時を巡る肖像絵画修復士御倉瞬介の推理 (実業之日本社)  [bk1]  [Amazon]
時を巡る肖像 bk1 システィーナ礼拝堂のフラスコ画修復作業のスタッフとして働いたキャリアをセールスポイントに、フリーの絵画修復士として日本で生活する御倉瞬介。自ら刃物で片目を突いて失明した画家・冷泉朋明の屋敷での絵画修復の仕事を請け負うが、泊りがけで作業をすることになった夜に殺人事件が起きてしまう。(『ピカソの空白』)
他、全6編の短編を収録した一冊。

もうちょっとこう、美術品を通して謎を解決し……みたいなのを期待していたのだが、瞬介の絵画修復士としてのスキルは謎の解決に寄与しない。そのへん残念であった。『デルフトの眺望』はかろうじて、かな。
ミステリ作品としては、安定した印象があり安心して読める。が、瞬介のキャラがいまひとつ立ってなくて地味か。隻眼の画家・冷泉や、家政夫・加護のほうが存在感あるんですけど(笑)

名探偵として謎を解くこと期待されることも、気負うこともなく、居合わせちゃった上になんとなく謎を解いちゃう感じです。
ナチュラルすぎてある意味犯人ムゴイ。
黄昏たゆたい美術館絵画修復士御倉瞬介の推理 (実業之日本社)  [bk1]  [Amazon]
黄昏たゆたい美術館 bk1 カリスマ的な総合プロデューサー・花房進太郎の自殺。しかし、なんら動機が見当たらず、警察をはじめ、関係者は他の可能性を探らずにはいられなかった。それは、花房と同居していた若い画家の謎の供述もあるためだった。事件に関係するらしい「神々を殺した凶器」とは?(『神殺しのファン・エイク』)
他、全5編の短編を収録した一冊。

絵画修復士の御倉瞬介が、仕事の取引先や関係者に関わる事件の謎を解くシリーズ第二弾。

一作目よりは絵画と謎のリンクは濃くてよかった。『『ひまわり』の黄色い囁き』は、ゴッホを巡る謎のほうが、作中の事件よりも魅力的なくらいであった。そうそう、こういうのが良かったんだよな〜。
そういえば、『ひまわり〜』の中で触れられていた絵の中の黒猫に関しては、近年、分析でなんか結果が出たというのをどこかで見かけたような……。絵画の謎は興味深いですね〜。

しかし、瞬介は本当に埋没しやすいキャラクターだな……登場している人の中では、かなり一般人オーラが濃いような。
レイニー・レイニー・ブルー (光文社文庫)  [bk1]  [Amazon]
レイニー・レイニー・ブルー bk1 カラーコンタクトを常用し、スポーツタイプの車椅子を操る熊谷斗志八。医療事故により下半身の機能を失った斗志八は、鋭い眼光と怜悧な頭脳、毒を含んだ発言から“熊ん蜂”とあだ名されていた。彼は周囲で起こった不可解な事件を解き明かしていく。

主に、新人介護福祉士・鹿野真理江の視点から“熊ん蜂”斗志八の活躍が描かれている。“熊ん蜂”と呼ばれるほどの厳しい言動ながらも、決して冷淡な人間ではないことが、真理江の視点からの語りで読者にも伝わる。この斗志八、著者の「ifの迷宮」の登場人物の一人で、これはスピンオフ作品とのこと。

「密室の中のジョゼフィーヌ」と「コクピット症候群(シンドローム)」がよろしかった。
「仮面人称」は話運びはシリアスだが、その実態は馬鹿ミスなのではないだろうか(笑) 表題作「レイニー・レイニー・ブルー」に関しては、ミステリというよりは、奇蹟が描きたかったのだろうと思う。ほかはやや力技の気があり。

