S&Mシリーズ VシリーズGシリーズその他

××S&Mシリーズ××
すべてがFになる                    講談社ノベルス  [bk1]→
S&Mシリーズ第一作。そして森博嗣のデビュー作。図書館で借りて読んだのだけど、「F」を読み終えたその一週間後には当時出ていた既刊を全てそろえた。ちょうどそのころは「コズミック」に手を出した後で、推理物を買うのにだいぶ慎重になってたのだが、「何で今まで読まなかった、買わなかった!?」と後悔。良いです。好みです。

孤島のハイテク研究所。照明が点滅する中、ウェディング・ドレスをまとい両手両足を切断された死体がロボットに乗せられ、ゆっくりと部屋から進み出てくる――。死体の発見(というよりは登場?)シーンとしては結構ショッキングなものですな。きれいに整った文章、という感じがある。パソコンとかの専門用語とか知識とかでわからないことが多かったけど、それでも最後まで一気に読める。面白い。

犀川の思考がいい。実に好みな思考回路をお持ちのようだ。ただ……萌絵はちょっと、ダメですね。あまり好きなキャラではありません。私は断然、真賀田博士派です!! 彼女と犀川の会話は実に良い!
冷たい密室と博士たち                 講談社ノベルス  [bk1]→
シリーズ第二作。事件の舞台となるのは低温度実験室。外部からは誰も侵入できず、内部からは誰も出られない。その上記録カメラがずっと部屋の様子を写し続けていた。そんな密室で、二人の院生が死体となって発見される。

相変わらず整った文章だと思う。一見無感動過ぎるような犀川の感想や描写が、かえって生々しくその現場を再現させているように感じた。やはり良い。動機なんかも、下手に書いたら安っぽくなる可能性もあるのだが、そこが下手に安っぽくならずに、まとまっていて良い。
やっぱり犀川の思考回路はいい。終わり方も綺麗だよな。
しかし、何気に一番侮れないのは諏訪野ではなかろうか……?
笑わない数学者                     講談社ノベルス  [bk1]→
シリーズ第三作。数学者・天王寺博士の住む「三ツ星館」で開かれたパーティで、博士は庭にあるオリオン像を消した。そして次の日、オリオン像は再び現れ、二つの死体が発見される。

トリックがどうこう、という以前に天王寺博士が……。謎解きがメイン、とはいえない話のようだ。いや、謎だな。事件のトリックが明かされた後の天王寺博士と犀川との会話、そしてラストの老人と少女の会話……ううむ。何かが違うぞ、これは。思わず考え込む。最後には思わずうならされたが。さすが。

萌絵というキャラクターはあまり好きではないが、犀川と萌絵の学問や雑学についての討論なんかは読んでて楽しい。
算数の問題……結構悩んだ。
詩的私的ジャック                    講談社ノベルス  [bk1]→
那古野市内の大学施設で女子大生が殺害、連続殺人事件へと発展する。殺人現場はどれも密室で、被害者の肌には意味不明な傷が刻まれていた。容疑者としてあがったのはロック歌手の結城稔。彼は犀川が担任していた学生だった。彼の作る曲の詞と事件が奇妙に類似しているのはなぜなのか。

S&Mシリーズ第4弾。今回は犀川出番少ないですねえ。にしても萌絵やっぱりだめだぁ。どうにもこのキャラ生理的に受けつけんぞ。

今回は密室トリックより密室を作った理由が大事、ですかね。真っ白なノートが欲しい、という感情はわからんでもない。そういう思いはたまに浮かんでくるものだし。文中で犀川が考えてた「数式でスラッシュで綺麗に消せる」快感ってのもなんかわかるなあ。あれはいい。しかし、第1から第3の被害者が殺された理由はいいとして、第4の被害者。この人だけ殺される理由ってのが希薄な気がする。解決のところでも大して重要に扱われてないし。なんか無意味というか……この死は必ずしも必要なものだったのだろうか。
封印再度                         講談社ノベルス  [bk1]→
岐阜県の旧家・香山家に代々伝わる「天地の瓢」と「無我の匣」。瓢には鍵が入っており、匣を開けられると言うのだが鍵は瓢の口より大きい。五十年前に香山家当主は匣を開け、再び鍵を瓢の中に入れ、息子に残して自殺したと言う。鍵のパズルと五十年前の事件に興味を持った萌絵は香山家を訪れる。しかし、再び香山家で五十年前と似た事件が起こる。

