冷たい校舎の時は止まる(上)(中)(下) (講談社ノベルス)  [bk1] [Amazon]
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ある雪の日、学校に閉じ込められた8人の高校生。誰もいない、誰も登校してこない時の止まった校舎。出ようにも玄関の扉は開かず、8人は自分達の置かれている状況の異常さに気付く。外に出る方法を探す8人は、2ヶ月前の学園祭でのクラスメイトの自殺事件を思い出す。しかし、誰が自殺したのか――そのことをどうしても思い出せない。死んだクラスメイトは誰なのか? 閉じ込められた8人のうちの誰かなのか?
やがて、一人、また一人とメンバーが姿を消していく。次に消されるのは誰なのか? 追い詰められながら真相を探る面々は、否応なしに自らの裡に抱える傷を見つめることになる。最後に残るのは誰か。そして彼らを校舎に閉じ込めた「ホスト」の正体は。

メフィスト賞受賞作。

面白かった。著者の作品の中ではこれが一番良いのではないか。
サスペンス風の展開。それぞれが自分の死について思う――。良くもまぁ、こんな不幸自慢状態なメンバーが…と白けないでもないが、ラストの展開はグゥ(笑)。サカキ万歳という感じ。決して珍しい手法ではないのだろうが、鮮やかであった。
菅原に注目してもう一度読んでみても良いかもしれない。各メンバーに語られる文字としてしか存在していなかった榊が、一瞬にして血肉を持つ存在に変わる瞬間が良い。
子どもたちは夜と遊ぶ(上)(下) (講談社ノベルス)  [bk1] [Amazon]
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関東の大学が共同で立ち上げた「情報工学」論文コンクール。優勝者には海外へ四年間の留学の権利が与えられる。同じ大学に通う浅葱と狐塚は優勝を狙い論文を書き、月子と恭司をはじめとする周囲の人々も二人のいずれかが選ばれると信じていた。しかし、選ばれたのは「@」という謎の学生。「@」が何者か騒然となる関係者たち。それでも平穏な日常に皆が回帰していくはずだった。浅葱のもとに「@」からの一件のメールが届かなければ……。
連続殺人事件の陰に潜む、「@」と「θ」の歪んだ関係。罪の意識に苛まれながらも、独りになることが恐ろしく殺人をとめることが出来ない「θ」。一人殺すごとに破滅へと向かっていく中で、自分でも気付かずにいた恋は、さらに「θ」を追い詰めていく。

狐塚と月子の本当の関係を、ここまで何年間も知らずにいられるものなのだろうか。無意識とはいえ、好きになり、その上相手は自覚して好きだったというのに、ここまで情報は遮断できるものなのだろうか。まず厳しいとは思うのだが。ちょっと設定に頑張りすぎた感がある。
予想外の展開があるわけではないが、こういう展開は好きな人も多いんだろうと思う。ラストの感じは、電撃系のライトノベルに近い印象を受けた。
凍りのくじら (講談社ノベルス)  [bk1] [Amazon]
オンライン書店ビーケーワン:凍りのくじら 藤子・F・不二雄をこよなく愛するカメラマンの父・芦沢光が失踪してから5年、残された病気の母と二人、時に刹那的になりながらも生きてきた理帆子。そんな理帆子は、ある日別所あきらという上級生と出逢い、写真のモデルになって欲しいと頼まれる。不思議と波長の合うあきらに、理帆子は自然と心をひらいていく。SF(少し・不思議)という藤子先生の捕らえ方になぞらえ、他人を<少し・何か>で分類する癖のある理帆子は、<少し・フラット>とあきらを分類する。
別所に安らぎを感じつつも、理帆子は元彼・若尾の存在によって心を乱され続ける。壊れていく若尾。中途半端な理帆子。事態は思わぬ方向へ進んでしまう。

女性作家にありがちな不安定な美しさを持った主人公にイラつきながらも、最後まで読み進められたのは、主人公の周囲のキャラのおかげか。
というか、主人公の母・汐子が主役じゃないかと思えるくらい、彼女の残した文には泣けた。理帆子の両親万歳って感じです。もうこの点だけで、読んでよかったと評価できるくらい。

ただ、理帆子をメインに考えると、別所の存在があまりに希薄。そのせいか、理帆子の感情の強弱に共感しきれないところも多い。もう少し、別所に精神的に依存させてよかったんじゃないだろうか。
ぼくのメジャースプーン (講談社ノベルス)  [bk1]  [Amazon]
かわいがっていた学校のウサギを惨殺され、その第一発見者となったふみちゃんは、ショックのあまりすべての感情を封じ込め、登校拒否を続けている。大切な幼馴染のふみちゃんはまだ帰ってこないのに、ウサギを殺した犯人のあいつは、たいした罰も受けずに、何も失わずに生きている――犯人への復讐を願った「ぼく」は、自分と同じ不思議な声の力を持つ「先生」のもとに通い、力の使い方を学びながら、犯人に与える罰の重さを量り始める。「ぼく」が最後に選んだ答えとは。

