鼓笛隊の襲来  (光文社) [bk1] [Amazon] 
鼓笛隊の襲来 bk1 赤道上に発生した、戦後最大規模の鼓笛隊。上陸予定の地では避難が進むが……(表題作)
朝目覚めたら、恋人がいた記憶などないのに恋人を失ったという確信があった。喪失感にさいなまれた私は、街中で「彼女の痕跡展」に出会う( 『彼女の痕跡展』)
ある日を境に姿を見かけても会うことができなくなった夫。どこかおかしいその家は……(『「欠陥」住宅』)
校庭の真ん中にあるが誰も気にしない「家」。ある日私はそのことに気付くが……(『校庭』)

全9本の短編を収録した、不思議な印象の一冊。
話としてはなんとなく「他で誰かが書いていそう」な気もするのに、すべての作品がどこか独特な雰囲気を共通して持っており、捨て置けない感じがする。

個人的には各話の出だしがいい。最初の一行がガツンと来る感じがある。的確に、作者のフィールドに読者を引きずりこむ一文です。
読んでみるしかあるまい。プラスの印象か、マイナス評価か、本当ひとによって変わりそう。
廃墟建築士  (集英社) [bk1] [Amazon] 
廃墟建築士 bk1 都市機能を補完する建築物として廃墟が重視される中、廃墟の魅力にとりつかれ、廃墟文化の発展に熱意を注いできた関口は……(表題作)
殺人事件や中学生の飛び降り、老人の孤独死……一時的に話題になっても風化するはずだった事件は、すべて「七階」で起きたという共通項でくくられてしまった。犯罪の温床であると七階撤去の動きが生じ始め……(『七階闘争』)
図書館として今は地に繋がれている彼らは、かつては「本を統べる者」として世界の空を回遊していた。そして今でも完全に野性は失っておらず、人のいない深夜に彼らはかつてのように飛び立つのだ。ある図書館で深夜開館をすることになり、本の調教のために日野原は図書館を訪れる(『図書館』)
建築物にまつわるどこか奇妙な物語4編を収録。

相変わらず、どこかズレた世界で展開される物語の数々。このなんともいえない違和感が逆に癖になる。読んでいて意識が本に集中するような気がします……。コレはさすがに読んでみてもらわないとわからないかも。
個人的には『図書館』がお気に入り。表題作はもう少し書き込んで長いお話で読んだほうが良かったかも、と思いました。
刻まれない明日  (祥伝社) [bk1] [Amazon] 
刻まれない明日 bk1 10年前の事件――ある日突然、3095人の住民が消えた事件以降、その区画は<開発保留地区>として封鎖され、その痕跡を消された。
しかしそれ以降、ラジオには消えたはずの人からのハガキが届き、失われた図書館では本が貸し出され続け、ないはずのバスの灯が見える。失くした人の、今なお届く痕跡に想いを残し続ける人々。だが、事件から10年を迎え、失われた町に変化が生じ始める……。

何かを失ってもそれを乗り越えていくのが人だが、この町の人々は、失われたはずの人々の気配がいまだに存在しているせいで、より執着や憧憬、未練が強く踏ん切りもつけにくいのだろうなぁ。失ったものを“想い出”に昇華させるには不向きな環境と言えるか。
それでも、失われた町にも変化が生じ始め、残された人々もようやく自分の時を進めて前に新たな一歩を刻む。

雑誌に掲載された、同じ町の住人達の連作短編を、10年前の事件の“消え残り”であった沙弓と、歩くことで道を道として成立させる歩行技師の物語で挟み一つのストーリーとして仕上げている。
この歩行技師が良い!!
冒頭は「あれ? 普通の話?」とか思って読んでいたのだが、彼が出た瞬間に「来たよ、三崎作品だよ」と思った(笑)
道を歩くことが尊く感じられる歩行技師の描写が堪らんです。なんだか可愛い人だしー。彼の歩く“道”は、きっといろんな意味での“道”なのだろうなぁ。

ちょっと残念だったのは、人々の穴を埋めるのがすべて恋愛だったこと。もっとヴァリエーションをつけても……。
あと、消失の真相を挟む必要はあったのだろうか? 幻想のままでも良いのではないかと思った。あの現実、必要?
でも、文庫落ちしたら買いそうです。

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