青空の卵 (創元推理文庫)  [bk1]  [Amazon]
オンライン書店ビーケーワン:青空の卵 外資系の保険会社に務める坂木司。彼の友人の鳥井真一は、引きこもりのプログラマ。社会との関係を絶つ鳥井を、何とか社会に引き出したい坂木は、日常の中にふってわいた不思議な事件を鳥井のもとに持ち込んで聞かせる。鳥井はその事件の謎を解き明かしていくが……。
日常の謎、連鎖する物語、というのは、非常に好みなタイプ。こういう形式だと、その物語だけの閉じた世界ではなくなる。たとえそこに出ていなくても、別の場所でその人物が生きていると感じられる、その楽しさがある。
多分、一部の女性読者に喜ばれるだろう、坂木と鳥井のコンビ。ちょっと白けるくらいにお互いが大事な二人……見事な共依存である。その点に関しては、正直、私は読んでいて微妙だった。
ミステリ自体は、まぁそこそこかと……ただ、人はそんなに優しく美しいわけではないと思う。醜いだけでもないが。妙に青臭い展開だと思うところが多かった。
作者はどうやら女性らしいが、確かにそれっぽい作品だな。
仔羊の巣 (創元推理文庫)  [bk1]  [Amazon]
オンライン書店ビーケーワン:仔羊の巣 シリーズ第二弾。引きこもりの友人・鳥井真一が風邪で寝込んでいたある日、僕・坂木司は同僚から同期の女性の様子がおかしいと相談を受ける。鳥井が風邪をひいているので、坂木は慣れない探偵役を努めるが……。
そのほか、地下鉄に現れる少年の謎、坂木自身に降りかかる悪意の連続。それらをひきこもり探偵・鳥井が解決する。
読めば読むほど、坂木のほうが歪んでいるように思えてきてしまう。坂木のような人間に、イラついてしまう人種です、私。多分に同族嫌悪なところがありそうにも思えるが……(-_-;)
不健全な関係の二人。それを許す優しさを持っている人々ばかりの周囲……そういう人としか付き合いが続かないのかもしれないけれど。そんなところに微妙に不満を抱きつつ。
動物園の鳥 (創元推理文庫)  [bk1]  [Amazon]
オンライン書店ビーケーワン:動物園の鳥 春の近づくある日、鳥井真一のもとを二人の老人が訪ねてきた。鳥井と坂木の年上の友人である木村栄三郎と、その幼馴染の高田安次朗だ。高田がボランティアとして働く動物園で、野良猫の虐待事件が頻発しているという。謎を解くべく、動物園へと向かう鳥井たち。しかしそれは、鳥井が引きこもりになる原因となった出来事に繋がるのだった。
シリーズ完結篇。
長編となっております。んで、文庫版特別付録付き(レシピ集)
鳥井をいじめた同級生との再会で、坂木が精神的に大きく揺さぶりをかけられる。そして、ある一大決心へと繋がっていく。シリーズ最終巻として、当然の展開があります。しかし、結局鳥井も坂木も子供のままと言えるラスト。まぁ、人間、そんなに劇的に変わっていくことが全てではないから、ある意味自然な流れともいえるか。とにかく、はじめの一歩は踏み出されたわけですし。
シリーズ3冊の中では一番相性がよかった。なんかこう、「お綺麗さ」が比較的薄い感じがして。作品として悪いとは思わないのだけれど、いかんせん、主人公二人がいまいち肌に合わないってのがきつかったシリーズかなぁ(^_^.)
切れない糸 (東京創元社)  [bk1]  [Amazon]
切れない糸 bk1 就職が決まらないまま大学卒業を控えた新井和也。父親が突然死んだため、仕方なく家業のクリーニング店を継ぐことになった。
納得しきれず、また就職に成功した同級生に複雑な思いを抱きつつも日々クリーニングの集荷を行う和也だが、お得意様から預かる衣類には時々何かおかしなこともあり……。不思議に思った和也は、同じ商店街の喫茶店でバイトをしている友人の沢田に相談をする。沢田は学生の頃からみんなの相談役で、「魔法の一言」をくれるのだ。

商店街のクリーニング店を舞台にした連作短編。
主人公は困っている生き物に何故か遭遇してしまう「町の生物委員」。本人の意思とは関係なく、妙な人望を得つつも「普通の若者」な和也が成長していく様が見えて、微笑ましくなる。ちゃんと大人になるってこんな感じか、という気が。
何より周りの人に恵まれていると思う。そんな彼らの日常の謎……もだが、洗濯物とかの「化学の謎」的なところが面白かったか。衣類、奥が深いなぁ。

そうそう、洗濯物からその持ち主の生活とかが見えるのには激しく同意。洗濯物ウォッチングは楽しいです(←犯罪者?)
そういう私としては、洗濯物を通しての謎解きというのはなかなか面白いものがありました。
シンデレラ・ティース (光文社)  [bk1]  [Amazon]
シンデレラ・ティース bk1 小さい頃の体験から歯医者が極度に怖くなってしまった咲子は、夏休みのアルバイトを探していたところに母親から受付嬢の仕事を紹介される。行ってみるとそこはなんと――歯科医で!!

歯科を舞台にした「日常の謎」モノ。全5本収録の短編集。
しかし、その一方で恋愛モノ、だと思われ。女性視点の坂木作品を読むのはコレが初めてでした。
今まで流れにまかせての恋愛だった主人公・サキが、初めて自分から人を好きになりお付き合いを、という流れになるストーリーでもある。
相手役の四谷がまた良いんですな。基本、クールでマイペースなのに、動揺したときの癖が可愛くて悶える(笑) 物を積み上げるって一体……!!