「条件」と「罰」を設定し、宣言することによって他者を動かす力を持つ「ぼく」が、幼馴染の心を壊した犯人への復習を、自分の不思議な力を使って果たそうとする。
かなり小学生っぽくないよなぁ、とか思いながら読んでいた。実際、自分が小四のときはどうだったか覚えていないが(とりあえずラノベは読んでいた…)。小四が出す答えとしては、かなり重い。この歳で、人間というものを理解し始めている。

秋先生の魅力あふれる一冊。『子どもたちは〜』のキャラもちらりと出ています。秋先生のポイントは高い。著者の作品の中では今のところ一番いいかも。
スロウハイツの神様(上)(下) (講談社ノベルス)  [bk1] [Amazon]

売れっ子脚本家・赤羽環が所有する古アパートに集まったクリエイターたち。環の友人達である彼らは、それぞれの創作活動に日々を捧げながら幸せに暮らしていた。しかし、空いた一室に入居した謎の美少女・加々美莉々亜の存在により、スロウハイツの日々は変化を見せる。環が唯一認めるスロウハイツのNO.1、人気小作家のチヨダ・コーキに急接近する莉々亜。彼女は、かつて猟奇的なファンによる大量殺人事件により筆を折ったコーキを救った『コーキの天使』なのか?
カップルの住人正義とスーの関係が揺らぎ、コーキの偽者が幅を利かせはじめ、また、コーキが認める才能が意外に身近にいるかもしれない可能性に、環は大きく揺れる。

苛烈な個性と才能でスロウハイツの面々の中心となる脚本家・環と、彼女が認める唯一の存在・人気作家チヨダ・コーキ。スロウハイツの住人である狩野の視点を主として語られる物語の中心はこの二人となる。
キャラクターひとりひとりを丁寧に書いており、身近に感じられるようなる傍ら、やや冗長な印象も受ける。しかし、この作品は恋愛小説と言ってよいだろうから、そういう面で見れば人物描写にページを割いたのはありか。
『コーキの天使』、『コーキのニセモノ』、『コーキの認める才能』といった、正体不明の謎の存在があるが、最終的にはところどころに散らばった複線が最終章で回収され、スロウハイツの日々は終わりを迎える。お見事。ラブストーリーの展開としては割とありがちだけど(実際、環=コーキの天使は容易に想像つくし)
ただ、個人的に好みを言うのなら、最終章のコーキは全てを語りすぎかな、と。もう少し、コーキの想いを想像する余地を残して欲しかったと思う。余韻がない。
名前探しの放課後(上)[bk1] [Amazon] (下)[bk1] [Amazon]  (講談社)
名前探しの放課後・上 bk1
名前探しの放課後・下 bk1
依田いつかは、地元のジャスコの屋上で唐突に、自分が覚えている最後の記憶が三ヵ月後の日付であることに気付いた。それは、一人のクラスメイトの自殺を知らせる電話を受けた記憶を含んでいた。
タイムスリップしたらしいいつかは、クラスメイトの坂崎あすなに相談をする。一度もまともに言葉を交わしたことのないあすなは、しかしいつかのことを信じ、自殺者探しに協力すると言った。いつかの友人・長尾秀人らも巻き込み、いつかは自殺する「誰か」を探そうと動き出す。

自殺者が誰か、というのは登場人物から容易に見当がつくのだが、ラストの展開とエピローグでやられた。青春ミステリだが、かなり熱い部類の青春だ。
ノートとか、真相が明かされると「うわ、なにそれ凄っ」って感じです。傾けられるエネルギー量が半端ないよ。
自殺者探しをしていく中で、いつかやあすなに変化が出てくるのが読んでてわかって良いです。

正直、文庫落ちしたときに買うかどうか微妙と思いながら読んでいたが、下巻で一気にきた。読み続けてよかったと思う。まぁちょっと、「最後の最後でそれがアレだったってオチか」と思わされたところもあるのだが……(『ぼくのメジャースプーン』の彼がまさかの再登場、あの力を使ったとかね…) そんなこんなもあっていろいろと「やられたー」とは思える作品ではないかと(笑)

一度目はストーリーを追い、二度目は伏線をチェックしつつ読むとよいかも。
ロードムービー (講談社)  [bk1]  [Amazon]
ロードムービー bk1 六年生への進級を目前にした春休み、トシとワタルは家出をした。トシは父親に電話をする。「これは誘拐だと思ったほうが良いよ」。
ワタルと一緒にいるためのトシの作戦が始まった。
表題作他、前3本収録。

