<江國香織/川上弘美/滝沢竜彦/辻仁成/平野啓一郎>

冷静と情熱のあいだ Rosso                  角川書店  [bk1]→
ミラノで恋人と暮らすあおい。アンティークアンジェリーの店でパートをし、本を読み、バスタブに浸かる日々。人と深く関わることを避けるあおいは、かつて恋人だった順正との日々を思い出す。まだ恋人だった頃に交わした約束の日が近づくにつれ、その思い出はあおいを強く揺さぶるのだった。
辻仁成との共作恋愛小説。こちらは江國香織が女の視点から描く。完璧な恋人との生活を送るあおいが、忘れられない過去とのあいだで揺れ動き、ある未来へと向かう様が描かれている。「Rosso」では現在と過去が「冷静と情熱」にあたるのかな?
これ一冊だと普通の恋愛小説なんだけど……「Blu」読んでる私は傍から見てたらさぞかし変だっただろう(笑) 2冊合わせると良い。「Rosso」ひと作品で見ると、ラストがすっきりしない感じ。少なくとも私が納得できるラストではない。あくまであおいの視点を第一に書かれてるからか? ただあおいがはっきりせずに感傷に浸ってるように感じてしまった。そういったところの感情を解さない人間なんだねと言われちまったらそれまでだが……。
個人的にはこっちを読んでから「Blu」を読むことをお勧めいたす。
古道具 中野商店 (新潮社)  [bk1] [Amazon]
オンライン書店ビーケーワン:古道具中野商店 古道具屋「中野商店」を営む中野さん、その姉で中野さん曰く「ゲージュツ家」のマサヨさん、バイトのタケオと「わたし」ヒトミ。4人の過ごす中野商店には、古道具を買う人、売る人がそれなりに訪れ、それなりに繁盛している。
どこか個性的な人々の物語を、連作短編とした一冊。何だが「浮いた」人々と、その中で恋愛未満の関係を育てるタケオとヒトミ。ラストは嫌いじゃなかったのだけれど、どうにも雰囲気というか文が苦手な気がして仕方がない。
これはもう相性の問題だろうか……。
タケオとヒトミの関係は、これ以上は見ないほうが面白いと思う。そういう意味ではこの二人の関係はいい時期を描いているな。二人の「ズレ」がなんともたまらないのは確か。

いい話なんだけれど、読んだときはどうにも私と作品との温度差があって、あまり心地よさは感じなかったです。違うときに読めばばっちり相性良かったかもね。
ネガティブハッピー・チェーンソーエッヂ            角川書店  [bk1]→
山本陽介は、つい万引きをしてしまった帰り道、夜の雪路で謎のチェーンソー男と戦う雪崎絵理という少女と出会った。興味を持った山本は、何とかして絵理に仲間にしてもらおうと試み、成功する。それからチェーンソー男と絵理・山本の戦いの日々が始まった。心臓を刺しても死なない謎のチェーンソー男は一体何者なのか。そして何故絵理にチェーンソー男と戦う能力があらわれたのか。
第5回角川学園小説大賞特別賞。っていうか五回もやってたの(笑)?
そこそこの作品といったところではないかと。若者の感覚に沿った作風ではないだろうか。全体的に独白的で、主人公たちのいる場所の「風景」はあまり見えてこない。戦う絵理を見る山本の主観でひたすら話が進んでいく。どこか、読者が置き去りにされているという印象がなきにしもあらず。まぁ、第1作目だから今後どうなるかにもよりますかな。
ハードカバーの価格を払うだけの価値があるかは疑問。多分文庫だったら価格とつりあっていると言えるでしょうな、残念ながら。
NHKにようこそ!                         角川書店  [bk1]→
引きこもり歴4年、佐藤は大学を中退、アパートの一室で鬱々と日々を過ごしていた。自分は何故引きこもりになったのかと悩む佐藤は、ついに一つの考えに辿り着いた。NHK――「日本ひきこもり協会」なるものの陰謀なのではないかと。そして隣室に入居していたかつての後輩。佐藤は引きこもりから脱することはできるのか。
著者第二作目。主人公の佐藤の設定が、引きこもりが高じて大学中退と、著者とダブるところが多い。だから、「こんな人間なのかなぁ、合法ドラッグやってたのかなぁ」などと思ってしまったのですが。
正直言って、第1作「ネガティブハッピー・チェーンソーエッヂ」よりも読者を選ぶのではないかと思える。何というか、こう、所々妙に濃すぎる(笑)。山崎とのシーンとかは引く人いるだろうなぁ……。
前作でも思ったのだが、地の文と(声に出している)独り言の区別ができない文ですな。意図的なのでしょうか。それともまさにこの本自体著者の独り言とか……。
後半になって、岬とかの内面が表に出てくるのだが、はっきり言って前作の使いまわしのようなものになっている。何となく「あーあ……」と思ってしまった。同じことを違うキャラで語っただけ? ただ、チェーンソー男のような謎の存在がない分、こっちのほうがわかりやすいかも。
個人的にはなんか岬が痛々しいというか可愛いというか。
ただ、話は妙に濃い。それだけは確かだ。
冷静と情熱のあいだ Blu                    角川書店  [bk1]→
フィレンツェで修復師として仕事をし、生活をしている順正。仕事に意欲も持ち、恋人と言える女性もいたが、今、このフィレンツェで順正を生かしているのはかつてあおいと交わした他愛もない約束だった。時がたつほど、順正の中でのあおいとの思い出は膨れ上がっていく。そして順正は近づく約束の日にすべてを賭けるかどうか思い悩む。
共作恋愛小説、辻版。男の視点からの物語。江國香織の原稿を受けて、こっちが仕上がっているようなので、「Blu」を読んでると、「あ、ここは!」とか「うわー、そうだったのか」などと読んでて思わずニヤリとするところがある。2冊合わせるとどちらの話にも「ニヤリ」とできてしまうんですよね
「Rosso」を先に読むことをお勧め。「Blu」の終わりがあれなので。「Rosso」のラストはちょっと「おいおい、本気でそれで終わるのか〜??」という感じでしたが、「Blu」の終わりはやはり「ニヤリ」。「Blu」の終わりがそのままこの2冊の終わりといった感じです。しかし本当、見えてなかった側面が見えてくるってのは面白いです
日蝕                              新潮社
パリ大学で神学を学んでいたニコラは、学問的探求心からパリを発ち、リヨンへと向かった。そこでニコラは司教から、ある村へと向かうことを勧められた。その村には錬金術を研究している男が居ると言うのだった。
現役京大生が初の投稿小説で「新潮」の巻頭を飾り、なおかつ直木賞受賞ということで当時話題を呼んだ作品。で、感想なんだが…………いや、文壇ってのは良くわからん(笑) 悪いが、私には合わんなぁ……。
とにかく前半はかったるい。主人公が思いつくままに自らの宗教感を延々と語ってるし。つまりは「読ませる文」として洗練されていない独白っぽい文で。とにかくそのあたりがしんどい。宗教に興味、知識がほとんどないとなおさらだろうなぁ。後半も前半に比べるとだいぶ良いのだろうけど、いまいち理解不能ι 下手したらアレだな、「だから何?」という感想に終わりかねん作品だ。
漢字とか文体とかで妖しげな雰囲気とかが上手く出てるとは思うのだけれど、はっきり言って内容はどえらく対象となる読者層を限っている作品では? この作品が素晴らしいと思った人はどのあたりをそう思ったのかなぁ。

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