記憶の果て                      講談社ノベルス  [bk1]→
大学入学を控え、暇な毎日を過ごしていた安藤直樹。しかし、父親の自殺をきっかけに少しずつ日常が変わっていく。父親の自殺した書斎に足を踏み入れた直樹は、そこで一台のパソコンを発見。コンピュータは「私は安藤裕子」と表示し、まるで生きた人間のように対話を成り立たせた。直樹はいつしか「裕子」との対話を楽しむようになる。

実はこれ一度、発売して間もない時に読んで途中で挫折しました。なんと言うか、文が独白的な感じで。それが当時の私には結構まどろっこしかったし、しんどかったような気がする。さて、一年たって再チャレンジ。……なんか、作品中で論議されてることって、私が中学生の時に一人で悶々と悩んでいたことのようだ。おかげで密かに彼岸に行きかけていた記憶がありますが(笑)。ま、それはさておき。

なんというか、すごく静かなイメージですが。……空気が停滞しているよな。前にも書いたように独白的な文。ジャンルもこれ、と言い難い。普通なら削られる思考の過程とかもそのまま書かれていて、まどろっこしい、とイライラする人もいるかもしれないけど、すごい独特な作風になってます。もうほとんど著者の自分の世界が出来上がってしまっているような感じである。著者がこの世界を維持してどこまでいけるか……。非常に好き嫌いのわかれる作風だろうが、デビュー作でこうきちまったからにはラストまでこれで突っ走ってくれるしかないのではなかろうか。でなきゃさらに先に突っ走っちゃうとか。
ラストは消化不良という意見もあるかもしれませんが、個人的には……うーん、かなり微妙なラインで良い、と私は思ってます。万人に受け入れられるタイプではないか(っていうかそんなもんあってたまるか)。読む人次第ですかね、これは。暗いです。
時の鳥籠                       講談社ノベルス  [bk1]→
初対面の少女の死を何故か「私」は知っていた。少女と出会ったとたん、意識を失った「私」が意識を取り戻し語った「過去」、それは少しずつ、何かを崩壊させていく。著者第二作目。デビュー作「記憶の果て」のその後(?)の話。前作と少し登場人物がダブってるかな?
前作ではあまり語られなかった安藤裕子、そして朝倉の話。とりあえず、まずは発表順にこの2作は読んだほうが良いかな、と思う。本書を読んだ後「記憶の果て」を読むのも面白いかとも思うが。前作よりはすんなり読めた。この話によって「記憶の果て」の話の深みが増すのではなかろうか。

物語は朝倉とシンイチの視点から交互に語られる。同じ場面でも視点が違うと違って見える……というか、すれ違いのようなものが面白い。相変わらず病んだ感じだが、そんなところにシンクロしてしまう自身の感覚もちょっと怖い(笑)。なんかこの病み具合には惹かれるものがあります。
面白いです、これ(ん? これは「面白い」って表現で良いのかな……?)。ラストで展開されるものはやはり浦賀和宏独特の世界。けどなんか妙にクセになるんだよなぁ、これ。
頭蓋骨の中の楽園LOCKED PARADISE       講談社ノベルス  [bk1]→
首無し死体として発見された美人女子大生・菅野香織。大学の友人達が衝撃を受ける中、菅野の恋人であった刑事の田上は捜査から外されながらも、菅野の友人達を引きこみ、犯人を探そうとしていた。しかしその後、立て続けに発見される女子大生の首無し死体。友人である菅野の死の理由を知りたいと事件に関わった穂波たちは、あまりにも多すぎる「首の切断」の異常さに戸惑う。そん中、一人動揺もせずにいる笑わない男・安藤直樹が導き出した答えは。

「記憶の果て」の後、大学に進学した安藤直樹が探偵役を担う作品。探偵役を担う、と書くとまっとうなミステリのようだが、ラストで語られる真相は既刊を読んだ人なら「……あぁ……」と思うシロモノであります(笑)。一見普通の推理小説のように話を進めていっておいて、最後の最後で読者を突き放すようなラストを持ってきている。それがまぁ、浦賀和宏独自の世界になちゃってるのは相変わらずで。そこらへん、お覚悟あれ。