まったく前知識なしに読んでいたので、読了後に『冷たい校舎の時は止まる』のスピンオフ短編集だということを聞いてびつくり。
つーか、スガ兄しかわかんなかったです(笑)
個人的には、『道の先』が良かったか。それとは別に、辻村作品っぽいと思ったのは『雪の降る道』。やはり子供を描くのが上手いと感じた一作でした。表題作は、お約束のアレをやるのが途中で読めてしまったわけです。でも応援演説は泣かせますね。
太陽の坐る場所  (文藝春秋)  [bk1]  [Amazon]
太陽の坐る場所 bk1 毎年開催されるクラス会。地元組、上京組ともに、裡にさまざまな思いを抱きつつも、表面上は和やかに交流を暖めていた。その場で話題に上がるのは、女優となったクラスメイト・キョウコ。クラス会に出てこない彼女を何とか出席させられないかと、聡美や紗江子、島津らがキョウコへの接触を試みる。

いろんな意味でホラーかと思った(笑)
女優キョウコに接触し、しかし一人ずつ彼女と会おうとするメンバーと連絡が取れなくなる……てっきり失踪とか殺人かと思ったが、そうではなかった。でもなんか不自然な。「私もうやめる」でいいんじゃね?
名前の取替えというか、人が〕違うんだろうというのは予想がついた。しかし、今作はそのあたりより、あまりにリアルすぎて気持ち悪い登場人物の心理がキモではないだろうか。そういう感情の存在は、今更言われなくたってわかってるのに、敢えて書かれてしまうと共感を通り越してしまう。

「自分の自意識を飼い馴らすことを覚えなければならない、と胸に刻んだ。」(P304)がキたなー。

最終的には、高校時代の関係から卒業して、現在の現実の関係へと。
面白かったんだけど、そんなこんなでびっくりするぐらい読後感はよろしくなかったと、なんか複雑。
ふちなしのかがみ  (角川書店)  [bk1]  [Amazon]
ふちなしのかがみ bk1 日直をする相川の元に、実習生だった後輩の小谷チサ子が訪ねて来る。
忘れ物を取りに来たという彼女だが、一緒に校内の見回りをしながらチサ子が語りだしたのは、学校にまつわる七不思議のひとつ「階段の花子さん」だった。(『踊りの場の花子』)
高校生のサックス奏者・高幡冬也に心を奪われた香奈子は、クラブで知り合った少女から教えてもらった占いを行う。しかし、鏡の中と現実の境界が曖昧になりだした香奈子は、やり直すためにあるほう方をとるが……(表題作)

全5本収録の、ホラーテイストの短編集。

上手くできてるなぁと思ったのは、『踊り場の花子』と表題作。どちらも、少しずつ作中の空気が変わっていく感じがたまりませんでした。ミステリ→ホラー、ホラー→サイコホラーorミステリなシフトがいい感じ。
最後に収録されている『八月の天変地異』は、ある意味辻村作品らしい雰囲気だが、この短編集においてはヌルイ印象を持ってしまい、かえってマイナスになったか。

しかし、インパクトだけで言うならば『おとうさん、したいがあるよ』が一番かも。なんだろう、この異常さ、わけのわからなさは。カレンダーの日付がおかしいのはわかるんだけど、それがどういうことなのかわからん……。
ゼロ、ハチ、ゼロ、ナナ。 NEW! (講談社)  [bk1]  [Amazon]
ゼロ、ハチ、ゼロ、ナナ。 bk1 結婚し東京で暮らすフリーライター・神宮司(梁川)みずほ。彼女は故郷を訪れ、ある件について関係者に話を聞いて回っていた。
望月チエミ――ずっと生家で両親と共に暮らしていた、みずほの幼なじみ――彼女の母親が刺殺され、チエミが行方不明となった事件についてだ。
チエミはどこにいるのか。何故事件は起こったのか。
同世代の女達の口から語られ、浮かび上がってくるチエミの姿、そして彼女に付いて語る女たち自身の姿とは……。

29歳の今だから書けた、この作品か……。
『太陽の坐る場所』寄りの作品であった。女の自意識、母娘関係といったもののを敢えて言語化。同性にはとてつもない共感と同時に、直視できず目を逸らしたくなる感覚を与えるものではないだろうか。
母娘関係については「うわー」という感じ。みずほの語る親との距離感についての考え方ってよくわかるのだが、言語化して目の前に晒されるとわりとツラい。

『太陽の〜』と異なったのは、ラストのほうで展開したドラマだろうか。
一瞬〔百合エンド〕かと思うような(笑)チエの本音もさておき、「何もなかった」というチエの真相が辛かった。
救いがあるが、とてつもなく救いのないラスト。「何」かあれば良かったわけではないのはわかっているが、それでも、チエの失ったものの大きさはただ事ではない。タイトルの意味がわかった時も「うわ」と思ったが、こっちのほうがびびった。

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