しかし、「百匹めの猿」を読むと、この世界には御手洗潔が実在の人物とされている設定であると思われる。初出が島田荘司編の「21世紀本格」であるせいもあるだろうか?
アリア系銀河鉄道                    講談社ノベルス  [bk1]→
紅茶好きの宇佐見博士は、突然目の前に現れた「字義原理・実存の猫」に誘われ、地の文で示されたことがそのままに実現してしまう不思議な世界を訪れる。そこで起きた殺人事件を解決するよう博士が求められる、「言語と密室のコンポジション」など、不思議な世界で博士が事件を解決する短編5本と、二階堂黎人らの解説が収録された短編集。
初老の宇佐見博士が「不思議の国のアリス」さながら、不思議な世界に迷い込む……ということで、ファンタジー的な舞台設定でのミステリです。最初のほうはそういった設定できちんとミステリに仕上がるのかなと思っていたのですが、謎解きはしっかり論理的でした。一見何でも有りのようなSF・ファンタジーの世界ですが、きちんと世界設定が成されていれば、その設定の中で論理はしっかり成り立つのですね。
まぁ、多少は突っ込みたいところもある事にはありましたが。「言語〜」では何語を使っていると考えるべきなのか?とか。他にもネットで書評を検索すると別のツッコミどころが出てきたりします。前述したツッコミどころに関しても、もっと詳しく、専門的に言っているものもありましたし。
表題作なんか(意識しているのでしょうが)、宮沢賢治作品のような幻想的な美しさがあって良いです。ミステリとそういった世界が綺麗に溶け合っていますね。読後感がとても良い一冊でした。
殺意は砂糖の右側に                  祥伝社NONノベル  [bk1]→
一緒に暮らしていた祖父が死んで一人になった従兄弟・天地龍之介が、世話になる人を訪ねるため一人小笠原諸島から都会へと出てきた。祖父の友人であるその人を探すまで、光章の部屋で龍之介は暮らすことに。しかし、二人は行く先々で奇妙な事件に遭遇。科学者並の頭脳を持つが感性が一般からズレた龍之介が、事件の謎に挑む。
IQ190、しかし生活能力は0という天地龍之介が探偵をつとめる連作ミステリ短編集。度胸がなくて、事件とかに遭うとオドオドしているが、科学的な知識はぺらぺら出てくるという龍之介。全体的に頼りない……というか、年相応に見えないですよ。高校生のようだ。
話はなかなか上手くまとまっていると思うのです。設定のわりに軽すぎるとか、余計な要素が多すぎる、といったようなことがなく、設定・謎・キャラクターのバランスが良いと思った。話の中で出てくる科学的なことなんかも、読んでいて面白い。凄くすっきりしていて、かつ楽しめる一冊ではないでしょうか。
幽霊船が消えるまで                   祥伝社NONノベル  [bk1]→
死んだ祖父が後見人に指定した中畑老人を探す旅を、従兄弟の光章と続ける天地龍之介。旅先で遭遇する大小様々な事件を、龍之介はその博識と天才的頭脳で解決していく。
全6篇の短編と、その間に挿入される光章の「龍之介観察日記」からなる一冊。「殺意は砂糖の右側に」に続く、シリーズ第二作。時間的には丁度前作の続きから、ということになっているようで、フィリピンからの帰路での事件から始まっている。
後見人中畑さん探しの旅、幾度もすれ違いを起こしつつも、今回ついに中畑さんと対面を果たす。4章あたりでどうにも会えることが確実っぽくなってきて、光章との生活とかはどうなっちゃうのかなぁとか、ちと不安になったのですが。ラストでは龍之介でも予想だにしなかったことが明らかに。いきなりあんな現実的というか、生臭い話をつきつけられて、龍之介も戸惑うだろうな。これからも変わることなく癒し系なでほほんなノリでいってくれればとても嬉しいのですけれど。まぁ、そのままいってくれるとは思いますが。
オドオドしながらも、その科学的知識で謎を解決していく様はとても楽しめます。龍之介のキャラもあってか、堅苦しくないですし。
全方向的オタクという表現がヒットでした。博識もこう表現できるか(笑)。

図書館案内へ/ 図書館一階へ/ HOMEへ戻る