我ながらよく耐えたと思う(笑) もうね、犀川どうこうじゃなくって、本当人として萌絵って好きになれんタイプなのだ。
今回の話はミステリとしての要素はちと薄いかな? 本当にタイミングだねぇ、これは。密室トリックは始めの実験のあたりでわかったけど(遅いか?)、まず第一に頭に浮かんだのが「弁当箱」だった(笑)いや、本当に開かないんですよね、あれは。そういうところでは非常に納得のトリックだった(笑)。つまるところ、すべては偶然だった――ということか? それほどのインパクトはないが、まあまあといったところでしょうか(って、そんなこと言えるほど数こなしてるわけじゃないだろう、自分……)

各章の英字タイトルは「鉄鼠」を読んだ後だったのですぐに「十牛図」だとわかった。しかも内容としっかり関連してる(当たり前か)
××その他××
まどろみ消去                       講談社ノベルス  [bk1]→
S&Mシリーズの短編も含む、11の作品を収録した短編集。まあ、バラエティに富んだ短編集ですね。ミステリもあるけど、どことなく純文っぽいのもアリ。

なんというか独特。しかもどれも「森博嗣だなあ」と思うから不思議。個人的には「虚空の黙祷者」と「キシマ先生の静かな生活」が好きだね。「何をするためにきたのか」のラストもよい。あれはいきなり「突かれた」感じがして印象に残ってしまった。

しかし、「真夜中の悲鳴」、ホラーテイスト……。「突然目の前に男の顔」ってところは嫌だったなあ(笑)
臨機応答・変問自在森助教授VS理系大学生        集英社新書  [bk1]→
S&Mシリーズ、Vシリーズ等でお馴染みのミステリィ作家・森博嗣は、N大学工学部助教授でもある。授業においては、学生に自由に質問をさせることで出席をとり、またその内容等によって成績をつける。そして毎回その質問への回答をプリントにして返却する。この本は、そうしてたまった数年分のQ&Aの中から選ばれたものを一冊の本にしたものである。

実に様々なQ&Aが収められてある。注意すべき点は、収録されているものが必ずしも面白いor優れていると感じることのできるものではないということだろうか。
ではどういう質問か、というと、質問の仕方が下手だったり、文がおかしかったりしているわけである。質問に答えるのにも能力は要るだろうが、望む答えを得るためには、質問する側にも能力が要る。私の大学にも毎回質問を受け付け(義務ではない)、次の時にプリントにしてフィードバックする先生がいるが、講議がその年の後半に入った時に、「だいぶ皆さん質問の仕方がわかってきましたね」という言葉があったのを、本書を読んでいて思い出された。
そういう意味で考えさせられる質問などもあり、結構興味深く読める一冊。やはり私は森博嗣の思考パターンや持論が好きなのだなぁと再認識。第2弾も出るそうで、今から楽しみである。
探偵伯爵と僕 (講談社ノベルス)  [bk1]  [Amazon]
探偵伯爵と僕 bk1 夏休みの直前、「僕」馬場新太が出会った黒づくめの奇妙な男は、自らを「伯爵」と名乗る探偵だった。
彼と友達になった新太は、夏祭りの夜に行方不明になった親友ハリィを探す。しかし、数日後更にもう一人、友達が姿を消した。二人が追う犯人の影は、ついには「僕」にまで伸びようとしていた。

もともとは「ミステリーランド」の作品とのことで、形態はジュブナイルをとっている。
変な大人の探偵伯爵と、妙に大人びた新太のやり取りはとても小気味がいい。二人の間で交わされるやり取りは意外と深いもので、相手が子供だからと言って誤魔化さない誠実さや鋭さがある。そこはさすが森作品と言えるか。
途中まで犯行の動機は不明で、パズル的なものかと思われていたが、ラスト2Pで一気にひっくり返された。「遊びで殺すほうが健全」ってなフレーズがかつてVシリーズにあったと思うが、それを思い出させる生々しさだった。犯行の動機――というか背景も浮かび上がる。「被害者の性別」を逆転させた新太のその想いを推測するにかなり辛いものとなる。そしてまた、「伯爵」の思いも。要するにこれは連続幼女殺害事件なのだ。その当事者達の傷、痛みをラスト2Pで一気に浮き彫りにした作品ではないだろうか。下手にしっかり書くよりも、鮮烈な印象を受けた。

