ハサミ男                          講談社ノベルス  [bk1]→
殺された少女の喉に突き立てられたハサミ。それからマスコミに「ハサミ男」と命名された連続殺人犯は、自らの模倣犯の被害者の第一発見者となってしまった。しかも、殺された少女は次の被害者にと狙っていた少女だった。もう一つの人格「医師」に促され、真犯人を探すことになった「ハサミ男」。警察も本格的に捜査に打ちこむ中、真犯人を探し出すことはできるのか。

第13回メフィスト賞受賞作。発売後間もなくから話題となった作品。叙述トリック、ということになるか?この作品は。
シリアル・キラー自身が自らの模倣犯を追うという形式で話が進む。今まで読んだ作品で同タイプの作品はあったかなぁと考えると、真保裕一「私には向かない職業」あたりがそうかなぁなんて。とにかく、そういう形式で、「ハサミ男」の視点、警察の視点でそれぞれ「第三の被害者」を殺した犯人を追いかけていき、それがラストで一つに結びつく。叙述トリックで物語を二つの視点から語る場合では、文学性どうこうではなく、単に「一つの視点で語っちゃヤバイ」からでは、という考えで読むことがほとんど。そうなるとこの作品で1番ポイントとされている部分が見えてきてしまうのですよね……。評判に聞いていて、警戒して読んだ人でもそうなると思う。多少表記において意図的な偏りがあるように思われ、ちょっとフェアじゃないと思えるところ、なきにしもあらず。
この話において、「ハサミ男」が奇妙な魅力を持っているように感じられた。殺人願望と自殺願望、「医師」という博識・冷静な人格などなど……。「医師」に関するオチは「少々ありがち」と思ってしまいましたが。毎週土曜の自殺企画が、妙なテンポの良さをもたらしています。「土曜? ああまた自殺だね(笑)」みたいな。
それと、SFファンにはあからさまにわかる伏線()があった らしいです。

この作品において個人的に1番許せないなぁと思うのは警察が取り調べることにおいて、男性のほうのみを書いている点。実際には第2発見者ということになる男性を「第1発見者」として扱うのであれば、女性、つまり知夏のことも「第1発見者」として扱っていることを作中ではっきりと書くべきではないのだろうか(私が見落としている可能性もあるが……)? あの書き方だと、男性のみが発見者として扱われていると勘違いする人が出かねない(ってかいただろ、絶対)。そもそも警察って発見者と通報者の区別はしないのだろうか……。しかもプロファイラーまで世間の情報に踊らされるなよ……。とにかく、その辺に男性=ハサミ男と思わせようとしている作者の魂胆が見え見えで、結果として非常にスマートでない仕上がりになってしまっている。

叙述トリックでは多く、読者の思いこみ、固定観念などを利用するわけだが、この作品においてもその点を利用している。そういったところを突かれると人は「やられた」と思うのだろうけど。
そこそこだったとは思うが、期待していたほどではなかったというのが本音か。
美濃牛                           講談社ノベルス  [bk1]→
岐阜県の暮枝村の洞窟にあるという奇跡の泉の取材依頼を受け、その依頼を持ち込んだ得体の知れない男・石動戯作と暮枝村を訪れた、フリーライターの天瀬とカメラマン町田。何とかして記事に仕上げようと取材をし、暮枝をそろそろ去ろうという時、村の有力者の息子が首無し死体で発見されるという事態が発生。田舎での猟奇的な事件に、村は騒然とする。そして、事件はそれだけでは終わらなかった。
「ハサミ男」に続く著者第二作目。全作とはうってかわって、田舎の山村を舞台とした探偵小説。一気に古典的な作風というか、シチュエーションです。

タイトルからもモロわかりのように、ミノタウロスがモチーフになっている。……あまりにもネーミングが露骨なのにはちょっと笑った。ミノタウロスがモチーフで、ああいう名前のキャラがいるとしたらそりゃ迷宮はあるだろうし、アリアドネの糸となるものだってあると思うでしょうよ。けどそういうふうにネタがわかるのってアリか?

個人的には読みやすい文で良いとは思うのだが、なにぶん長さの割に密度がないように思える。パートパートが短く、冒頭に引用文が挿入されるのを、「テンポが良い」と思うものもいれば、「展開が遅い、冗長だ」と思うものもいるだろう。実際私も、果たしてこの話にこれだけのページ数が必要であっただろうか?と疑問に思うところもある。余分と思えるページ数で得たものといえば、妙に生き生きとした脇役だろうか。その割に主人公たちはいまいち人物像が掴めなかったのだが……。
取り敢えず、探偵誕生。シリーズ化するのならば、この後どうなるのかにもよりますか……。何というか、私にとって殊能将之氏は、手放しで「良い」と「悪い」とも言えない、微妙な作家です。どこをどう見れば、思いきり誉められたりけなしたりできるのでしょうか。うーん。
解説で殊能将之氏の正体について何やら思わせぶりなことが書かれているが、現在では緘口令も解除されているらしく、ネットで調べるとある程度わかります。SF畑の方なんですね。
黒い仏                           講談社ノベルス  [bk1]→
探偵・石動戯作のもとに、とある会社社長の大生部という男から、秘宝探しの依頼が持ち込まれた。唐へ渡った9世紀の僧が持ち帰ってこようとしたものだという。助手のアントニオ(本名・徐淋)と共に寺の調査に行くと、そこには顔の削り取られた奇妙な本尊があった。一方、福岡市内のアパートの一室で、男の他殺体が発見されるが、身元不明の上、そのアパート室内には指紋一つ残っていなかった。やがて容疑者として名前があがったのは、石動の依頼人・大生部だった。

「美濃牛」ラストで探偵として名乗りをあげた石動戯作モノ第2弾。だが、その探偵が見事に道化である。というか話のほうが反則くさいのですが、かなり(笑)。
ミステリといっていいものなのか、悩まされる。唸らされる展開というよりは、白けてしまう展開ではないだろうか……。これをやられてしまうと、なんでもアリのようになってしまうのではなかろうかなぁ。
鏡の中は日曜日                     講談社ノベルス  [bk1]→
鎌倉に建つ梵貝荘。魔王と呼ばれる異端の仏文学者が主であるこの館に、「火曜会」という会合に呼ばれ数人の人々が集う。しかし、深夜に招待客の弁護士が刺殺され、その現場に一万円札がばら撒かれるという事件が起きた。すでに解決され、過去のものとなったこの事件を再調査するよう、石動戯作に依頼があった。再調査をきっかけに、再び事件が動き出す。

再び、石動戯作のシリーズ。しかし、同時にもう一人の探偵も登場している。
過去と現在が交互に書かれるタイプの、叙述トリック。前作が前作だっただけに、かなり警戒して読んだのだけれど、わりとまともだった(笑)。それに、比較的好みな方だったし。ちょっとフェアじゃねぇやと思うところもあったが。結構ご都合主義ではありますよね。そういうところはあまり突き詰めず、ひとつの読み物として読めばそれなりに楽しめる気が。とにかく、比較的私好みだったと言うことで。それだけです。
水城が良いキャラでした。石動が毎回道化だが、今回は水城のおかげでかなり可愛い奴に……。もう一生真相を外す探偵でいてください……。

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