作品名にふさわしいラストシーンなんだろう。「雪月花殺人ゲーム」ちうことでHowdunitも問題になってるわけだけど、やはり一番のテーマはWhydunitだろう。そこらへんの話のまとめ方、というか語り方はさすがと思わせる。読了したあとに、このタイトルが心に染みてくる感じである。
探偵役の加賀恭一郎が格好良いです。いいですねえ。彼のセリフはなかなかいい感じのが多いのですが、その中でも微妙に気に入ったかなというのは「卒業まで……か」「まるで何かいいことがあるみたいに思っているんだな。卒業したら過去が消えるとでも思っているのかい?」(P289)ですかね……。
眠りの森 (講談社文庫)  [bk1]→
バレエ団の事務所に侵入した男が、その場に居合わせたバレリーナによって殺された。正当防衛ということだったが、調べるにつれて男の侵入目的が不明になり、さらにはバレエ団内で殺人事件が起きる。バレリーナの一人、浅岡未緒に魅かれながらも、加賀は真相を突きとめようとする。

かっ、加賀〜!! これはミステリでありますが、いわゆる一つのラブストーリーですねっっっっ。うへぇ(何故か赤面/笑)
なんといいますか、殺人がどうこうと言うよりは、人間ドラマのほうに注目……いや、加賀と未緒に注目!!でしょうか。「卒業」で探偵役をつとめた加賀恭一郎が本庁捜査一課の刑事となって登場します。一度教師になり、刑事に転職した三十路過ぎの加賀はなんだか人間丸くなったような……。
ラストシーンがすばらしい……「卒業」のラストもいいですが、これまたこの「眠りの森」のラストも切なく、いろいろその先を思わずにはいられません。加賀のその後が気になるっ!!
パラレルワールド・ラブストーリー (中央公論社)  [bk1]→
総合コンピューターメーカーで仮装現実の研究をする敦賀崇史は、恋人の麻由子と同棲している。しかし、ある日崇史は夢を見たことをきっかけに、今自分のいる日常に違和感を感じはじめた。麻由子は、自分ではなく親友の智彦の恋人ではなかったか……。少しずつ思い出す「記憶」に苦しみながらも崇史の辿り着いた真相とは。

ミステリであり、ラブストーリィ。問題はやはり、真相よりは、その中での人々のありよう。っつーか、それの書かれてない話は読んでもアレですがな。
崇史の二つの話が交互に語られる。こういうふうに書かれると先が気になるんだよなぁ(笑) 三人の関係が最終的にはどう落ちついたかは書かれていない。ラストシーンはなんともしんみりしている。好きなタイプの話なんだけどね。自分を「弱い」と言う崇史を、どう思うか……。少なくとも私にはその「弱さ」を責めるだけの自信はない。
文庫版は講談社より出版。その解説は新井素子先生。
変身 (講談社文庫)  [bk1]→
平凡な青年・成瀬純一は強盗の現場に不幸にも居合わせてしまい、子供をかばった結果、頭を撃たれた。世界初の脳移植患者となった純一。身体は順調に回復していくが、純一は己に起きている恐るべき異変に気づいた。自我崩壊の恐怖に駆られた純一は、ドナーを突き止めようとする。

自分が「自分」ではない「誰か」に変っていくのは果たしてどれほどの恐怖なのだろうか。今日の自分は明らかに昨日の自分とは別。それが自分だとは信じられない。そういった状況はどれほどの恐怖なのか。作中で語られる「足跡」の話は確かに考えさせられるものがある。今日の自分になるまでの足跡を振り返れる、それが確かに自分のものだと思える。それが生きているということか、どうか。
一人称、及びに文体の変化にも注目。「純一」を失い「京極」に支配されていくさまがリアルに感じ取れるかも。ただストーリーにひねりはないんだよね……。

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