正直、「あちゃあ……」とやられた感じになってしまい、読後感はよくないかもしれない。けど、読む価値のある作品と感じた。
カクレカラクリ (講談社ノベルス)  [bk1]  [Amazon]
カクレカラクリ bk1 廃墟マニアの郡司と栗城は、同じ大学に通う真知花梨に招かれ、廃工場を見に彼女の故郷・鈴鳴村を訪れた。そこで二人は、明治時代に作られた絡繰りが村のどこかに隠されており、120年後の今年動き出すという伝説の存在を知る。興味を持った二人は、廃坑の探索をしながらも真知花梨、玲奈ら姉妹と共に絡繰りの謎を追う。

コカ・コーラ120周年コラボ作品。映像化されることが前提に書かれた作品である。読んでいて映像が浮かびやすかったり、会話のテンポが掴みやすいのはそのせいもあるのだろうか? つーか、ドラマのほう見てないんだけどどうだったの? 別物説もあるようなんだけど(笑)

コカ・コーラがわざとらしくくどいという難点はあるものの(笑)、個人的にはわりと好きな一作。もしかして森博嗣はノン・シリーズモノのほうが好みなのだろうか、自分。
暗号(?)はとてもわかりやすい。「四本松」なんか見た瞬間にわかる。どうしてこれが長年謎だったのってくらい。それとも活字で見るからなおわかりやすく感じるんですかね。なので、謎そのものというよりは、それらを郡司たちがどう解明して辿り着くのかを楽しんでみていた感じ。……青春冒険活劇?

予想外のものはなかったけれど、絡繰りや廃墟への愛はあり、またひと夏の活劇などあり、娯楽作品としては良作なのではないかと思われ。
ゾラ・一撃・さようなら (講談社ノベルス)  [bk1]  [Amazon]
ゾラ・一撃・さようなら bk1 探偵・頸城悦夫の元を訪れた美女・志木真知子。彼女の依頼は、引退した要人から、母親が預けた美術品“天使の演習”を取り戻して欲しいというものだった。しかも要人は殺し屋ゾラに狙われているといい、その暗殺が行われる前に手に入れなければならない。
頸城は友人のつてを使い、ターゲットの要人・法輪氏の本の出版を企画しているライターとして法輪清治郎に接近するが……。

ハードボイルドと聞いていたのでハードボイルドとして読もうとしていたら、あらすじや登場人物一覧に“天使の演習”だの“簑沢素生”だのと見覚えのある名詞があったものだから、なんかそっち方向で裏があるのではと、本筋と違ったところが気になってしまった。情報に踊らされている?! もう“志木”って苗字まで気になっちゃったくらい。
そんなこんなで、S&MシリーズやVシリーズと地続きな作品だったり。トリックとかではなく、頸城の仕事っぷりとその内面の動き(主に女性方面?)が楽しみどころか。ハードボイルドなわけだしねぇ。

なんというかさすが森作品。頸城の思考回路が超好みです。
銀河不動産の超越 (講談社ノベルス)  [bk1]  [Amazon]
銀河不動産の超越 bk1 気力というものを認識できない、全てにおいてエネルギィが足りない青年・高橋が就職活動で連敗した末に就職した銀河不動産。そこに物件を求めて訪れた資産家の未亡人に家を紹介したことをきっかけに、高橋は不思議な家に住むことになってしまう。
それから高橋の人生にはいろいろな変化が訪れて……。

最初は「なんだろう、この話」って感じで読んでいたのだけれど、押しかけ女房(本気で初対面)が現れてからがなかなか面白かった。
なんというか、もう、坂道を転がり落ちるように、うまい方向へ追い込まれていっている、といった感じ(笑)
わらしべ長者的な展開と言えるだろうか……。
ていうか、あんたら他に人いるのに朝から。

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