| 取引
講談社文庫
[bk1]→■ |
公正取引委員会の審査官である伊田は、違反に対する処分に不満を示し、上部の不正を問い詰めたために目をつけられ、左遷の憂き目にあっていた。そんなある日、伊田は汚職の嫌疑をかけられる。なす術もなく、辞職に追い込まれた。そこへある所から、談合事件調査の話が持ち込まれ、伊田はフィリピンへ向かう。しかし、内偵対象が誘拐されるという事態が発生し、伊田も巻き込まれていく。
真保裕一の「小役人シリーズ」である。公取の役人だった伊田が、辞職に追い込まれた結果、内偵のためフィリピンへ渡るわけだが……私は内偵においての騙しあいのぴりぴりした展開を期待していたのだが、そうではなく誘拐の捜査がメインになってしまって……少々残念だった。なんか主人公の職種の意味が弱いのではないのだろうか。
話は、厚いのにもかかわらず一気に読めたあたりはさすがではありますが……やはり、前述した点においての物足りなさは如何ともしがたいです。
とはいえ、安心して読める一作であることは確か。やはり真保裕一は良いですな。 |
| 盗聴
講談社文庫
[bk1]→■ |
真保裕一のバラエティに富んだ短編集。5編収録。
「盗聴」盗聴機ハンターがキャッチした違法電波から聞こえてきたのは殺人現場の生々しい音。この事件は予想以上に大きなものとなる。
盗聴機を使った話。プロローグからしっかり伏線がはってあって、ラストには「ああ」と納得できる。短いが読み応えは十分にアリ。何気に「ホワイトアウト」と繋がってるあたり思わずニヤリ。長編にしてもいけそうだよな。
「再会」久しぶりの友人との再会。それを目前に自殺を図った妻。そのきっかけと思われる電話をかけたのは誰か。
再会の末に明らかになった罪。一人のことを誰よりも想った結果がこれか……。ある意味英輔には最大級の呪いかなあ、とか思ったり。
「漏水」堀場のもとを訪れた男は水道局員だと名乗るが、その目的は何か。
なんというか……坂道人生(笑)?水漏れがたたって陥没ってところか。
「タンデム」レーサーの辰也は雑誌に載っていた自分の昔の写真を見て、過去のある事件を思い出した。
終わり方がなんだか爽やかですなあ。血生臭くない、青春の一コマのミステリですか。人死ぬけど。
「私に向かない職業」「私」が仕事で訪れた場所には、腹に果物ナイフを突き立てられた男がいた。
真保裕一もこういう話を書くのかと驚いた。しかし、面白いこれは。この短編集の中では一番よいと思うのだが。 |
| 朽ちた木々の枝の下で
講談社文庫
[bk1]→■ |
妻を事故で亡くし、札幌を離れ森林作業員となった尾高健夫は夜明け前の森で一人の女性を助けた。しかし彼女は何かから逃れるかのように病院から逃げ出し姿を消した。尾高は女性を探し出し真相を突き止めることに己の再起を賭け、調査をはじめる。
妻を失って傷ついた心、そして過去から目を逸らし日々を過ごす尾高が、失踪した女性を追うなかでそれらと向き合い、克服していく。明かされた真実に対し人々がすがったものとは。恐ろしいまでのリアリティがあり、自衛隊や森林などさまざまな描写が素晴らしいが、注目すべきはそこより、それによって紡ぎあげられた物語だろう。人々が最後にすがったもの。それを受け入れることによって尾高は過去と折り合いをつけることができたのだろうか。
医師の栗原と尾高のシーンがすごく良い。おそらく彼の存在がなければ尾高はあのラストに辿り着けなかったかもな。本の厚さを気にせず一気に読めた。 |