しかし、純なサキが無意識に思考するところの、指の描写が何かとエロい気が。指フェチにもおススメの一作か(笑)
ワーキング・ホリデー (文藝春秋)  [bk1]  [Amazon]
ワーキング・ホリデー bk1 ホストのヤマトの前に突然現れた小学生の進。なんとヤマトの息子だという。話を聞くと、心あたりはあった。
つい最近になって父親の存在を知ったのだという進は、夏休みに、ヤマトがいい人か悪い人かわかるまで一緒にいるつもりで家出をしてきたというのだ。
ちょうどホストクラブをクビになり配達業の仕事を紹介され引っ越すことになったヤマトは、そこで進と暮らし始めるが……。

坂木司、次に取り上げるお仕事は宅急便(笑)! でもミステリじゃなかった。よい家族物であった。

突発的父子関係モノで、徐々に二人の関係が「親子」になっていくのがいい感じ。ヤマトもなんだかんだで父親っぽくなってきているし。冬休みが早く来るといいね、って感じでした。
ホテルジューシー (角川書店)  [bk1]  [Amazon]
ホテルジューシー bk1 卒業旅行の資金を稼ぐため、沖縄の宿で夏休みの間働くことにした柿生浩美。バイト途中でピンチヒッターとして那覇のホテルへと移動となるが、辿り着いた「ホテルジューシー」は、雑居ビルの中にあるホテルだった。
双子の清掃員の老婆、不眠症で昼は使い物にならないオーナー代理に振り回されながらも、ヒロはさまざまな出会いをする。

「正しさは尺度にならないって、もう充分にわかったはずだよ」「君がいなくても世界は回ってるってこと」(P330)
このあたりがこの本で一番良かったか。

基本、オーナー代理のほうに価値観は近いかなぁと思いながら読んでいたので、ヒロの正論とおせっかいはかなり苦手な部類。正しい。正しいけど、想像力は足りない子だと思う。人の気持ちになり受け止める度量が足りていない。
恐らく、その足りていないところはサキが補っていたのだろう。メンタル的にはサキより子供なのかなぁと思った。

「シンデレラ・ティース」の姉妹編。主人公と反りが合わなかったので少々微妙でした。
先生と僕 (双葉社)  [bk1]  [Amazon]
先生と僕 bk1 大学に進学し一人暮らしをはじめた伊藤二葉は、押しに弱く、人が死ぬ本はほとんど読めないほどの極度の怖がり。見たことを写真のようにそのまま憶えられる以外は特に能力もない。
そんな二葉は、ある日公園で中学生・瀬川隼人に声をかけられる。親を安心させるために、形だけの家庭教師を探しているのだといい、二葉に白羽の矢が立ったのだ。
ミステリが大好きな隼人は、二葉にミステリを教える“先生”になるが、日常のちょっとしたミステリの気配にも飛びついて謎を解こうとして……。

日常の謎モノだが、隼人が「くだらない」と評するとおり、作品としての魅力には少々欠けるものばかりかな……という印象。読んでいる側も、「なんだ」って感じに。作中で紹介されている作品へのオマージュ的なものもあるのだろうか? それならもっと思い切ってガツンとやってもいいと思う。
これは、ちょっと生意気な感じの隼人や、気が弱いキャラクターの二葉に魅力を感じるかどうかにかかっている部分もあるのかもしれない。二葉みたいな気弱なキャラ、ツボる人はツボるだろうからなぁ。残念なことに、自分は二葉が合わなかった。あの怖がりは、君全般性不安障害かとか言いたくなる(笑)
夜の光  (新潮社)  [bk1]  [Amazon]
夜の光 bk1 ブッチ、ギィ、ゲージ、ジョー。
同じ天文部に属する4人は、さして仲が良いわけでもなかったが、夜の街で偶然遭遇したことをきっかけに自分たちを「スパイ」に見立てて秘密の関係を築くようになる。お互いをコードネームで呼び合いながら、自らを囲む日常に「スパイ」として入り込むことでバランスを保っている4人。
いつか脱することを誓いながらも、今はまだここに留まらざるを得ない4人は、その日々の中でちょっとした不可解な出来事に遭遇して……。
視点を変えて、全5編収録。

その青春像は悪くないのだが、自分たちを「スパイ」と言ってたりしているあたり結構イタい。高校生という年齢にしてはその逃避の仕方が幼い気もするのだが……。
この年頃の繊細さを描こうとすると、何故病んだ方向に行ってしまうのか。そんなに思いつめなくても良いのに、と思ってしまうのだよな。自分にとっては、既に過ぎ去った時代だからこう言えるのかもしれないが。
短劇 (光文社)  [bk1]  [Amazon]
短劇 bk1 給湯室の流し台の独白、ステカン業者の男が街で見かけた妙なステカンは……、老人二人が語る「恐いこと」とは、仕事をなくし妻にも逃げられた男が試写会で目にしたのは、ビルのトイレに見つけた穴の向こうには、等、ショートショート26本収録。

割りと良い人ぞろいの作品を書く坂木司の暗黒面が表に出たのか、と思わせるブラックな(笑い)話ばかりが詰まっている。
あとがきにもあるとおりならば、元々は「良い話」の連載になる予定だったらしい。一作目は確かに……しかし、収録二作目からすでに雲行きが怪しくなっている(笑)

シュール、理不尽、恐怖、そんなものがたんまり詰まった作品集。
個人的に好きだと思ったのは、『MM』、『ほどけないにもほどがある』、『恐いのは』、『ビル業務』、『秘祭』。
『秘祭』の青春なまはげは、話どうこうではなく吹いた。凄いセンスだ。黒歴史には触れずにおいてあげようよ(笑) 『恐いのは』はいいなー、あのブラックさ。

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