アイルランドの薔薇  (光文社文庫)  [bk1] [Amazon]
アイルランドの薔薇 bk1 南北アイルランドの統一を謳う武装勢力NCF。和平反対派の副議長の殺害を殺し屋「ブッシュミルズ」に依頼したNCF幹部らだが、取引のため訪れたスライゴーの宿屋で、副議長が予想外の形で他殺体となって発見された。
宿泊客は八人――中には「ブッシュミルズ」も紛れ込んでいた。殺人犯は果たして誰なのか。
客の一人、日本人科学者・フジは、NCFのメンバーと渡り合い、協力し犯人を捜すことになる。

限られた舞台、登場人物でのミステリーだが、その設定はアイルランド和平のため、内々に事態を解決しなくてはならないという必然性があって無理なく成立している。ハードボイルドか社会派か、と思うような雰囲気が。その実態はクローズド・サークル。
読みはじめてから暫くは、「うーん、いまいちのれない」と思いながら苦労して読んでいたのだが、事件が起きフジが動き始めてからはもう一気読み。気がつけば、馴染みのないアイルランドという舞台での物語に引き込まれていた。
只者ではないフジに心のどこかでツッコミを入れつつも楽しんで読めた。「ブッシュミルズ」の正体は予想通りか。

ラストは少々語りすぎの印象もあったが、まぁジェリー視点だ。過去を振り返る男は概してセンチメンタリズムに溢れているものだよな……。
月の扉  (光文社文庫)  [bk1] [Amazon]
月の扉 不登校や自傷など、いろいろな問題を抱え苦しむ子供を、沖縄でのキャンプを通じて癒す石嶺孝志。離婚で揉める両親を持つ参加者の子供も順調に生きる力を取り戻していったが、子供の母親より誘拐だと訴えられ、逮捕されてしまう。
その三日後、沖縄・那覇空港で乗客240名を乗せた旅客機がハイジャックされる。犯行グループ三人の要求は、「師匠」こと石嶺を空港まで「連れてくる」こと。
ところが、機内のトイレで乗客の一人が死体となって発見され、ハイジャック犯を困惑させる。計画に支障はないが落ち着かない――ハイジャック犯は乗客の一人を指名し、乗客死亡の真相を探るよう命令するが……。

ハイジャック中の旅客機という「クローズド・サークル」で繰り広げられる推理。ハイジャック犯が探偵役に謎解きを要求するというのは面白かった。

石持作品は、最初「最後まで読めるだろうか」と不安になるくらい乗り切れないのだが(笑)、気がつけば一気に読めてしまっている。パッとしないはずだった「なりゆきで探偵役になってしまった一般人」が、言いようのない魅力を持ちはじめるんだよな。座間味くんが今回のそれなんだが、良いキャラです。
ハイジャック犯の目的とその結果がややおさまり悪い感じがあって、微妙に気持ち悪いんですが……。おかしいなぁ、人の気持ちが重く取り扱われているはずなのに、この気持ち悪さは一体……。
心臓と左手 座間味くんの推理  (光文社カッパ・ノベルス)  [bk1] [Amazon]
心臓と左手 座間味くんの推理 bk1 警視庁の大迫警視は、東京である人物に再会する。沖縄で発生したハイジャック事件で知り合った「座間味くん」だ。
酒を飲みながら、大迫は自分が関わったり聞いたりした特殊犯罪――テロや過激派など――の終わった事件を語って聞かせる。ところが、座間味くんが終わったはずの事件に下した判断は、警察の出した結論とは違っていて……。
安楽椅子探偵モノの連作短編集。『月の扉』の座間味くん、再登場。

この本を読んだ時点では、そんなに石持作品をこなしていないのだが、もしかしてこの人は短編の人だったりはしないだろうか、と思った。長編では感じた冒頭でのとっつきにくさが全く感じられない作品の数々。
作品では『罠の名前』が気に入った。『月の扉』の後日譚になる『再会』は……気分の凹むエピソードだった……。

一冊に七本収録とは、通常に比べてかなり短い作品ばかりか。そう考えると一本一本が凄い切れ味。
描かれている事件はテロとかばっかりだが、その犯罪には意外と小さな人間が欠かせず、そのあたりも面白い。
セリヌンティウスの舟  (光文社文庫)  [bk1] [Amazon]
セリヌンティウスの舟 bk1 大時化の海の遭難事故をきっかけに信頼の強い絆で結ばれた六人の仲間。その中の一人、米村美月が、六人で集ったその夜青酸カリをあおって自殺した。
法要の後、集まった残された五人は彼女の死に思いをはせ、あることに不自然さを見出す。美月はどのようにして死んでいったのか。その死の謎について、五人は推理を始める――仲間を信じることをルールとして。

お互いの絆を信じるが故に、死んだ美月が「自分たちを危険に晒すような死に方をするはずがない」と考える五人。しかし、そうなると誰か自殺に協力者がいなくてはならない――そんな状況で、五人は必死に推理をすることによって、自分たち六人の信頼に一点の曇りもなかったことを証明しようとする。

犯人を追い詰めるためではなく、自分達の信じるものを守るために推理が進められている。ポジティブな推理なのだが、なんだかネガティブな印象も強いのは何故だろう。いってしまえば「気持ち悪い」なのだが。