さて、「記憶の果て」ラスト以降笑わなくなった安藤。それに対し、穂波たち大学友人(?)らは感情があらわです。というかあらわにし過ぎじゃなかろうか。少々鬱陶しいくらいに感情的である。穂波兄妹あたり特に。何か極端な感情の現れ方が見られるなぁ。その辺、わざと?
作品は、半ば乱雑にちりばめられた要素・情報をラストで整理していっている。しかしこのあたりは「記憶の果て」など既刊を読んでいないと予想も理解も難しいでしょうね。細かいネタは既刊から引っ張ってきていますし。もしこの本を「クールな学生探偵が事件を解決するミステリ」と思って買った人がいたとしたらちょっとご愁傷様という感じだ。

個人的にこの浦賀和宏の世界は嫌いじゃないのでOKだが、ダメな人はワケわかんないだろうね。この作品は最初に読むべきではないか?(まぁ、後で細部の真相を知って「おぉ」と思うのもアリかもしれんが
なんか作中で次の種がばらまかれてるっぽくて不安ですねー(笑)。どこまで悲劇は連鎖していくのやら……。
とらわれびとASYLUM                 講談社ノベルス  [bk1]→
大学病院内で、男性の腹が引き裂かれ殺されるという事件が発生する。連続殺人事件となったその事件で弟が被害者となった森山亜紀子は、友人の穂波留美と犯人を探そうとする。その中で二人は男が妊娠した上で失踪するという奇妙な事件に出くわす。その一方、何者かに父親を殺された飯島は、金田に犯人への復讐の手伝いをしてくれるように持ちかける。二人のもとに入った情報は、一人の女の存在。そして金田のもとに妙子という謎の女の存在をほのめかす電話が入る。金田の携帯の番号を自分のものだと言ったという妙子とは、何者か。2つの事件はやがてその繋がりを見せ始める。

前作の中でちらりと語られた、飯島の父親が殺された事件と、いくつかの事件がかかれている。「頭蓋骨〜」以降の留美、「記憶〜」の後の金田が登場。安藤側に足を突っ込みながらもまだこちら側にその身の多くを置いている感じの留美はなかなかいい感じかも。そして金田は見事にアレですねぇ。ある意味ここまで来ると清々しいかもしれないが(笑)。

今回の話は、浦賀作品にしては恐ろしく普通なのではないかという感じが。前三作の浦賀作品の世界が好きだという人には物足りないかもしれません。しかし初心者向けであるともいえるか? わりとすんなり「ああそうかー」となるでしょうね。そういう意味ではすっきりとした一作かもしれません。ただ前作まで読んでないと人間関係とかさっぱりだろうけどさ。
しかし安藤おいしいとこどりだ(笑)。ラストでアレは卑怯だろ。たったアレだけであんなおいしいところを……。今回はラストシーンは好みでしたね。
記号を喰う魔女FOOD CHIN             講談社ノベルス  [bk1]→
ある日、同級生の目の前で飛び降り自殺をした中学生・織田。彼の遺書により、その自殺の現場に居合わせた小林達5人は、織田の生まれた島へと向かう。しかし、島に着いた翌日から事態は急変。何か記号を刻むかのように腹部を切られた死体が発見される。それをきっかけに次々と明らかになっていく島と、集った人々の異常さに小林は混乱を極める。理性をも危ういなか、小林は自分が思いを寄せている少女・安藤だけは救おうと考えるのだが。
「頭蓋骨〜」から引っ張ってきて、小林英輝と安藤裕子の中学生の時の事件。この二人がなぜ「時の鳥籠」や「頭蓋骨〜」のようになってしまったのかがなんとかわかる。

