姑獲鳥の夏                      講談社ノベルス  [bk1]→
言わずと知れた人気シリーズ第一作にして、京極氏のデビュー作。読んで一発ではまった。すごい。文章が綺麗だー。読んでるうちに雰囲気とか、そういったものに呑まれて酔ってしまいそうです。キャラも魅力があり、かつそのキャラが生きてくる文章。
もしかしたら京極堂の薀蓄がダメ、と言う人がいるかもしれないが、はっきり言って私は大好きだ(笑)たまりません、あれ。いったいどうやったらあんなにぺらぺら喋れるのだろう。息継ぎはどうなっているのだろう。一見関係ないことのようだったものが、後になって真相をついていたりして、はっとさせられる。
文庫版も出たが、さすが文庫版、というだけあって、文章がページをまたいでいない。ここまでくるとすごいとしか……。
人に薦めるときはどう言って薦めればいいのだろう。何はともあれ、とにかくすごいから読んでみてね。だろうか?
魍魎の匣                        講談社ノベルス  [bk1]→
箱箱箱箱箱箱箱箱箱箱箱箱箱箱箱箱箱――。
物語のありとあらゆるところに箱がある。読んでいるうちに自分も見えない「箱」の中にはいてしまったかのような気分になってしまった。うう、これまた酔っちゃう感じの本だねぇ。
ある女生徒の転落事故、多発するバラバラ事件。「箱」によってつながれた事件に、関口、榎木津、木場らが関わり、中でも木場は事件に深入りしてしまう。日本推理作家協会賞受賞作。

これだけ長い話でありながらも飽きることなく読むことができる一冊。すごく「のまれて」しまう作品であると思う。場面の転換がセリフや地の文などの同じ単語でつながっていて、何かテンポの良さというか、場面転換に飽きたり、疲れたりしない感じである。にしても結構木場は純なのですなあ。
ラストのほうではもうなんか皆さんそろって彼岸に行きそうな感じで(笑)関口君は今回もヤバかったですね。
通り物についての話は良くわかった。そういうふうな気分に良くなっちゃうので。そういえば、私が小学生くらいのときに、この話ほどではないがバラバラ事件の当たり年があったよなあ。あの事件は結局どうなったのだろう。
これを読んでから「みつしり」が頭から離れません。
ところで久保竣公、原稿の隙間は気にならなかったのか?
狂骨の夢                       講談社ノベルス  [bk1]→
釣堀の主人・伊佐間一成は海岸で朱美という女と出会う。彼女は自分は人殺しだといった。また、牧師・白丘、元精神科医・降旗の元に訪れた朱美は自分の見る夢と恐ろしい体験について語る。死んだ前夫がよみがえり、その都度朱美は前夫を殺し首を切るというのだ。やがて朱美の夫・宇多川崇が殺害される。果たして朱美が犯人なのか。奇妙な共通点のある他の事件との関わりはあるのか。

前回は箱だらけ。今回は髑髏だらけ。前二作と比べると少々インパクトが弱い感じがしますね、この話は。でもさすがにすごい。飽きずに読める。うん……やっぱりこれ前の二作とは違った感じですね。今までのはラストにどーんってぶちかましたような感じなのですがこっちはなんか……こつこつ積み重ね、というようなとことでしょうか?

伊佐間君初登場。うん(笑)なんだかこの辺からのエノさんの言動が少々幼児退こ……な、なんでもないっす。
しかし真言立川流はやっぱネタとしてはおいしいのだろうか。この前後一年で立川流の出てくる本を3冊は読んだぞ。しかし立川流について詳しくはないがチラッとだけ知識のあった当時高校生の私って……(笑)
鉄鼠の檻                       講談社ノベルス  [bk1]→
箱根の山中にある禅寺で行われる予定の科学調査の下見を兼ね、中禅寺敦子と鳥口ら箱根・千石楼へ。そこで意外な人物と再会するが、まもなく千石楼の庭に僧侶の死体が現れる。また、中禅寺・関口も妻を伴い箱根を訪れていた。土蔵の書物の鑑定にきたのだ。しかし、その土蔵がどこの土蔵なのかがわからない。敦子たちは明慧寺へと入るがそこには僧侶連続殺人事件が待ちうけていた。

この話では懐かしい人・意外な人が出てたりする。「姑獲鳥」での伏線がここに生きるとは。だけど僧侶殺しと鈴のどっちに重点を置けば良いやら。まあ、別々のものなのだけれどねえ。作中で「結界」と言うように、この作品もどうにも閉塞的な雰囲気がしてたりするよう。一部の登場人物もだいたいの読者も禅への知識が乏しいから今回の薀蓄はちょっとアレだったかもなあ。

冒頭のセリフとラストのセリフ。発している人が違う人とはいえ同じ言葉でもずいぶんと印象が違うものだ。実はそこが一番気に入ってたりして。
絡新婦の理                     講談社ノベルス  [bk1]→
目潰し魔、絞殺魔、そして悪魔崇拝。それぞれが己の意志で動いているにもかかわらず、結果、何者かによって操られている――。事件を、関係者を辿っていくその先にいる「蜘蛛」とは何者なのか――実在するのか。事件に関わったものは皆駒となってしまう。そんな事件に解決の糸口はあるのか。

「あなたが――蜘蛛だったのですね」。この作品はこのセリフで始まりこのセリフで終わる。最後まで読み進めていき、漸く冒頭につながる。実に鮮やか。作品中のフェミニズムに関する薀蓄もなかなか考えさせられるものがあるが、冒頭とラストの鮮やかさが目を引いた。あのシーンは本当に絵になる。色まで想像してしまう。

しかし今回やけに中禅寺の登場シーンが格好良いんですけどっ!! あのやたら絵になる登場のしかたは……。そういえば、この話ではなんか中禅寺と榎さんは見せ場が多かったような。あと、美由紀は良いですねえ。
この作品はとにかく、絵になって、そして鮮やか。
嗤う伊右衛門                    中央公論新社  [bk1]→
木匠普請をして食いつないでいる浪人・境野伊右衛門。小股潜りの又市は伊右衛門のもとにある縁談を持ち込む。しかしその相手民谷岩は病で顔が半分醜く崩れていた。それを承知した上で伊右衛門は民谷家へ婿入りをする。

有名な「四谷怪談」を京極夏彦が新たな物語として世に出した。世間に知られている四谷怪談といえば、民谷家に婿入りしたものの、薬のせいで顔が醜くなった岩を伊右衛門が岩を不義を理由に追い出し、伊右衛門に惚れていた梅と夫婦になる。それらの企みを知った岩が死した後、伊右衛門ら関わったものどもに祟る、というもの。だが、この「嗤う伊右衛門」は間違いなく恋愛ものである。笑いもしない生真面目な浪人の伊右衛門と、顔が崩れても正しさを失わない女岩。この二人を中心に又市などの小悪党の存在なども、話をさらに魅力あるものにしているように思える。特に又市、かなりおいしい役どころ――というか、伊右衛門と岩のあのラストのためにも彼のエピソードは欠かせないものになっているような。

「妖怪シリーズじゃないのかぁ」といった感じで読み始めましたが、なかなかどうして。シンプルな作りですがさすが京極夏彦。良い話でありました。時代物も良いね。新書版には家内安全のお札しおりが(笑)

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