そこに狙いはないかもしれないが、満たされること、それを守ろうとすることの歪さを感じた。うーん、モヤモヤする。
まぁ、読んだ後もこういった「ひっかかり」が読者の中に残されるのは「良い作品」と言って良いかなとも思います。
扉は閉ざされたまま  (祥伝社文庫)  [bk1] [Amazon]
扉は閉ざされたまま 大学の同窓会で七人の旧友がペンションに集まった。伏見亮輔は客室で事故を装って後輩の新山を殺害。外部から入室できないよう現場を閉ざした。その後も何食わぬ顔で旧友たちと過ごす伏見。しかし、なかなか部屋から出てこない新山に、メンバー達がいぶかしみだす。開かない扉を前に、メンバーから新山自殺説までもが浮上し、伏見の目論みは成功したかに見えたが、ただ一人、碓氷優佳だけが現場に疑問を抱く。
開かない扉を前に、息詰まる頭脳戦が始まる。

冒頭で犯行の手口や犯人が明かされており、それを探偵がどう切り崩し追い詰めていくか――という、いわゆる倒叙ミステリ。
どう犯人が追い詰められていくか、そのやり取りがスリリングだが、伏見が扉を開ける時間をコントロールしようとしていることのその意味に悩みながら読み続けさせられた。その理由は殺人の動機にも通じていて見事なのだが、ある意味、探偵役の碓氷のあまりにもアレな性質にそれすらぶっ飛んだ……。
ヤンデレ? ヤンデレなのか? ダークヒロイン?
その後の伏見が気になります、凄く……。
君の望む死に方 (祥伝社ノン・ノベルス)  [bk1] [Amazon]
君の望む死に方 bk1 膵臓ガンで余命六ヶ月を宣告されたソル電機社長・日向貞則は、生きているうちにしかできないことは何かを考え、社員の梶間晴征に自分を殺させる最期を選んだ。
社の将来を任せたいと思う梶間に、殺人を遂行させたあと殺人犯と断定できない形で自分を殺させる。そのために、日向は例年行っている幹部候補生の保養所での“お見合い研修”に梶間以下、四名の若手社員を招集する。
しかし、ゲストとして招いた一人の女性の出現が計画に微妙な齟齬をきたしはじめ……。

黒い探偵(笑)碓水優佳のシリーズ第二弾。
死を目前にした男が、ある人物に自分を殺させるべくあれこれ下準備をする。つまり、犯人に被害者がこっそり協力して完全犯罪を成し遂げようとするわけで。
という変な設定で犯行が行われるまでを描く。
そこに自己中探偵の優佳が現れ、かき回すのだが……もう少し優佳に日向、梶間らが翻弄されて予想外な方向に行ってくれれば良かったかなぁ。

誰が死んだか、冒頭で書かれている通報時間が翌朝であることを考えれば、〔日向が死んだ〕と考えるべきか。
Rのつく月には気をつけよう (祥伝社)  [bk1] [Amazon]
Rのつく月には気をつけよう bk1 大学時代からの飲み仲間・夏美、長江、熊井の三人は、卒業後も機会があれば集まって飲んでいた。いつも同じメンバーでは続かないので、ここ数年は誰かが友人をゲストとして連れてくるというならわしになっている。
そんな酒の席で美味いつまみと酒を楽しみながら語られる、ゲストの過去のちょっとおかしなエピソード、不可解な経験……その謎を解くのは。

くそう、そうか!! 確かに〔渚って女の名前と言われたほうがしっくりくるよな! 建築探偵の深春とかいるから、〕だまされた!!

とにかく、酒とつまみが美味そう。チキンラーメンは試してみたい。
凄い綺麗にまとまっているのだが、冷静に考えるとなんでそこまで深読み&決めつけするか、とか、その通りならそいつらもちょっと病気だろうよとか思わなくもない。みんなロマンチストすぎて鳥肌が(笑)

面白いけど、よく考えるとキモチワルイ話の数々です、たぶん。
温かな手 (東京創元社)  [bk1] [Amazon]
温かな手 bk1 大学の研究室に勤める畑寛子の同居人・ギンちゃんは名探偵。
サラリーマンの北西匠の同居人・ムーちゃんも名探偵。
人のエネルギーを吸って生きる彼らは、実は人間ではない。余剰エネルギーを吸い取ってもらうことで彼らは共利共生しているのだ。
職場や外出先で遭遇した殺人事件や騒動を、ギンちゃん、ムーちゃんは鮮やかに解き明かす。

他人の白衣を着て殺されていた研究者。自分の白衣もあったのに、何故?(『白衣の意匠』)
キャンプの最中に死んだカップル。一件心中に見えたが、不可解な点が(『陰樹の森で』)
満員電車の中で腹にナイフが刺さり死亡したチカン。しかし、男は最寄り駅より手前から乗り込んでいたらしいという、謎の行動が(『酬い』)
お互いのパートナー(食糧)を紹介しあうギンちゃんとムーちゃんの兄妹。伊豆で落ち合った彼らが向かったのは、ある老人ホームで……(表題作)
全7編収録。

難だろう、最後ですんなりまとまっちゃったというところだけ、納得いかない感じ。まぁ、元々パートナー間では恋愛感情はなかったというわけだし、残された人々のラストシーンも、まだ互いへの同情レベルなんだろうけど……。
落合冨江の最期を見ると、そうとも割り切れないものがある。一方的な別ればかりでなければ良いのだけれど。

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