浦賀作品は毎回毎回それなりのラストを迎えているのだが、新作が出ると、その1部がさりげなく覆されていたりして侮れない。人が想像して理解するには限界があるのだなという印象を受ける。今回の話で小林英輝がなぜワイヤーで首を吊って死んだのかの、もう一つの可能性が提示された。こっちの理由だとすると、小林英輝の最期の心情はちょっとぞっとするものがある。

誰が「魔女」であるのか。それは読んでいけばおのずとわかるが……本当に「魔女」だなぁ、コレは。しかしこの実態は未来に生まれる彼にとっては大した問題でもないのだろうね。この微妙にかみ合っていないイメージ、感情は一種独特な世界を作り上げていますな。まだどこかにとんでもない思い違いがあるのでは……と安心できません。
また新たに出てきた疑問となると、安藤直樹の父親問題。この感じからすると、やはり小林英輝で良いのだろうか……。もしそうなると直樹が事実として受けとめていることが一つ、崩れるわけだが。はて。
理性のたがが外れた、人間の混乱と狂気が作品全体をつつんでいる。遠藤の「それはお互い様」が一番まっとうで正しいことのように思えた。
結構気色悪い話でしたねぇ、どういうわけか今までよりも。そして真由美……はやはりあの真由美なのでしょうか。彼女もまた何かが狂ってしまったのか?
学園祭の悪魔ALL IS FULL MURDER        講談社ノベルス  [bk1]→
高校の学園祭、自分とは対極に位置するクラスメイト、穂波留美の恋人・安藤と出会った「私」。愛想もなく妙な雰囲気を持つ安藤に興味を持つ「私」。なんとか安藤に近付こうとするが、おりしも連続猟奇殺犬事件、そしてさらなる事件の影が。安藤との出会いを境に、「私」の日常は今までの形を失っていく。

安藤直樹モノ。ある意味この作品はあまり多くを語れませんな……。作中で「私」が「名犯人」ということを言っているが、これではその「名犯人」がいるような気がする。この一冊丸々、以降の展開のためのインターバルのようなものだろう。
浦賀作品、1番最初がこれだったりしたら、ちょっとご愁傷様という気がする(前も同じようなこと言ったな……)。取り敢えず浦賀作品は、第1作から順に読むべきだろう。
良くも悪くも、読者を裏切っているか……。まぁ、とにかく、そりゃねぇだろ安藤(笑)
眠りの牢獄                      講談社ノベルス  [bk1]→
階段から転落し、浦賀は翌日目を覚ましたが、もう一人、亜矢子はそのまま昏睡状態に陥る。それから5年が経ち、浦賀、吉野、北澤の3人が再び事故のあった家に集められた。3人は亜矢子の兄の手により、核シェルターに閉じ込められてしまう。そこから出るためには、誰が亜矢子を突き落としたのかを明らかにしなければならない。その一方、別のところでは、自分を振った男への恨みを抱いた女性が、メール交換の中完全犯罪を計画していった。

6作目にして初の非安藤モノ。ミステリ作家にたまに見られる、作者の名前が主人公の名前になっているというものですが……悪仕掛けってだけあってなぁ(笑)。 最後まで読んでいって、振り返って見ると、確かにしっかり伏線が張ってあって、そういうふうに書かれているのですよな。作者の名前を使っていろいろ実在の名前なんかを出しているのも、そのための罠の一つなんだろうな。というか、この名前であのキャラを書いていて、作者はどんな気分だったのか……。
途中までの基本的な流れは割と普通に想像がついたのだけれど、最後のアレが予想していなかったから、ラストのどんでん返しはわからなかったか。

看護婦が読み上げたタイトルは何だったのか。それによってちょっと「かつていたところ」が現実か夢かが変わると考えられる。けれどもさらに気になるのは、ラストの亜矢子が目覚めたエピローグの部分の下にも「かつていたところ」と書かれているところなんだよな。この点で考えると、エピローグ部分も浦賀の書いた小説ってことになるんじゃなかろうか?それともただ間違えて下にタイトル入れちゃったか?
講談社ノベルスにしては異例の薄さのくせに、とんでもなく密度の濃い作品のように思える。侮りがたし。

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