孤独の歌声                           新潮社  [bk1]→
深夜の連続コンビニ強盗と連続女性誘拐殺人。はじめは接点のなかったこの二つの事件は、潤平のバイトしているコンビニに強盗が入りこんだことで、潤平、そして刑事の風希をまきこんで進展していく。
潤平、風希、誘拐犯の三人の視点から語られ、飽きずにテンポ良く(っていって良いのか?)、適当なスリルを味わって読むことができると思う。
サスペンスですが、青春小説っぽい感じがあるかね。犯人より潤平の心理やその他描写がリアリティがあるようだからだろうか。もう少し犯人の描写とか狂気の面が掘り下げられていればな、と選評と同じように思った。サイコサスペンスで犯人が印象に残らないってのはさすがにどうかと思ったぞ。
さすがに文は上手くて、おいらとしては読みやすいし描かれている内容も文体も相性が良いんで好きです。
家族狩り                             新潮社  [bk1]→
ある衝撃的な事件が発生した。子供が家族を皆殺しにし、自殺するという事件。家庭内暴力などがあったため、子供の犯行に間違いないとされるが馬見原は理由もなく納得できなかった。そして酷似した事件がまた起きる。一人調査する馬見原、第一発見者となった巣藤は大きく事件と関わることとなる。また、二人の共通の知人・氷崎游子、そして最近になり不登校や過食などをはじめた巣藤の教え子・芳沢亜衣も同じく事件に巻き込まれる。大量殺人の裏にある「愛の病理」とは。

現代になり大きく問題とされるようになった「家族」の問題を前面に押し出したサスペンス。問題を抱え、悩む子供。それを許容できない家族、社会。どれほど考えても正しい一つの答えが得られるわけではない問題であり、いつ自分に降りかかるものとも知れないだけに、深く考えさせられる。
現代で当たり前になっている家族や社会のシステムは、実際には戦後築き上げられた新しいもの。そのほかにも様々な新しいものが溢れかえる中、それによって問題が生じるのも充分にありうることではないだろうかとも思えるが……。それを乗り越えこのシステムを確固たるものとするか、また別のシステムを生み出すのか、それが正しいことなのか……何はともあれ「まだ終わらない」 だろう。
せめて巣藤、氷崎、亜衣、そのほかの登場人物の行く先が明るいことを祈る。読んで感じたのは、最近の人は「距離」のとり方を忘れているのではないかな、ということと、家族とは最初からある普遍のものではなく、一から創っていかなくてはならないものではないかということかね。
永遠の仔                             幻冬舎  [bk1]→/
退院記念の登山で霊峰へと登った三人の少年少女。家族との関係の中で心に病を抱えた彼らは、双海病院の児童精神科で出会い、お互いに心を通わせるようになっていった。救われることを願った三人は霊峰へ登り、その下りである人物を殺すことを計画した。
退院して17年後、久坂優希は病院の看護婦、長瀬笙一郎は弁護士、有沢梁平は神奈川県警の刑事として働いていた。笙一郎も梁平も、遠くから優希を見守るように生きてきたが、笙一郎の母親がアルツハイマー病になり、やむを得ず優希の勤める病院の老年科へ入院させることになり、三人は17年ぶりに再会することになった。
その直後、笙一郎の事務所に勤めていた優希の弟が、家庭の在り様に疑問を抱き、その過去を探り出し始め、優希達に動揺を与える。そして周囲では殺人事件が起き、それによって「過去」が押し寄せ、彼女たちの生活を崩していった。

直木賞候補作にもなった、天童荒太の話題作。親の虐待を受け心に病を持つに至った三人の少年少女が、ある殺人を計画し、さらにその17年後に再会することで再び起き出した事件。ミステリというふうに分類されているんですけど、この作品で問題とされているのは「事件の真相は何か」ではないでしょう。問題にしたいことを語るのにメジャーで読みやすいミステリを用いたということだろうか。なんか……虐待に関しての親子の問題や、介護の問題が強く前面に出ているかなぁと。そっちの印象がかなり強くて、ミステリといった要素の部分が霞んでいるような。
分の相性も良いし、天童荒太の分も上手いということで、上下巻一気に読めた。「長すぎる」などと良くいわれていたようですが、これを短くしたら逆に「詰め込みすぎ」と文句をいわれたのではないだろうか。私としてはまぁ、充分な量でさして長いとも感じずに読めたがな。

終わりのほうは一気にどっと来た感じ。読者を引き離そうとしない文ですね。しかしなんか所々で「それはどうよ?」と思わないでもない。はじめ優希を中心にしていたかのような話が、ラストでは○○が一人残されるような形になっていて、なんか最後に思ったのが「○○がかわいそう…」であった。感動したと思ったが、そこらへんでふと我にかえるとちょっとすっきりしないのである。
あと気になったといえば、何度も何度も出てくる「救われる」といったことに関して。それは大切なことなのであろうが、しかし少々くどいというか情けないというか理想でしかないと思えるというか……なんかこう、リアリティに欠けるような気がね……。
とまぁ、色々と小さいこと(?)にツッコミはいれたが、一気に最後まで読めるだけの話ではあったかなと。個人的には子供の頃の話が良かったかなぁ……。

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