ウルチモ・トルッコ 犯人はあなただ! (講談社ノベルス)  [bk1] [Amazon]
ウルチモ・トルッコ bk1 新聞に連載小説を発表している“私”のもとに、香坂誠一という男から一通の手紙が届く。ミステリにおける<意外な犯人>モノのトリック案を高値で買ってほしいと書かれていたその手紙にはしかし、差出人の連絡先が書いていなかった。
香坂が「命と引き換えにしても惜しくない」と言うトリックとは?

第36回メフィスト賞受賞作。
納得するかどうかはさておき、確かにこの作品のこの設定でこの作品を読み進めれば、最後には「私が犯人(の一人)だ」と思うラストになっている。
しかし、そのあたりの仕掛けを明らかにする部分において、カッコ書きで該当箇所を表記するというやり方が正直気分を萎えさせた。親切設計なのかもしれないが、どこがそれだったかを探すのも楽しみでは、というか、やりたい奴にやらせればいいのではという感じ。
物語としては刑事が出てきたあたりからかなり面白かっただけに、そこでテンションが下がっちゃってちょっと惜しい感じのものがあった。
メフィスト賞らしい作品といえば、らしい。
エコール・ド・パリ殺人事件 レザルティスト・モウディ (講談社ノベルス)  [bk1] [Amazon]
エコール・ド・パリ殺人事件 bk1 エコール・ド・パリの画家を支持し、ブームを作り上げた有名画廊の社長が、自宅で遺体となって発見されるが、部屋は密室、貴重な絵画は手付かずのままだった。現場に面した庭には部屋から外へ向かう足跡があり、犯人は窓から逃げたと思われたが、肝心の窓は内側から鍵がかけられていた。
海埜刑事は上司や部下の言動に苦労しながら捜査を進めるが、なかなか事態は解明されない。たまたま帰国した甥の瞬一郎の知識も借りるが……。

「事実上の犯人」の動機と凶器が個人的になかなかの好み。被害者が最後にオペラを流す狙いと演出も、心理的には納得できるかな。要するに躊躇いを押さえ、気分を乗せるためと考えていいのだよね?
しかし、解決編のテンションが上がりきらず、どうも読んでいるほうもフラットなテンションに。うーん、勿体無い。

前半は、オタク、お笑い傾向にある上司や部下に海野が胃を痛める話かと思いましたがね(笑)
トスカの接吻 オペラ・ミステリオーザ (講談社ノベルス)  [bk1] [Amazon]
トスカの接吻 bk1 プッチーニ作曲「トスカ」上演中、いつの間にか本物にすりかえられていたナイフによって、悪役の男優が死亡した。ナイフを振りかざした女優が真犯人とは思えず、しかし事件前後、誰も近付かなかったと証言された舞台は<開かれた密室>となっていた。罠を仕掛けたのは誰か?
捜査が難航する中、関係者に第二の犠牲者が……。

今回のお題はオペラ「トスカ」
オペラの薀蓄は楽しく、一度観てみたいなと思うほどだった。そして、物語の新解釈は私も大いに楽しいと思う。2〜3度楽しめるというのも良い。
一方、冒頭のほうでの海埜の関係者への事情聴取での台詞の数々が鼻についた。リアリティを追求したことを犯罪に利用されたことに、悪いとは思わないのか――と。正直、こんな的外れな発言は海埜が物語や舞台を楽しまない立場の人間だからだとしても、主人公側の人間の発言として書かれることにモヤモヤした。まぁ、モヤモヤさせるのが狙いかもしれないけど。

解決編は今回もテンションが上がりきらず。さすがに3作目ともなると、これがこの作者の色なのだろうかと思うようになってきた。トリックは『エコール〜』のほうが好みでしたが。
花窗玻璃 シャガールの黙示 (講談社ノベルス)  [bk1] [Amazon]
花窗玻璃 シャガールの黙示 bk1 仏・ランス大聖堂から男性が転落死した。地上81.5mにある塔は、出入ができない密室状態で、警察は自殺と断定。その半年後、聖堂内で浮浪者が死体となって発見される。二人とも、死の直前にシャガールのステンドグラスを見ていたというが……。
フランスに遊学していた神泉寺瞬一郎はその話を聞いて興味を示すが。

瞬一郎がフランス滞在中に知った事件を手記としてまとめたものを、伯父の海埜警部補が読む、という形をとっている。
漢字表記が凄い。正直ここまでこだわる理由がわかりかねるのだが、まぁ、よく書いたなという気もする。

二つの死についての真相やトリックよりも、ラストで語られる一枚の絵についてのエピソードのほうがインパクトがあった。やはり、こうした芸術がらみのミステリだと、「その絵に隠された真相」みたいなもののほうが魅せられる。

伏線が実は上手いと思うのだが、この作家の特徴と言っていいのか悪いのか……地味なのでそれほどパッとしないのである。堅実といえばいいのか?
個人的には、最終章を読んだ後の瞬一郎と海埜が書かれていない構成は好きだ。
五声のリチェルカーレ (創元推理文庫)  [bk1] [Amazon]
五声のリチェルカーレ bk1 昆虫好きの大人しい少年による殺人。犯行を認めるものの、その動機を語ろうとはしない少年に、家裁調査官の森本は困惑する。
少年のために事件の背景を探ろうとする森本だが、接見を通してようやく得たのは、「生きていたから殺した」という言葉だった。少年の真意は果たして。
他、短編『シンリガクの実験』収録。

ハードボイルドな感じで回想と調査を交互に示し、やがて明らかになる真相――ってやつかと思ったら、がっつり叙述トリックだった。思い切りだまされ、P220までいって、思わず前の方を確認しに戻った。

地味に上手い一冊。
もう少し長くして書き込んだら、もっと読み応えのある長編作品となったのではないかと思われる。
薄っぺらな少年の自意識が痛々しい。

著者の作品ではおなじみの芸術等に関する薀蓄は、今回は「バッハ」と「擬態」と二つのネタがあるためか量が控えめな印象。もっとたっぷり薀蓄を披露して事件に絡めてきたらもっと好みだったかもしれない。特にバッハは個人的に好きなので、薀蓄が多かったら嬉しい。
ジークフリートの剣 (講談社)  [bk1] [Amazon]
ドイツ・バイロイト音楽祭で『ニーベルングの指環』新演出上演のジークフリート役に、日本人のテノール歌手・藤枝和行が選ばれ音楽界を沸かせる。さらに、その婚約者も同じ舞台に立つということでいっそう話題になっていた。
しかし、舞台を目前に婚約者は鉄道事故により死亡。喪失感にさいなまれつつも藤枝は婚約者の骨と共に舞台に臨むが、ある青年の登場が事態を一変させる。

いつ事件が起きるの? と思いながら読んでいたら既に事件は起きていたし、きっちり伏線も配置されていたしでびっくりした。
オペラに関しても面白かった。特に後半。本番が始まってからは圧巻だった。凄いなぁ。
中盤少し冗長な印象も受けたが、オペラの筋立てになぞらえるように藤枝が怖れを知るまでの過程としてならば、なくてはならないものなのかとも思う。

ある意味凄い騙された一冊。終盤はまさにドラマティックな展開であった。

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