永遠の森 博物館惑星 (ハヤカワ文庫)  [bk1] [Amazon]
永遠の森 bk1 地球の衛星軌道上にある巨大博物館<アフロディーテ>。そこには全世界のありとあらゆる美術品・動植物が収められている。
音楽・舞台・文芸担当の<ミューズ>、絵画・工芸担当の<アテナ>、動植物担当の<デルメル>の、女神の名を冠した各専門部署では、データベース・コンピュータに頭脳を直接接続させた学芸員達が、収蔵品の分析鑑定・分類保存を通して、“美”の追求にいそしんでいた。
総合管轄部署の<アポロン>の学芸員・田代孝弘は、統括コンピュータ<ムネーモシュネー>に直接接続されたエリート学芸員だが、彼をはじめとする<アポロン>の学芸員は、学芸員としての仕事より各部署間の調停役という仕事がほとんどだった。
持ち込まれた厄介な問題に対処する中で、孝弘は芸術にかかわる人々の思いに触れ、至高の美とは、美しさを感じる人間の感情とはなにかについて考えさせられることになる。

連作短編集。全9本収録。
思ったほどSF要素は強く前面には出ておらず、静かな印象の一冊だった。直接接続者とか、立派にSFな設定はあるけれど、どちらかというと推理物の雰囲気。実際、推理モノとしての賞をもらったしなぁ。北森鴻<香菜里屋>シリーズとか好きな人にはいいかもしれない。

データベースと結ばれたプロフェッショナルは、結局美しさを「感じること」に還っていく。
五人姉妹 (ハヤカワ文庫)  [bk1] [Amazon]
五人姉妹 bk1 書影は単行本です バイオ企業を率いる父によって、成長型の人工臓器を埋め込まれた幼い葉那子は、臓器スペアとして四体のクローンが用意されていた。
やがて無事に成長し、臓器の心配をしなくて良くなった葉那子は、亡き父の想いを求め、四人の“姉妹”との面会を行うが……(表題作)

『永遠の森 博物館惑星』の後日譚『お代は見てのお帰り』など、先端科学が生み出す様々な心の揺れを描いた9本の短編を収録。
心に重きを置いたSF短編たちでした。
むしろ、科学が幸せから人を遠ざけることも感じさせる物語たちもあり、どこか優しさを感じるものもあり。あくまで描かれているのは人間のありようなのだな、と思われる物語でした。
カフェ・コッペリア (早川書房)  [bk1] [Amazon]
カフェ・コッペリア bk1 人間とAIの混合スタッフがモニター越しに恋愛相談に乗ってくれるカフェ・コッペリア。そこでバイトをしているカナタは、友人から、客へのサービスを怠るかのような態度を取る店員がいると聞く。果たしてその人物は、AIなのか、人なのか(表題作)
閉鎖型バイオスフィアでの完全自給自足実験のため選ばれた両親役、子供役の四人。その一人、11歳のモモコのカウンセラー・田辺友紀子は、実験施設内から届くモモコの日記メールを見て、違和感を感じ続けるが……(『モモコの日記』)
仕事に忙しい嫁、年頃の孫。日中独りになる老人に与えられたのは亡き妻に似た面影の絵――笑い袋だった。笑い袋相手に独り言を言いながらも、「これで幸せ」と思い続ける男だが、ある日倒れてしまい――(『笑い袋』)

短編集。SF要素はもちろんあるが、それほどとっつきにくさはない。ジャンルは気にしなくても良いかも。全7編収録
表題作は、なんだかミイラ取りがミイラになった感じもあり。AIか人間か。問題の彼女と遭遇した際の会話の滑らかさとおかしさが読んでいてゾクッとなった。
一番良かったのは『笑い袋』。
なんとも遣る瀬無い話だなぁ、と思いながら読んでいたら、ラストで一気にやられた。迂闊にも涙ぐみそうに。機械を通して人が人のかかわりを取り戻すところがとてもじんわり。SFの世界になっても「人とは」が失われないのが良い。
後は『モモコの日記』だろうか。
子供が「子供の役割」を客観的に理解し、実行している。生身の人間なのであろうに、その様はまるでプログラムされた機械のようでもある。

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